第9話 魔法実技試験


「それではかねてからの予定通り実技としましょう。第二演習場に集合です」



「レニーア・キシカム・バラロックです。東方バラロック家次女です。これからよろしくお願いします」


「ルイーゲフンゲフン……失礼、ルイス・スカイ・モルペウスです。モルペウス王家第一王女です。よろしくお願いしますね」



ピコマシンによって全身の制御を行い、こちらの礼儀に則って直立不動のまま応じた。



-対人コミュ障王女様大丈夫?-

-バラロック家の詳細上がったよー-

-情報の精度上げろ-

-後ろの奴らについてもデータ解析早く-


うるさいやい。



「はい。演習場まで案内しますね!」


「私、ルーモルド伯爵家のものですが!ぜひご挨拶を!!」

「ロ、ロドビー子爵……



挨拶が多く、演習場に行くと既に数人の講師が待機していて遅刻がありありとわかったがそれは仕方ないだろう。


的が大量にあるだけでその先は何もない、なるほど、魔法の練習場ね。



「これから魔法の実演を行ってもらう。学園で教えた魔法でも良し、家伝の魔法でもよし、触媒と魔法陣の使用は申し出ること」


「攻撃だけではなく練習でも良い、が、この訓練はそのまま君たちへの評価につながる。留意したまえ」



一人ずつ前に出て魔法を使っている。


的は30m先40m先と10m感覚で横に100m、300m先にまでずらりと刺さっている。


-1本辺り最大1.3mほど誤差がありますね-

-どういう測り方かは分からないが単位が違うからなぁ……-

-雑な仕事だ、よほど安いマシンを使っているのだろう-

-土だから刺さる強度に問題があるのでは?-



「フレェェムラァァァンスゥッ!!!!!!」


「水よ、果てなき地平に恵みの慈雨を!」


「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、******」



それぞれいろんな魔法を使っている。大量の的は縦横の範囲を計測するためにあるようで炎の槍は一直線に230m先までの的を焼いた。祈るように魔法を使ったり、足元になにか描いたり、手持ちの木の枝を投げて木製ゴーレムを生み出すものもいる。


踊ったり、髪を抜いたりして魔法を使うものもいるが……これが地上の魔法か、とても興味深い。騒いでうるさくなった賢者たちの情報は全カット、あまりにもうるさすぎるし周りの音も聞こえないよ。


一時間ぐらいは芝生の上にシート広げて眺めていた。


心の拠り所である可愛すぎる従者ロボが日よけの日傘を出してくれている。傘の縁から下を暗く覆ってくれて他の人と話さなくて済むのが良い。名前つけないとだね。



「最後はモルペウス王家の方ですね。どうぞ」


「はい」



魔法を使い終わった人たちの視線には気がついていた。どうだ見たか!と言わんばかりの表情、遠くの国の王女に舐められないように言いつけられていたのか、プライドでもあるのか。


許可はもらっている。本来の私の魔法ではまともな攻撃なんて出来ない。「寝て未来とか見ます!」なんて多分ここの人には通じない。



「田舎者の王族様には何ができるのかな」

「五属性持ちだしひょっとしたら凄いかも知れないよ?」



「―――――行きます」



一息吸って右手を水平に伸ばし、手首をくいと曲げる。


一瞬で『ヂュ』と酷く音が重なった。全ての的の真ん中に同時にレーザーを当てて溶かしただけだ。



「キャっ!?」

「なに!??」

「・・・・・・は?」


実際は自分の力ではないが優雅に礼を行う。


あまり力を見せるのはよくないかも知れないが、あまりにも侮られすぎている。身の安全の為なら力は見せるべきという意見があったしこんなところだろう。


我が従者だけが拍手する音が響き渡って、魔法の実演は終わった。



「ルイス様!あれは一体どうやったのです!?」


「レーザーを当てて溶かしたのよ」


「れーざー……?」


「光の収束というか力を束ね「ひ、光!!?光の魔法まで使えるのですか!!!??」


「まぁそんなところね」



説明がだるくなった。ナノマシンやピコマシンのことは説明してもきっと理解できないだろうし。


「光ですって」

「じゃあ聖女様なのか?!」

「新たな聖女、だから王家との婚姻が成立したわけか」

「しかし、最近話題の聖女様もいるぞ?」



何これ?


-地上では魔法による優劣があり、光の使い手は希少で崇拝対象のようです-

-普通は王族だろうと神殿行きみたいだけど、まさか他国の王女にそんなマネ、しないよね?-

-流石にナイナイ-

-無い、よね?-


フラグ立てるなお前ら



その日はその後一日座学だったが生徒の視線が集中していたように思う。


休み時間ごとに挨拶に来るし、何なんだろうこの人たち……怖いんだけど。



「あれが光の魔法使っていた王女殿下ですって」

「なんて美しい」

「貴方声かけなさいよ」

「えーでもー」


「目立ってますね」


「言わないで」



まるで珍獣扱いだ、ここは学園ではなく動物園だったのかも知れない。


「これで今日の講義は終わりです。ルイス殿、神殿から使「お疲れ様でした、ごきげんよう、さようなら」



光学迷彩を起動、窓から飛んで逃げた。


私の珍獣レベルは数段上がった気がする。もう学校行きたくない。


-さすが殿下、いつもながら頭のおかしい結果を出してくださる-

-さす殿すぎる-

-ぷぷっ-

-対応しないと不味いのでは?-



そのまま屋敷に帰って寝た。


明日も学校?明日のことは明日の私がどうにかするさっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やさぐれた見世物悪役令嬢は追放されたい mono-zo @mono-zo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