第7話 異世界の王が召された(異世界クロス案件)


なんだ……我が死んだのが、そんなに不思議か?

神とあろうものが、理解しておらんとは……


我は人ぞ!

神にあらず!

化け物にあらず!


死せる者ぞ!

命ある者ぞ!


故に、我は生きた……


人として、戦う者として、王として


ただ一つ後悔があるのならば……


我が子を抱いてみたかった


それだけなのだ……


我に子は二人居る


だがそれは……叔父上の子である……


我は最初から……臣下にに欺かれていた……


だが、王の血は王の血である


故に、子として我は扱ってきた


長男には失望したが……


次男には、幸せになって欲しい……


過程で追放したが……きっと幸せな未来があるはずだ……


そう思った時……


あの令嬢の姿が過ぎる


あの娘には、最後まで酷なことを強いらせてしまった


あの娘の気持ちを汲むには、我はしがらみに囚われすぎていた……


我があの娘と一緒になるというのは……あの妃の不貞を暴き、我が子に苦労をかける事だ


それだけは避けたかった


生まれてきた子に罪はないのだ


長男に関しては、その後自分の意思で罪を犯したから仕方がない


なぜ、我がこんな話をしているのかだと?


それは、神……お前が我に聞いたからだ


その言葉に、イザナミ 分霊121は頷いた


「ええ、そうです。

どうやら、本物の魂と言えますね?」


それを聞きながら、これまでの経緯を思い返した。


我は確かに死んだと思った時….…

気づけば……執務室のようなところに立っていた。


そして、奇妙な我と同じ黒い髪の眼鏡をかけた娘が……デスクに座っていて驚いたような表情で我を見ていた


「貴方……随分純粋な魂の色をしてますね……」

そして、我にそう話しかけてきた



それから、我はいくつかの質問に答えることになった


そして……イザナミは大きなため息をつき……

「この案件……放置すると大変ですね……

しかも、よりによって……イザナミ案件……」

頭を抱えながら冷や汗をかいていた


神と言われる存在で、警戒していたが……

人間味があって、好感が持てた


「それで……我はどうなるのだ?」

今後の事を相談する事にした

「そうですね……私個柱としては……しばらくここに留まりませんか?」

そう言われて、我は此処がどういう場所かを再度確認した

「そうですね……異世界人の貴方には我々柱がどういった存在かもよくわからないでしょう?」

そう言われて、異世界人やこの娘の存在を聞かされたが……

「違う世界……か……」

我が見ていた世界がどこまで狭かったのか……

「ここに残るとして、一つ聞きたいのだが……」

我はイザナミ殿に問いかける

「ええ、答えられる範囲でなら……」

我は頷き

「ここには、すべての死者が来るのか?」

「いいえ、異世界に流れる魂は極めて珍しい分類ですね……」その言葉に、我は肩を下ろした

もうあの娘には出会えぬか……そう思ったが……

「ん?アナタが今考えた娘の事を気にかけていたんでしたら……彼女は元々、こちらの世界から渡界してますから……生が尽きたら……こちらに戻る予定ですよ」

その言葉に、我は年甲斐もなく目を輝かせてしまった

失ったと思っていた彼女に再び会う事が出来るという希望に……思わず笑みが溢れる

「年甲斐もないと……まだ、生まれて十数年の魂が……生意気ですね」

イザナミ殿が、ニヤリと笑い返し

「さて、その魂がここに来るまでの短い間ですが……よろしくお願いしますね!新入り!」

我に手を差し出す

「新入り?」

我は首を傾げる

「ここはいつでも人材不足ですからね〜

タダで滞在するつもりでしたか?」

そう言われて……我は顔を少し歪めながら、イザナミ殿の手を掴む

「無論、タダとは思わぬよ!」

「それは大いに結構!働かざる者食うべからず、地獄の沙汰も金次第、ビシバシ、こき使ってやりますよ!」

そう言って笑うイザナミ殿の顔は悪魔のようじゃった

「最後の言葉は、どう言う意味だ?」

我がそう聞くと……この異世界特有の言葉らしい……変わった言葉だが……なかなかに面白い

「ここにいる間、いろいろ学ぶ事がありますが……なーに、人の一生とは短いのですぐですよ!」

そう言って気楽な表情でいう神に……

我は、ここでの出来事をクリスティーヌに話すのを楽しみにしていた




まさか、人の一生以上の年月が過ぎても、来ないとは思わなかった

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