第52話 偽情報
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「探索者が所持している自分の探索者カードのランクの記載と探索者本人の実際の実力が違うということはないのですか?」
「
士官からの質問に対してライネットは即答した。
「机上の話としては?」
「探索活動を続けている探索者が、にもかかわらず、しばらくカードの更新をしていない場合はカード記載のランクと実際の本人の実力に
例えば長期の探索に出ずっぱりで物理的に更新ができていない場合ですかな。
短期の場合は依頼を受けたり完了したりする都度、カードは更新されていますのでありえませんが」
「何らかのあらゆる都合のいい条件が揃ったとしても?」
雑談の割に士官は
しかも、つい最近、ライネットには似たような話を聞いた覚えがある。
「一般論の範疇を超えましたな。何か具体的な想定があるようだ」
「実はそういった主張をする探索者の訪問を受けまして」
「
ライネットは驚きの声を上げた。
「それはどういう?」
ライネットはオークジェネラル出現の現地確認時の話を士官にした。
ある探索者のパーティーがオークジェネラルに遭遇して壊滅し、その探索者は仲間を逃がすために一人で囮になって別方向へとジェネラルを誘導した。
探索者を救出するためギルド総出で向かった救出行にライネットも同行した。
現地には心臓にナイフを突き立てられ首を撥ねられたオークジェネラルの死体があったが当の探索者の姿はなく近くには折れた探索者の剣が落ちていた。
ライネットの見立てではナイフを持った人物がオークジェネラルの心臓を突き刺すと同時か直後ぐらいのタイミングで、剣を持った別の誰かがオークジェネラルの首を撥ねたと思われる。ナイフは
生きていればすぐ戻ってくるだろうが仲間にギルドでの再会を約束したにも関わらず今になっても戻ってきていないということは深手を負った探索者は亡くなり恐らくオークの首を撥ねた誰かにどこかへ葬られたのだろう。
というのがライネットの見解だった。
「その探索者は三年も探索者をしていてFランクのままだったそうです。彼が使っていた剣がどうやら呪われていたことから呪いが探索者ランクに影響を及ぼしたのではないかと結論付けました」
ライネットは話をそう結んだ。
「その葬ってくれた相手というのは?」
「さあ? だが、探索者であれば少なくとも自分が所属するギルドに遺品を持ち帰り発見報告ぐらいはするはずだ。
恐らくギルド関係者ではなかったのでしょう」
「そのFランク探索者の名前は?」
「確かバッシュくんだったかな」
ライネットは記憶を思い出しながら答えた。逆に問う。
「バッシュくんは、なぜギルドではなく駐屯地を訪ねたのです?」
「『
「『
ライネットは疑問を感じて眉をしかめた。
「遭難場所から町へ戻るのとは正反対の場所ですな。
怪我だって負っていただろうに、なぜ、そんな場所へ?」
「我々もそこが知りたい。
誰かが、わざわざFランク探索者に成りすまして我々と接触を図ったとも思えないが念のため面通しをお願いしたい。
適任者はいないだろうか?」
「最近、彼と同じパーティーのメンバーがギルドを移籍してうちにきたところです」
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ライネットと別れた士官は駐屯地への帰路、馬に揺られながら頭の中で情報を整理していた。
バッシュは斥候を現地に案内しているため、戻る頃を見計らって『同期集団』という彼のパーティーメンバーに面通しをお願いした。明後日以降、駐屯地で到着を待ってもらう予定である。
ライネットから本人たちへ伝えてもらうよう依頼をした。
士官は、さすがにライネットに対してアルティア兵が侵略の準備をしている可能性は伏せていた。
バッシュが愛剣を折ったのはライネットが発見した首を撥ねられたオークジェネラルと戦った際と考えて間違いないだろう。その時、バッシュは恐らくナイフを使っていた。
誰かはわからないがバッシュと少なくとももう一人、ジェネラルの首を撥ねた人物がその場にはいたはずだ。
バッシュがギルドに戻らなかった理由はジェネラルの首を撥ねた人物と行動を共にしたためだろうと考えられる。
オークジェネラルが出るような場所を丸腰では歩けないのでバッシュに代わりの剣を与えたのは、その人物だろう。
士官はバッシュに見せてもらった彼の剣を思い出した。
何の変哲もない市販の剣だ。
ただし、鞘と柄にアルティア神聖国内で好まれるような
アルティア神聖国内であれば普通に入手できる剣だ。
要するに入手先はアルティアだ。
その人物かバッシュか、もしくは二人ともにアルティア神聖国内に出入りした経験があるのだろう。
アルティア神聖国の間者?
だとしたら『
それとも、それこそが偽情報か?
現地を見に行けば、すぐバレるような嘘なのに?
その目的は?
現地の確認と対策のために駐屯地から兵を減らすこと?
まさか!
狙われているのは駐屯地か!
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