第3話 初めての剣

アルバスと名乗る男にもらった紙には、大きく剣に触れろと書いてあった。そして裏面に小さく、アルバス・ドーテから送る…と書かれていた。

 雰囲気のある男だったなあ…と嵐のように過ぎ去っていった2人組みを思い出しながら家に戻った。連日して良い出会いがあった幸運を噛み締めながら、これからどう動いていくかを考える。

「剣か…」

騎士になる以上、剣が必要になることは分かっていたが、父さんの伝手に鍛冶屋はおらず、どうしたものかと考えいるとドアのノックの音が聞こえる。

「シダ。入ってもいいか?」

「いいよ。父さん」

そういうと父さんはゆっくりドアを空け何やら大きい箱を持って入ってくる。

「どうしたの?」

「プレゼンだ。」

父さんはそう言い、箱を空け中にある物を取り出す。

「決して良いものではないが、知り合いの知り合いを伝って剣を買ってみた。ちょっと大きいかもしれないが、15歳の息子が騎士になりたいと言っているというと、この大きさを勧められてな。この剣を自在に触れるようになるのが最低ラインらしい。」

父さんはそういって一振りの剣をシダに差し出す。

「こんなにちゃんとした剣もらっちゃっていいの?」

「当たり前だ。父さんは騎士の知識が何もないからこれ以上はお前に与えてやれないがせめて剣くらい買わせてくれ。お前が満足できる道をいってほしい。」

シダはこれ以上何か言うのは違うと思い、一言大切に使うねと言い、剣を手に馴染ませる。…刀身のよく光る綺麗な剣だ。

色んな方向から剣の形や艶を眺めているうちに、父さんはどこかに行ってしまっていた。ほんとに感謝しかない。自分のために伝手の薄いところまで駆けつけ剣を買ってきてくれた父さんは唯一無二の存在だ。言葉に表せられないほどの感謝の思いを胸に抱き、剣を握る。

 気がつけば朝になっていた。






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騎士の果てに @shuya4848

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