旅の終わり。
語るべきことは何も無い。
道のりについても、その間の出来事についても。
ただいつものように旅をしただけだ、これまでと同じように、私はある山道を通ってひとつの寂れた小屋の前に辿り着いた。
飾り気はなく、華もない。
およそ廃墟と言っても差し支えのないザマであり、人間が生活しているとはとても思えない様子であった。
「……こんなものが」
腰の刀に乗せた腕に力が入る。
私は進み、扉の前に立ち、ノックをしようと上げた腕を途中で止め、そのような気遣いはもはや必要ないだろうと思い行動を改めた。
——ダン。
鍵ごと扉を蹴り破る、そして堂々と部屋の中に入っていく。
「……おや」
中に居たのは、床に伏せる一人の女だった。
※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※
「随分と乱暴なお客人ですね」
机の上には薬とコップが、女は病人らしく簡素な衣服に身を包んでいる。
とても『英雄』と呼ばれた人物には見えない、今の彼女にはもうその力は何処にもない、気力も能力もすっかり衰えて久しい。
「私を殺しに来たのですか?」
「話が早いな」
コイツだ。
コイツが最後いや最初の英雄、バディアル=ゼスティール、我らの全ての始まり、彼女の存在があったからこそ我々は生まれた、生み出された。
「お主が居る限り、全ては終わらない」
「私はただ死期を待つだけの病人です」
そう、彼女は現役を既に引退している。
治療の余地がない重病、手の施しようのない死の運命、彼女にはもう戦う力は残されていない、放っておいても一年も生きられない。
「それでも」
片腕で刀を抜く、もう利き腕は存在しない、だからこうして無様に振る舞うしかない、もう全盛期の半分も力を出せないだろう。
「今日この時を持って、貴様の人生は幕引きとなる」
——切っ先を向ける。
旧時代の遺物はもう必要ない、時代は過ぎ新たな光明が差す、そこに我らのような個は居なくていい。
彼女は微笑んで言った。
「私は既に死者と変わりません」
柔らかい声だ、まるで歌のように心地いい、彼女は死を受け入れている、私に対してなんの恐怖も抱いていない、それでいて敵意も感じられない。
力を隠している訳でもない、そういう演技をしているというふうでも無い、彼女にはもう終わりが見えているのだ。
これは死にゆく者の言葉、差し出された手、黄泉からの手招き。
「ですがこの命はまだ灰を産み落とします」
心に訴えかけて来るような抑揚は脳を揺らす。
「死にかけであってもまだ私は私のままです」
彼女は、自分の体にかけられた布団を退けて、痩せこけた体を起こしてベッドから足を下ろす。
「貴女の話を聞いた時から、こうなることを予感していました」
台に手を乗せて、体重を支えながらよろよろと立ち上がり、具合が悪そうに数度咳き込む。
口元を抑えた手は赤く滴っていた、もうただ立ち上がるだけでも命を消費する身、明日生きている保証がどこにも無い不確かさ。
「ですが私は、今の世界を気に入っています」
赤い手を衣服に拭い付け、一歩前に踏み出す。
「ありもしない平和より、手の届いた偽りを」
大量の汗をかき、青ざめた顔で、荒い呼吸で、痙攣の止まらない足で地面を掴みそこに立つ。
「もう剣を握ることは出来ませんが、貴女の野望を打ち砕くなど造作もない」
その目は滾っている、暗く邪悪に淀んでいる、とても死にかけの病人のする目では無い、放たれる殺気はこれまでの比ではない。
「ひねり潰して差し上げましょうとも」
「……いざ」
最後の戦いを始めようか。
「いざ、参る——」
英雄アマカセムツギ、ここに推参。
※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※
トン、トンと片足で踏み込み、頭上を大きく回して刀を振り下ろす。
バディアル=ゼスティールは、そんな私の間合いに踏み込んで振り下ろした腕を掴み取り、そのまま勢いを利用して投げ飛ばした。
「……!」
その動きはあまりに流麗、見ていても反応出来なかった、掴まれても抵抗できなかった、これは力とか速さとかそういう話じゃない。
技量、彼女を彼女たらしめる圧倒的な技巧、天地上下をひっくり返された私は床を転がりながら、目の前の標的に対する認識を改める。
強い——!
直ぐに復帰、そして刀を構え直し体ごと突撃、十分相手の動きに注意しながら仕掛ける。
だが彼女は、正しく紙一重の身のこなしによってそれを回避、そして再び私の体を捕まえて崩し、次の瞬間には顔から地面に倒されていた。
「く……っ!」
腕を無くして重心が偏っているせいか、何故か妙に簡単に投げられる。
今度はさっきとは違う、極限まで精神を研ぎ澄ましていた、にも関わらず私はまたこうして受け身を取らされてしまっている。
ゴロゴロと床を転がり、その途中で椅子を掴んで投げ付ける。
——ブォン!
轟音と共に迫ったそれは、しかし彼女の手に触れた途端勢いを失い、そのまま床に優しく降ろされた。
「行儀が悪いですね」
コイツ……!
