ウツ男と幽霊
金平糖
第1話
誰かに抱き締められていた。
私はいつもこういう場面で、微妙に形の違うパズルピースを無理矢理はめ込もうとしている場面を想像する。
「大丈夫?なんか幽霊みたいだよ」
「うん、大丈夫」
その人は勝利を確信したような顔を、きっと肩横でしていただろう。
でも私は首を横に振った。
ーーー
「なんでそっち選ぶかな。幸せになる気がないとしか思えない。」
「ごめん。」
「………。」
彼はそれ以上食い下がらなかった。
というか、呆れて言葉も出ない様子だった。
私は帰宅し、部屋の明かりを付けた。
しばらくするとウツ男が帰ってきた。
「振られちゃった。」
「かわいそうに。」
ウツ男は私を抱き締めーー
ず、強く頬を撃った。
あ、
「ありがとう。」
頬にはじけるような熱が広がる。
その痛みで私はやっと生きている事を思い出した。
「ぶってくれて、ありがとう。
私、もしかしたら自分が幽霊なんじゃないかって。思い込む所だった。」
「生きてるよ、お前は。一応人間。
ただ、オレの奴隷ってだけ。」
行動とは裏腹に優しい声色が鼓膜をくすぐる。
ぼーっと酔いしれていると、額辺りの髪を掴んで上へ持ち上げ、壁へと押しつけられた。
「…そっか、そうだよね。ありがとう。
これからもよろしくね。」
ウツ男と幽霊 金平糖 @konpe1tou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます