第20話 治療
20
合流地点には既に予定の全員が集まっていた。
『
副隊長のヘルダ。
同輩のルンだ。
ルンが周辺で集めた枝を積み上げて煮炊きのための簡易な竈を作っていた。
針葉樹の森だ。
ジョシカは担いでいたバッシュを岩盤が露出した地面に転がした。
マリアの元に向かう。
腰にぶら下げていたオークジェネラルの生首が入った袋を提示した。
「三人仕留めた」
「ご苦労さま」
マリアが言った。
「確定的ね。ジェネラルは、やっぱりこのあたりを抜け道にしているわ」
マリアは顎をしゃくって地面を指した。
十近い布袋が置かれていた。
ジョシカも布袋を近くに置く。
「怪我はしてない?」
マリアは自分の肩口のあたりを手で触って示した。
ジョシカの肩口はバッシュの血で汚れていた。
「問題ない」
ジョシカは頷いた。
「彼は?」
マリアがバッシュを目で示した。
マリアは顔の前のベールを跳ね上げ頭の上に載せていた。
半エルフ半オークの顔が露わになっている。ある意味では愛嬌のある顔だ。
「ナイフでジェネラルと渡り合って力尽きた。お陰でジェネラルの隙をつけたが連れてきちゃ、まずかったか? このあたりの探索者なら話を聞けると思ったんだが」
「作戦行動中よ。逃げられたり離脱を求められたら口を封じなきゃならなくなる」
「そのときゃ責任もって俺がやるよ」
「こいつ、ジェネラルをナイフで?」
転がっているバッシュを足先でつつきながらヘルダが言った。
「そうだ」
「やるな。Aランク探索者って奴か?」
ヘルダは、しゃがみ込むとバッシュの首元を探った。
首周りに紐が掛けられていて紐を引くと探索者カードが結ばれていた。
大抵の探索者は同様に自分の首からカードをぶら下げている。
ヘルダは紐をバッシュの頭側から抜きカードを手に取った。
「もらいっ」
ルンがやってきてヘルダからカードを奪った。
「バッシュ。Fランク探索者」
ルンがカードの内容を読み上げた。
「Fランクがジェネラルとやり合えるわけがないだろう。見せてみろ」
ヘルダが探索者カードを取り返した。
確かにFランクとなっていた。
「別人のじゃないか。他にカードは?」
ルンが手早くバッシュの全身を探った。
何も出てこなかった。
装備品は派手な装飾がされたロングソードの鞘とナイフの鞘だけだ。
どちらも肝心の中身がない。
「なさそうだ」とルン。
「こいつの荷物は?」
「近くにはなかった」
ジョシカは地面に布を敷きバッシュを移動させると革鎧を脱がせた。
鎧は切り刻まれてボロボロになっていた。血まみれだ。
もはや修理より買った方が安上がりだし早いだろう。
二本の邪魔な鞘も外して脱がした鎧の脇に転がす。
ジョシカはバッシュの傷口を布でぬぐい血を拭き取った。
再度、ポーションを振りかけて今度は包帯を巻く。
出会った時にポーションをかけていたから少なくとも血は止まっているようだった。
ただし、完治しているわけではないので、いつまた傷口が開くとも限らない。
ヘルダから探索者カードを受け取ってマリアが自分でも記載を確認した。
横たえられているバッシュを見下ろす。
「起きたら本人に確認すればいいだろう。協力的な子だといいな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます