『12モンキーズ』

「正しいとか間違っているとかではない。あるのは多数派の意見だけだ」


【概要】

 未知のウィルスによって全人口の99%を失った未来。

 それを食い止めるために、できたばかりのタイムマシンで、ウィルスが拡散される前に戻って、食い止めようとする話。


 現代(彼にとっては過去)に飛んだ主人公ジェームスは、そこでテロ組織「12モンキーズ」の情報を探る。この12モンキーズという組織が、ウィルスを拡散させたという情報だけが頼りなのだ。しかも、このタイムマシンは一定時間で自動的に元の世界に戻ってしまう。時間は有限だ。


 しかし警察に捕まってしまい「『12モンキーズ』のウイルス散布計画を止めるために1996年に来た」というジェームスの主張は、精神に問題がある言動として、病人扱いを受けてしまう。


 ジェームスが1996年だと思っていた世界は、実際は1990年であり、再び2035年に戻って改めて1996年に飛ぼうとするが、今度は1916年に飛ばされ、もう一度2035年に戻ってようやく1996年にたどり着く。


 ジェームスの精神病担当医であるキャサリンは、最初はジェームスを単に精神病患者と見ていたが、徐々にジェームスのことを本当のタイムトラベラーだと認識する。


 一方で、何度も繰り返し過去に来たジェームスは、キャサリンの治療の影響もあり、徐々に「自分は2035年から来たと思い込んでいる1996年の人間」と誤解し始めてしまう。


 キャサリンはジェームスの主張に従って、ウィルスの研究をしていたゴインズ博士に警告を出すが、相手にしてもらえない。直後、テロ集団「12モンキーズ」はゴインズ博士を拉致し、動物園の動物を逃がし、代わりに檻の中にゴインズ博士を閉じ込めた。


 これで未来が変わったと思いこんだキャサリンはジェームスを連れ、ジェームスが見たがっていた海(2035年にはなくなっている)を見に行く為に空港に行くが、そこでウィルスを研究しているゴインズ博士の助手、ピータースを見つける。


 ピータースの荷物の中にはウィルスがあり、瓶を不審に思った警備員が荷物検査をするが、ピータースは荷物の中の瓶の蓋を開け「何もないでしょ?」と通過していく。


 それを見たジェームスは、銃をピータースに向けるが、駆け付けた警官たちに撃たれ死ぬ。


 未来は変わったのか……それとも変わらなかったのか……。



【登場人物】

ジェームス:2035年から来た男。1996年のウィルス拡散事件を食い止める為に、テロ集団12モンキーズを追う。しかし実際は1990年に飛ばされ、後に12モンキーズのリーダーとなるジェフリーに、テロのヒントを与えてしまう。二回目は1916年に飛ばされ三回目にようやく1996年に飛ぶ。


キャサリン:ジェームスの主治医。精神病の権威。歴史上の人物の精神鑑定をすることで有名になった。1920年ごろの「錯乱の結果英語しか話せなくなったフランス兵」の症例写真にジェームスが映りこんでいたのを発見し、ジェームスがタイムトラベラーであることを確信する。


ジェフリー:父親が行うウィルス研究に動物実験をしていたことに反発したことで、精神病院に送り込まれた青年。精神病院でジェームスに出会い、テロ集団「12モンキーズ」を結成することになる。父親であるゴインズ博士を拉致し、動物園の檻の中に閉じ込め、動物を逃がす。


ピータース:ゴインズ博士の研究結果を海外に持ち出そうとしている男。荷物を不審がられて、仕方がなくウィルスの入った瓶を開け、中身がないことを証明する。


ホセ:ジェームスと同じように12モンキーズを阻止するために送り込まれたタイムトラベラー。1916年の第一次世界大戦の欧州に飛ばされ、銃で撃たれて負傷した。



【所感】

「狂っているとは何か?」

 そんな問いかけを残す作品です。


 心の病に「適応障害」というものがありますが、社会に適応できずに、病気と判断されるものです。ですが、それって、社会が狂っていた時は、どっちが正しいんでしょうね?


 日本だとタイムリープものになると思いますが、ハリウッド的なリアリティに当てはめると「『未来から来た』と言われて信じる奴いるか?」という話になると。


 観客は最初にデストピアの未来の様子を見てから、過去に話が飛ぶために、この先のことを知った状態から始まります。こんな世界だけは嫌だというくらい、気分が下がった状態になります。


 これを食い止めるべく、タイムマシンに乗り込むジェームスに全てを賭けるという視点で眺めます。しかし、ジェームスが悪戦苦闘するだけでなく、狂人扱いされていくのを頭を抱えて見ることに……。


 そもそも、このタイムマシンがポンコツすぎるんですよね。正確に飛べないタイムマシンなのです。


 正確だと思っている機械が、割といい加減というのは、日本人の作品では少ないですが、海外では大好き設定の一つです。


 ブラックジョークは、真面目であればあるほど面白いし、ボタンの掛け違いが徐々に確信に変わっていく様は、ストーリーテリングとしては上質。

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