第81話 見送り
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突然走り出したぼくの動きに流民たちは虚を突かれたのか動かなかった。
誰もぼくを追いかけて来ない。
『
「すみません。ぼくたちの村の人がどこにいるか知りませんか?」
ぼくは男から聞いていた村の名前を二人組に訊ねた。
駆け寄ったぼくに対して二人組は、きょとんとしていた。この地に駐留して以来今までに
アルティア教では
『
にもかかわらず、蔑んでいたはずの半獣人に突然国都をとり囲まれているのだから、自分たちから『
『
立場が逆になった以上、自分たちが蔑んでいる気持ちと同じ深さで相手からも悪い気持ちを持たれているかも知れないという恐怖があるだろう。仕返しをされるかもしれない。
そう考えたら一般のアルティア神聖国人は『
「すまんが知らん。そういうことは同じ
茶色いほうの
「そうなんですけれど襲われそうになったんで咄嗟に声を掛けさせてもらいました。見てたでしょ?」
ぼくは後ろに残してきた身内と流民たちをちらりと振り返った。
両者の間で戦闘は起きていない。どちらも
「ああ」と茶髪。
「そちらから彼らにぼくらを村の人の所まで案内をするように言ってもらえませんか?」
ぼくは、てへぺろと笑いかけた。
「ここを占拠している『
びっくりしたような顔をしたまま黒いほうの
「お前、よく俺たちに話しかけられたな。恐くないのか?」
「怖いぐらい、やっと国都に辿り着いたところで殺し合いの修羅場になるよりマシですよ」
「確かに」
「じゃ、よろしくお願いします」
ぼくは二人を連れて、みんなの元へ戻った。
ぼくが『
ぼくたちに食い物と馬を要求した流民のリーダー格らしき男も去ろうとした。
「待って」
ぼくはリーダー格に駆け寄って逃げられないように前に立ちはだかった。
後から『
「おい、お前」と茶髪がリーダー格に声をかけた。
「そこの彼に同じ村の人間がどこにいるか訊ねられたが俺たちには分からない。
「へい」とリーダー格は血の気を失った青い顔で『
それから「どこの村だ?」と、ぼくに訊いた。
ぼくは男から聞いていた村の名前を伝えた。
「わかる?」
「ああ」
リーダー格は、ぼくに背を向けて歩きだした。さっさとこの場から離れたいのだろう。
ぼくは馬の手綱を握っている斥候二人に頷いた。
斥候二人は馬を引いてリーダー格の後ろについていく。
ぼくたちと同行している男も歩きだした。
男も真っ青な顔をしていた。荷車の上の奥さんと娘も青い顔だ。娘は奥さんにしがみついて泣いていた。みんな、そんなに『
ぼくは『
「助かりました。何とかなりそうです。このお礼は後で必ず。このあたりに来ればお二人はいつもいますか?」
「普段は西門前だな」
「ぼくはバッシュです。お二人のお名前は?」
「俺はブラン」と茶髪。
「コークだ。べつに礼なんかいらねえぞ。お前ら
「ありがとうございます。でも落ち着いたら後で話に来ますよ。個人的には『
おそらくぼくたちが流民に絡まれたのは国都に流れてきた人が受ける最初の洗礼という奴なのだろう。
国都に辿り着けさえすれば炊き出しにありつけると考えていた希望が、はかなく打ち砕けれてカツアゲ的に身ぐるみを剥がれるのだ。多分、国都では日常的な光景だ。
本来そこに『
もし、ぼくたちがおらず男家族だけでこの場に来ていたならば絶対に身ぐるみを剥がれていたはずだ。まあ、ぼくたちがいなかったら男家族がこの場に来ることもなかっただろうけれど。
この勢いで二人組にマリアたちの所在を訊ねようかとも思ったが、それをすると話が長くなるのは分かり切っていた。
とりあえず、国都にいる『
「じゃ、またいつか」
「「おう」」
『
全然怖くないんだけどな。
なぜ、みんなが『
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