神主、異世界にてゴッドスレイヤーとなる

unknown森下

第1話  高校生 神主



けまくもかしこ伊邪那岐大神筑紫いざなぎのおほかみつくし日向ひむか橘小戸たちばなのをど阿波岐原あはぎはら御禊祓みそぎはらたまひしときせる……」


 荘厳な雰囲気漂う大社に強く若々しい声が響く。


 年明けということもあり、神社の境内は参拝客であふれかえっていた。この大仕事を毎年こなすのは、神職者にとってもかなりの重労働であり、実際この神社では仕事をこなすことが難しくなってきた父に変わり、息子が神主となったばかりなのである。


「優斗君、しっかりしてるわよね」


「主人に代わって仕事をするようになってから急に頼もしくなってね。子供の成長って早いわよね。 …っはい。交通安全お守りですね。2種類ありますがどちらになさいますか?」


 社務所で作業していた巫女二人が話しているのは、今まさに祝詞をあげている高校生にして神主となった、純黒の髪と青みがかった瞳が特徴的な青年 二条宮 優斗 のことである。この神社はあたりではかなり有名な神社であり、祭りや年始の時にはこの境内は人であふれかえるのである。まさに今も、ツアーの団体のような集団が鳥居をくぐり入ってくるところであった。


「お疲れ様、優斗。しっかり休んどきなさい」


「ありがとう母さん。でも先に蔵の掃除をしてくるよ」


「無理はしないでね。疲れたら休むのよ」


「うん。これが終わったら休憩をとるよ」


 そう言うと、優斗は足早に蔵へと向かっていった。


 音を立てながら砂利道を歩く人々の声と、近くを走る電車の音が響く神社の空には曇りのような晴れのようなどっちつかずの天気が広がっていた。

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