第12話 モンパルナス

モンパルナスは大きなあくびをした。

「暇だ」

スリをして手に入れた財布を手の中で転がす。

モンパルナスはアリーに巣食う犯罪集団「パトロン・ミネット」の頭の一人である。

最近はスリルもなく食えているので、暇なのだ。

また一つ大きなあくびをしたところで、本能が危険を察知した。

「パクられる」


ヴィクトルはモンパルナスを見つけ、物陰に隠れる。

モンパルナスは財布を手中で転がしてあくびをしていた。

暇そうである。

その隙を突いて逮捕できたなら……。

そう思った時、モンパルナスは歩き出した。

どこに行くのか。パトロン・ミネットの根城に行くのなら、尾行して割り出したいが。

一つの角を曲がったところで、モンパルナスは消えた。尾行していたことに気付かれていたらしい。

ヴィクトルが引き返そうとした瞬間、モンパルナスが上から襲い掛かる。

寸でのところで、首に突き付けられたナイフを振り払う。

殺人未遂。現行犯である。

モンパルナスは間髪入れず、太ももでヴィクトルの頸動脈を絞める。

ヴィクトルは体を前に折って、モンパルナスを振り落とす。

「やあやあ、警部さんじゃないか、噂の」

モンパルナスはヴィクトルを知っているようだ。

「投降しろ。お前には逮捕状が出ている」

モンパルナスは逃げ出し、ヴィクトルも後を追う。

モンパルナスは二本目のナイフを取り出し、やにわに立ち止まって、ヴィクトルの腹にナイフを刺す。

が、ヴィクトルは両手でモンパルナスの腕を掴み、捩じり上げて倒す。

倒されたモンパルナスはもがくが、関節を決められていて動けない。

ヴィクトルはモンパルナスに手錠をして、カラスを呼んだ。カラスの足に居場所を書いた紙を括りつけ、警察本部に遣わせた。

ナイフの刺さった腹からどくどくと血が流れる。が、力を緩めずモンパルナスを取り押さえる。

「警部さんよぉ。このままじゃ死んじゃうぜ。俺を見逃して病院に行きな」

「何を言ってやがる。離したら俺を殺すだろうが」

「ちぇ。バレてたか」

ははは、と乾いた笑いを漏らすモンパルナス。

しばらくして応援が到着し、モンパルナスは連行され、ヴィクトルはルブラン氏の診察にかかることになった。

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ああ、無常 噫 透涙 @eru_seika

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