第2話 初めての外界・荒野にて〈夢あるいは回想1〉

《こちらSUKIYAKI WASTELAND RADio  文明崩壊の後でも残しておきたい音楽を紹介中、ホロテープで何度だって聞いてもらうよ、続けて聞いてもらったのは『Keep a Knockin'キープ ア ノッキン』ドアを開けるなら慎重に!さらいに来たレイダーかもしれないぞ》

ああ、これは明晰夢ってやつかな?シェルターから出て4日目にして襲撃者と会った日の記憶なのに、その時持ってなかったラジオが聞こえる

「おめぇさん、どっからきなすった?この辺りじゃ見ねぇ顔だなぁ、ようこそ【壊れた世界交易路ブロークントレイル】へ何か買いたいものがあれば言いなぁ、交換でも良いがね」

シェルター内の学校で受けていた、生物の授業中に記録写真で見た馬より脚が多い生き物を連れたおじさんと会った日でもあったなぁ

「この先にあった村が襲われたみたいでなぁ、物が余ってるんじゃ今なら安くしてやるぞ」

「勃起不全に効く薬は無いかな?」

「勃起不全?わけぇのに大変だなぁおめぇ無理矢理、勃たせられる興奮剤なら有るが副作用がひでぇぞぉ、レイダー御用達だぁ、時々相手を殺しちまうぐれぇ攻撃性が上がっちまうシロモノじゃて今時分じゃぁ娼館にすら卸せねぇモンだがかまわねぇかな?」

「い、いや僕が勃たないとかじゃなくてぇ、えーと、そう家族!家族に必要なんです。危なくないのが有ったら欲しかったんだけど無いみたいだし、遠慮しとくよ、代わりにそこに掛けてある水と何か保存の効く食べ物が欲しいな」

なんだか自分のモノじゃ無いのにED改善薬が欲しいって言うの恥ずかしいな

「よし、そんじゃぁ大体1週間分ぐらいで切り良く500でどうかね?」

「えっと、今細かいの持って無いからお釣り下さい」

千円札を渡したらこの後凄く怒られたんだよなぁ、シェルター内だと使えたけど外だともう流通してないみたいだ

「おい、わけぇの!こんな旧紙幣じゃケツ拭く紙にすらなんねぇ、水も飯も無しだ、欲しけりゃ大人しく鉄キャップか軍票で払いな」

「うえっ?!使えないんですか?鉄キャップ?も軍票も持って無いです」

「なら交換トレードだ価値が分からねぇなら持ち物見せて見な?」

ここでトレードしたものが直ぐ奪われてしまったのは悲しかったなぁ

おじさんはトレードについての話をしながら僕の荷物を物色した

「いいか?トレードってのは社会を構成するのに必須なんだ、特にフェアなトレードってぇヤツはなぁ、さっきおめぇさんが出した旧紙幣なんてのは交換における一種の到達点の一つなんじゃよ、信用通貨って言ってなその貨幣の価値を一つのコミュニティが担保するんじゃ、まぁそのコミュニティの国が滅んじゃ意味無いがのぉ」

「さっき言ってた軍票っていうのは信用通貨とは違うの?」

「うーむ、一歩手前ってところかのぉ、その場に金が無い時に軍が払った事にして後で取りに来てくれって送りつけるもんじゃコレが貨幣自体に価値が有ると大勢に信じ込ませれば信用通貨になるんじゃないかねぇ、っとおめぇさんこんな物を何処で見つけなすった?」

と僕の荷物から引っ張り出したのはシェルターから出る時に持たされた全国地図だ

「これはまさか旧時代の地図かっ?!終末戦前の地図は正確なぶん価値が高いんじゃ!コレを譲ってくれ!!水、食料一週間分にファイヤーピストンとランタンも付けてやろう!」

「わ、分かりましたそれでお願いします」

少し勢いで押し切られた感じもしたけど取りあえずトレードが成立した

「じゃぁおまけついでにちょっとしたアドバイスをやろう、今日は夜通し歩いた方が良い、さっきも言ったが交易に向かってた先にレイダーが襲撃かけたらしいからの、幸いこの道の先には一つコミュニティがあるから辿るだけでいいはずじゃ、こっちは被害確認も有るから連れてくことは出来んぞ」

とそれだけ言い残しておじさんは去って行った。

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