第3話
叔父と睨みあい無言が続く、だが私はあることに気がついた。
叔父が手に持っている写真は一枚だけ、私は今日数枚の写真を捨てるために持ってきた。
つまり叔父には残りの写真はバレてはいない、
「とりあえずこの写真は僕がもらっておこう」
「その写真あの人に見せるんですか」
「姉さんにかい。いや、見せないさ今はね。」
私の横を通り部屋から出ていく叔父を私は止められなかった。
止めるにも何を言えばいいかわからない、だけどあの人には言わないのなら今はまだ放っておいても大丈夫かもしれない
部屋に一人になり少し立ち尽くした後、キャリーケースを開け残りの写真を出した。
まずはこの写真を捨ててから奪われた一枚はどうにかすればいい。
自分を守れるのは自分だけだ。
翌朝朝食を食べた後散歩をしてくると家をでた。
朝リビングで三人そろったときは、何か言われるのではないか、やはり叔父はあの人に写真を見せていたらどうしようかと心配したが、そんな必要もなくおはようと声をかけてきた。
こんなにも内心焦っているのは私だけなのかと腹が立ったが、こんな叔父にかまっている暇などなく早く朝食を済ませた。
坂道を下っていき、何軒かの家の前を通り過ぎ湖についた。
部屋の窓から見るのとはまた別で近くで見るとより大きかった。
とりあえず湖に沿って歩き始める。
何台か車とはすれ違ったが、歩いてる人や自転車に乗る人は見かけない。
誰かに湖の近くまで降りれる場所を聞こうと思っていたが、田舎の交通手段は車だけなのだと今更ながらに知る。
適当に歩いていれば見つかるだろうと歩いていたが思う場所が見つからない、
太陽も上がってきて段々熱くなってきた。諦めて今日はもう帰ろうかと思っていた時
「お嬢ちゃん見かけない顔だね何してるんだい」
突然話しかけられ声のする方を見るとひとりのおばさんが立っていた。
帽子をかぶり手袋をつけ、畑仕事のような恰好をしている。
やっと人に会えたことでやる気が戻ってきた。
「夏休みでここに遊びに来てるんです。今は散歩をしていて、水辺に降りれる場所はないかと探していて....」
「どこの家の子なんだい」
「えっと....坂の上の洋館の所です」
するとおばさんは怪しんでいた顔を戻し
「あぁ、あのおうちの子だったのね。ごめんね不愛想な聞き方をして」
「いえ、大丈夫です」
田舎の人って閉鎖的って聞いたことがあるけどこういう所なのかもしれないな
「あの家から歩いてきたのかい疲れたでしょう、家においで飲み物のんでいきなさい
ついでに湖に降りれる場所も教えてあげますよ」
そういうと返事をする前に歩いて行ってしまった。
こんなの東京だったらただの不審者で一目散に逃げているだろう、だけど聞きたいことを教えてくれるならついていくしかなかった。
「玄関で座って待っててね」
家の中に入り田舎特有の広い玄関を見渡す。
叔父の家もこういうのを想像していたんだけどな。
「お待たせ、麦茶とよかったらスイカもどうぞ」
「すいませんありがとうございます。」
「いいのよ、若い子と話すのは好きなの。最近は都会の方から動画でお金を稼ぐ人がよくきて騒いで帰ることがあるからみんな迷惑していてね....」
それであんなに警戒心マックスで話しかけてきたのか、納得した。
「あなたどこからこっちに来てるの」
「東京です親の実家がこっちなんです。」
「あら、じゃあ志穂ちゃんの娘さんなのね。こんなところで会えるなんて」
あの人のことを知っている人だとは思わなかった。
「知ってるんですか」
「ええ、もちろんあなたのお母さんの母親つまりあなたのおばあさんと知り合いだったのよ。早くに亡くなられてしまったからもう遠い昔のことだけれどね。数年前におじいさんも亡くなられて弟さんが一人であの家に住んでいるとは聞いていたけど、久しぶりに志穂ちゃんの名前が聞けて安心したわ」
嬉しそうにほほ笑むおばあさんを見て私も思わぬ出会いにうれしかった。
この人なら私の知らないあの家のことや、あの人のことそして叔父のことも知っているかもしれない。
「あの、もっといろいろ教えてもらえませんか叔父のこととか、えっと....母、のことを私あまりよく知らなくて」
「ええいいわよ、それよりも湖の場所はもういいの」
すっかり忘れていた湖のことを思い出す。
でも今じゃないと話が聞けないかもしれない、だけど話を聞いていると時間が遅くなる。悩んでいると
「もしよかったらまた来なさいな、私は家か畑にしかいないからいつでも大歓迎よ」
「いいんですか」
私はまた来ることを伝えお礼を言い、教えてもらった湖の場所へ歩き出した。
どうやら水辺に降りれる場所はこの変だと二か所あるらしい。
今日歩いてきた道をもう少し歩いたところと、叔父の家の前の坂を下り、右に曲がり歩いて行ったところにもあるらしい、今日は私が左に曲がって歩いてきてしまったせいで遠いほうに来てしまったようだ。
だけどあのおばさんと会えたから結果オーライ。
水辺に着き服のポケットから写真を取り出す。
細かく何の写真かわからなくなるまで破き水に沈め、あとは水の動きにまかせた。
母の不倫の証拠これは私が消さないといけない、私が私の幸せを守るために。
あの場所でもう一度思い出す時 赤いりんご @7shiningstars
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