第22話 問題点
22
マリアたちは集合場所と時間を決め、ここまで別行動で王国側を偵察しながら合流を目指していたそうだ。
その過程で、ぼくはジョシカに助けられた。
四人が四人ともオークジェネラルと遭遇し何人か倒したという話だった。
皆、単独でジェネラルを狩れる実力の持ち主になるわけだ。
さすがは『
探索者で言うならば一人一人が探索者
ちょっと次元が違い過ぎて万年Fランクのぼくには逆に凄さがよくわからない。
もちろん四人ともジェネラル以外のオークとは、さらに遭遇したらしい。
日中ですらこれまで見かけられていなかったオークジェネラルが複数確認されているため、さらに人目につかない夜間であれば移動は、より活発になるであろう。
そのための夜間哨戒だった。
山岳を越えようとする相手のルートを特定する。
ルートを進むオークを排除して山岳越えルートはもはや使えなくなったと増援側のオークに判断させる。
オーク集落へのオークの増援を届かなくする。
『
『
そういう二方面作戦だ。
こちら側のことだけを考えるならば要するに出てきたオークを倒せばいい。
食事を終え、ぼくたちは哨戒活動に出る準備をした。
けれども、ぼくには、いくつか問題となる点がある。
まず、鎧がボロボロだ。
せっかく『同期集団』から下取ったのにオークジェネラルに刻まれて直すより買った方が早い程になっている。
かといって何も着ないわけにはいかないから、とりあえず装備したが防御面で何かを期待できるとは思えない。
鎧はオークジェネラルとの戦いで完全に寿命を終えていた。
オークの攻撃を喰らうわけにはいかなかった。
やはり、のらりくらりと躱すしかないだろう。
もっと問題になる点として、そもそも、ぼくには、のらりくらりと躱すための武器がなかった。
ロングソードとナイフの鞘だけが地面に転がされていた。
さっきまで鞘の脇には治療の際に脱がされた、ぼくの革鎧があったが、ぼくが着てしまったので今は鞘だけが転がっている。
「あれっ?」
ぼくは声を上げた。
ぼくの折れたロングソードの鞘が気が付くとボロボロになっていた。
金具の部分は赤黒く錆び付き、木材は、すかすかに朽ちていた。
まるで長期間放置していたため経年劣化でダメージを受けたみたいだった。
ぴかぴかだったはずの鞘の装飾も見る影もない。
以前のぼくなら物凄いショックを受けただろうが、なぜか、何も感じなかった。
何だろう?
むしろ、すっきりした気すらした。
「何?」
声を上げた、ぼくにルンが訊いた。
「すみません。ぼく、武器がありませんでした」
中身のないナイフの鞘を手に持って、ぼくは示した。
「すまん。回収まで気が回らなかった」
ジョシカが申し訳なさそうな顔をした。
「いえいえ。誰か予備をお持ちでしたら貸していただけると」
「これを使え」
ジョシカが自分の予備の剣を差しだしてくれた。
ジョシカサイズのロングソードであったため、ぼくには少し長い気がする。
「ナイフのほうが良いのか?」
「いえ。ジェネラルに剣を折られたんで急遽ナイフを使っていただけです」
ぼくは、ジョシカからロングソードを受け取った。
「あれ? 軽い」
思わず、言葉が口を突いて出た。
今まで使っていた、ぴかぴかのロングソードに比べてジョシカの剣は圧倒的に軽かった。
ぼくの剣が比重の重い
まさか、ミスリルとか?
そんないい剣を貸してくれるなんて、ぼくのナイフの回収忘れなんか気にしなくても良いのに。
ぼくは、みんなから少し離れて剣を抜いた。
刃は普通に鋼製だった。
両手で握って、ぶんぶん振り回す。
今まで使っていた剣に比べて圧倒的に軽かった。
片手でも、ぶんぶん振り回せる。
重さに体が振り回されるようなこともないし握っているだけで力が吸い取られるような疲れも来ない。
これならいけそうだ。
「すいません。こんないい剣借りちゃって」
「ただの予備だ」
ジョシカは、ぼくが気にしないように気を使ってくれた。
いい人だ。
問題があるとしたら、もう一点。
オークは夜目が利く。
エルフも夜目が利く。
それぞれハーフの場合はどうなんだろう?
少なくとも
「ぼく、灯りを持って歩かないとだから皆さんの邪魔にならないでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます