第1話 初めての外界・荒野にて〈夕方〉
《…はよう…ウェ…ストランド、世紀ま…の世からお送りするSUKIYAKI WASTELAND RADio ホロテープで放送中!擦り切れるまで聞いてもらうよ》
シェルターから出て数週間すでに行き倒れの死体から物を取る事に躊躇は無い、ノイズ混じりのラジオのおかげで場所は直ぐに分かった。
今日の収穫は悪く無さそうだ、白骨化が進んでいると処理が楽で良いし腐敗も終わって臭いも少ない、初めて死体剥ぎを行った時は嫌悪感と臭いで吐きながらだったのに、ヒトは自分で思うより簡単に慣れるモノらしい。
一通り使えそうな物は剥いだが、やはり一番欲しいものは見つからない、僕がシェルターから出る理由になったモノ、勃起不全を治す薬、そう【ED改善薬】である。
僕が勃たない訳では無い、シェルター内全体の傾向として勃起力が低下していたらしく出生率が下がってきていると、僕を捜索者に選出した監督官達から説明を受けている。
コミュニティーの為だ、決して僕が勃たなくなった訳では無い――――が、見つけたら安全性を確かめるために治験は必要だと思う。
「さすがに、こんな道端で見つかる物なら数年毎に捜索者が選出される訳ないもんなぁ未だに帰還者は居ないし簡単に見つかる訳ないかぁ」
愚痴がこぼれてしまったが聞いてくれる人は居ない、先代の捜索者は男女の2人組で選出されたと記録にはあった、人数決定の基準が分からないがとても羨ましい。
この際、会話が出来れば同性でも構わないと思わせる程度には一人は辛い、早く改善薬を見つけてあの安全なシェルターに戻りたい、一人を認識した途端にネガティブな思考があふれてしまう。今日はそろそろ切り上げてキャンプにした方がいいかもしれない
《Are you lonesome tonight?♪》
「Are you lonesome tonight?♪、君は今夜1人かい?」
「
「もしよければ今夜、僕のキャンプに来ないかい?」
「
「君の身体に用があるって言ってもかい?」
「
「はぁ、しょーもな、、僕は何を」
白骨を紐に結び付けて簡易な鳴子トラップを作りながら、テンションを上げるためラジオから流れる歌を歌っていたのに、頭蓋骨相手に会話するとは寂しさがピークに来てたらしい、更に落ち込んだ気分になったから早めに就寝する事にする。
ラジオは次の選曲に移ったようだ
《次の曲にいってみよう!今夜はいい夢が見れるといいねぇ、私を夢まで連れてって『Mr.Sandman』》
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