第71話 伝手
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ぼくが軟禁されているテントに士官がやってきて、ぼくに言った。
「『
ぼくは、ぼくの戦友である王国の斥候二人と共に後から歩兵部隊が運んできたテントの一つで軟禁生活を送っていた。
二人の斥候の内少なくともどちらか一方は常にぼくと行動を共にして、ぼくを見張っている。テントから出ることは許されたがアルティア兵との接触を防ぐためか崖際に近づくことは禁止された。
テントを出る際にはテントの出入口を見張っている担当の兵士も、ぼくについて来た。
ぼくに逃げるつもりはなかったけれども煩わしい思いをするのは嫌だから、ぼくは大半の時間をテントから出ずに過ごしていた。
逃げたとしても行き先がない。
ニャイがいる探索者ギルドを目指したところで行き先に予想がつくので先回りをされて直ぐ捕らえられてしまうだろうし、アルティア神聖国内に逃げ込んだところで本当に間者であるならばともかく、そうではないので、ぼくにはまったく土地勘がない。
そもそもアルティア神聖国は、ぼく自身に用がなかった。そんなところに逃げ込むわけがないだろう。ここにいれば少なくとも食事には困らないので特に苦も無く、ぼくは軟禁生活をおくっていた。いつか疑いも晴れるだろう。拷問はされていないので快適だ。
ぼくは知らなかったが崖下のアルティア兵は、ぼくが軟禁されて三日後には撤退していなくなっていたそうだ。
『
同居している王国の斥候二人は生真面目過ぎて自分からはそういう余計な話は一切しなかった。
アルティア兵がいなくなったので現在この場所の最高責任者である王国の副団長は崖下に偵察隊を出した。
偵察隊がロープを使って崖上からまず階段のまだ使える場所へ至り、さらに崖下へ降りて放棄されたアルティア陣地内の状況を確認した。結論としてアルティア兵は誰一人残ってはいなかった。
よほど慌てて出発をしたらしく軍関係の物資は運び出されていたが兵士が生活していた建物内の生活用品などはそのまま残されていたということだ。
何かの罠ではないかとも疑ったが、そのような様子もない。
王国軍は、ぼくたちが破壊した階段を復旧して馬も連れて崖下へ降りられるようにすると旧アルティア陣地を接収し自軍の陣地とした。
石壁の上には多数の歩兵隊を上らせて、もしアルティア神聖国側からアルティア兵が戻ってきても撃退できるような態勢を整えた。こうなれば簡単には陥落しない。
それとは別に石壁の隙間通路から崖下のアルティア神聖国内の森の中へ騎馬隊を哨戒に出して様子を探らせた。
『
アルティア兵たちは完全に撤退をしてしまったらしく森の中に兵士がいる痕跡は残っていなかった。
王国軍としては今後に向けてアルティア神聖国に対する侵略拠点、もしくは防御拠点を一つ、まったく戦闘を行わずに手に入れた形だ。使い勝手を良くするために、とりあえず整備を進めていく。
そうしているうちに『
「各国に置かれましてはアルティア神聖国の内政に干渉することなく推移を見守っていただきたい」とのことであった。「後日、報告の機会を設けさせていただく」そうだ。
『
各国の外交窓口はアルティア神聖国の外交窓口もしくは各国に設置されているアルティア教の教会を経由して詳しい情報を掴もうとしたがアルティア神聖国の外交窓口とは連絡が取れず各国の教会もまた何も情報を持ってはいなかった。
各国の軍隊の中には傭兵集団である『
けれども「現在、個別の作戦が進行中であるため何もお答えできません」として何処の国も回答は得られなかった。
ぼくが住む王国においても同じだ。
ただし、ぼくたちの王国に対する声明文にだけ『
士官は、そういう話を、ぼくに対して行った。その上で、
「『
そう、ぼくに聞いた。こっちこそ聞きたいところだ。
「素人のぼくに何か分かるわけがないでしょう」
ぼくは答えた。
「アルティア神聖国の軍が退いたのは『
士官は自身の考えを口にした、
でしょうねえ。素人だけれど、ぼくもそう思う。そりゃあ、内戦や独立戦争に発展するだろう。
「『
士官は考えを続けて語った。
「それで王国の対応は?」
「とりあえず現状維持だ。各国境で防備を固める。こちらからアルティア神聖国内へは進軍しない」
「宣戦布告の文書を王国に持ってきた王都の教会は何て言っているのですか?」
「沈黙している。本国からの情報は何もないらしい」
「ない? あえて黙ってるわけじゃなくて?」
「王都の教会も本国の教会と連絡が取れていないようだ」
「教会から『
「出ていない」
「それって、もしかして戦場は居留地じゃないってことですよね? 大聖堂があるアルティア神聖国の国都が戦場になっているから連絡が取れないんじゃ?」
「君もそう思うか。我々も国都は既に『
やるな、マリア。
「しかし実際のところは現地に行ってみなければわからないだろう。行ったところで包囲の中の様子まではつかめまい。情報を得るためには『
ん? 何か変なこと言い出した。
「幸い、我々には『
おいおい、何でそうなった?
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