第5話 おかしさの兆候

 カンナの家に運ばれた後、私は寝室のベッドの上に投げられた。首輪を付けられ、私はこの寝室から出られなくなる。何故か手足を縛られなかったので、動けるようになった頃に外してみる——が、鍵付きのものなので外せず、鎖はベッドの鉄の柱に留められているので、脱出はできなかった。

 そうしていると、カンナが現れた。

「やっほー!」

 そう笑って呼び掛けた。そんな彼女の服は、先程までのゴスロリとは打って変わって、下着だけであった。黒く、フリルの付いた下着である。そして、下着からは馬並みのクリトリスが覗いていた。彼女は「よいしょ」と零し、私の隣に座ってきた。

「ん~……本っ当に、いい臭いだね。こんなに臭いのは久しぶりかな」

 彼女は顔を徐々に私の腹に寄せていき、そして抱きついた。思いきり鼻で息を吸う音が響く。

 こうして話せる瞬間を、私は逃したくなかった。

「あ、あの……」

 私は恐る恐るカンナに言った。

「ん? どしたの?」

 そう言って彼女は私の体を抱いていた手を離した。まだ話ができる人で安心した。

「えっと……何て言うか…………この世界って、どういう世界?」

「ん? 何それ? 哲学?」

 言葉を選んだつもりだったが、通じなかった。私は言葉を探り、そして再び伝える。

「あー…………私の世界では、女性はそんな男の人の股間みたいな大きなクリトリスを持たないし……沢山の人を家畜のように飼育したり……犬のように飼ったりするのも——」

 そう言うと、彼女は大笑いした。まるで私の言っていることが馬鹿みたいに、信じられないかのように。

「ユキちゃんは不思議ちゃんなんだね! 真面目な感じの子かなーって思ってたんだけど!」

「え、いや、本気——」

「分かった! 答えてあげる!」

 私の言葉を遮るように彼女は言った。信じてはいないものの、律儀に答えてくれるのは本当にありがたい。

「けど——その前に一回イってね」

「……え?」

 回答の対価として、イくことが要求された。普通なら拒否するが——この状況から逃げることはできないし、何よりこの世界のことを知ることができる。

 ……それに、さっきイくことができなかったし。

 私は恥部に指を入れ——

「あ、ちょっとちょっと。それじゃつまんないよー」

 そう言うと彼女は身を寄せ、私の膝を掴んだ。そして私の股が開かれ、M字開脚の状態となる。

「さ、これでやって!」

 嬉々として言われ、私は温かい膣をゆっくりとかき混ぜるように指を動かす。そしてどんどん指を激しく動かし、膣を搔き乱したりぎゅーっと押したりする。

「んっ……! んん……!」

「それで、質問は何?」

 にやりと笑って彼女は言った。私は荒い息と共に答える。

「し、質問……! そのクリトリスは……!」

 指を激しく動かし、絶頂がすぐそこまで来ていることを感じる。もっと速く、もっと激しく——

「何、ですかぁんっ!」

 そして、絶頂した。快感が全身に走り、その直後に荒い息を零しながらへたり込む。それに満足したのか、カンナはにこりと笑った。

「よーくできました! それじゃ、答えてあげる!」

 そう言って彼女はにやにや笑いながら続ける。

「このクリトリスは、支配する者の証、とでも言えばいいかなー? 逆に短いのは支配される者の証かな。孕ませる側と、孕む側、的な」

 支配する者とされる者。その言葉に驚くが、どうやらオメガバースのような世界というのは間違いでは無いようだ。

「あ、さっき『オトコ』がどうこう言ってたよね? んーと、ワタシは神話詳しく無いんだけど……確か神話では『オトコ』っていう人が精子を出して子供を産ませてんだっけ? まんこが無くて、クリトリスとその下に玉をぶら下げてる人だったと思う」

 神話? 子供を産ませて『いた』? 男は存在しないの?

「それじゃ、次の——」

 彼女がそう言いだし、私はすぐに股を開いて指を恥部に突っ込んで弄る。すぐにイけるように激しく動かし、喘ぎ声と共に質問する。

「この世界にぃ……まんこが無くてクリトリスの下に玉が付いている人は実在するんですかぁん……!」

 再び絶頂し、へたり込む。彼女は呆然と私を見つめ、少ししてにやりと笑い、その口を開く。

「……うん。いないよ。それしか言いようが無いけどね。それじゃ、次!」

 そして先程と同じように指を恥部に入れ、激しく弄り、質問する。

「私の体は……どうなってるんですかぁん……!」

 絶頂してへたり込む私をにやにやした顔で見つめながら答える。

「臭いのことかな? 性欲があると臭いが出るって当然のことでしょ?」

 まるで当然のように言う彼女に、私は愕然とする。私の世界では、そんなことは当然のことでは無い。

「ユキちゃんは凄く臭いが強いんだよねー。だから襲っちゃった!」

 恐らく、女性同士の恋愛をせずに、毎日百合作品を眺めてはオナニーをしていたことが原因なのだろう。そんな毎日に少し後悔してしまった。

「あー、ホント、ユキちゃんは楽しいね!」

「……今までの質問ですか……?」

 こっちは大真面目なのに——

「それもそうだけど、ワタシ、? そんなに溜まってたんだねー!」

 私は戦慄した。顔が青ざめていくのが何となく分かり、汗が体を伝って落ちていく。確かに彼女は「質問ごとに」とは言っていなかった。なのに私は——染まってしまったの?

「あーもうダメ! 限界っ!」

「きゃっ!?」

 そう言って彼女は私を押し倒してきた。そして私の口の中に舌を入れて絡ませてくる。

「んっ、んく……!?」

 何度もぐるぐると絡ませ、そして満足したのか、舌が抜かれる。交わった唾液が舌の先端から伸び、それが途切れて私の口に滴り落ちた。

 無理矢理押し倒され、舌を入れられ——なのに、不思議と悪い気はしなかった。私は、この世界から抜け出さないといけないのに。こんな世界に染まっちゃいけないのに。

「……今夜は、長いよ?」

 舌なめずりをした彼女が、目を細めてにやりと笑って言った。

 ……どうせ今日は逃げられないのなら……

 私は彼女の抱擁を、愛を、受け入れる他無かった。接吻し、舌を入れ、乳房と乳首を擦り合い、馬並みのクリトリスを挿入され——長い夜は、あっという間に過ぎていった。

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百合の煉獄 粟沿曼珠 @ManjuAwazoi

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