飛び掛り、フェイント八連、騙しに騙しを重ねて間合いとタイミングをズラし、全くの予想外の角度から攻撃を加える。
……だが。
——トン。
「な……」
指先が刃筋に添えられ、軌道を逸らされる。
そしてそのまま切っ先を指でつままれ、刀越しに技をかけられ、崩れた体勢を利用して引き込まれ、羽毛を払い落とすかのように容易く。
——墜落する。
「おのれ……!」
三度目の受け身、転がって距離を取り、再び刀を構え直そうとして気付く、この手から獲物が失われているという事実に。
「こういう危ないものは置いておきましょう」
壁際に立てかけられる私の刀。
馬鹿な、いつ奪われたのじゃ、もぎ取られる感覚などまるでなかった、握る手を緩めたつもりはないしその予兆すらまるで感じ取れなかった。
奴の攻撃には意思がない。
無我の境地などという言葉すら生易しい、私は今完全なるゴーストを相手取っている。
ゼロと相対しても生み出されるものは何も無い、元が存在しないモノに対して、何をしようが何をされようが無意味だ。
片腕で殴り掛かる、当然素人には受け止めきれない技術が込められている、師匠から叩き込まれた『戦う術』の全て。
……しかし!
——絡め取られる暴力、受け流され壁に叩きつけられる。
「ぐ……っ!」
まだまだ!一瞬で復帰して後ろ回し蹴りを放つ。
踵に手を添えられて地上に堕とされる、そしてそのまま背後を取られ、立てた箸が倒れるかのように背中から地面に引き倒されてしまう。
「造作もない」
——舐めるな。
手を着き!倒れた姿勢のまま繰り出す蹴り!
柔らかに受け止められ、足を引っ掛けられて吹き飛んでいく、そしてテーブルを巻き込んで追突し、敵を睨みつけながら起き上がる。
「……フン」
鼻を鳴らし、腰に差した刀の鞘を抜く。
「おや、そちらも奪っておくべきでしたか」
彼女はまるで息のひとつも切らしていない、本当に死にかけの病人なのか?あれだけの技を使っておきながら消耗している気配がない。
——斜めに切り込む。
またも片腕ひとつで方向を変えられる、だがそれは織り込み済み。
接触点を利用して崩しを行う、組手が得意なのはお主だけではない!
「いいえ、違います」
——グラッ。
「な……!?」
破られた、真っ向から、純粋な力量で覆された、完璧な体勢で完璧に技に入ったはずだ、100%確実に術中にハマったはずだ!
それが、まさか、こうもあっさりと。
技術勝負に敗北した私は、体重など存在しないかのように軽々と宙を舞い、三度床を跳ねさせられた。
「ぐ……っ」
今度のは致命的だ、受身を取り損ねた、攻めたのが仇となった、モロに一撃を食らってしまった、もし私が普通の人間なら終わっていた。
歯噛みし、向き直る。
どうやって勝てばいいのかと、唇を噛んで顔を上げたのだが。
「ゴホッ、ゴホッ!」
彼女は胸を押えて倒れ込み、床に手を着きながら大量の吐血をした。
「フン……情けない体です……」
口元の血を乱暴に拭い、震える膝を掴んで押さえつけながら立ち上がり、私なんぞよりも遥かに消耗した顔でこちらを睨めつけるバディアル。
そうか、やはり無理をしていたんだな。
「たかだか死にかけているだけではないですか、この程度の仕事もこなせずして何が英雄か、まだ壊れていいだなんてひとことも言ってませんよ……!」
なんて顔色だ、なんて目だ、生きる執念、執着、およそ狂気とも思えるそれは、私が想像出来うる次元を遠く逸脱している。
……とはいえ。
たとえどんなに弱っていようとも、考え無しに飛び込んで勝てる相手では無いことは分かっている、奴を倒すにはそれではダメだ。
——構える。
向かい合って、睨み合って、そして動く。
奴の衣服を掴もうと伸ばした手がパチンと払われる、間髪入れず奴のつま先を踏みに行く。
当然躱されるが今度は頭突き、狙いを外されるや否や体当たりに移行。
「ち……!」
そうだ、彼女は病人だ、体力がない。
全盛ならいざ知らず今ならば。
彼女は先程から自分から仕掛けては来なかった、ただこちらの一撃を受け流して攻撃に転じるだけ、それもあまり強烈なものではなかった。
もちろん受け身を取り損なえば一発で終わる危険性のあるものばかりだったが、しかしこれまで戦った英雄の技と比べると『殺意』が足りていない。
初めはそういう技なのかと思っていたがそれは違う、彼女は私を殺せないのだ。
それだけの力が出せない、制限されている、もし私を殺すだけの力を使えば自分が危うい、少し強い技を使った途端血を吐いて苦しんだのがその証拠だ。
だからこうして連続で攻撃を仕掛ける。
多少受け流されても、多少投げられそうになってもお構い無しに、次から次へと休みなく攻撃する。
そうすると彼女は病人の体に負担を蓄積させていく、そうなればいずれ精細を欠いて隙が生まれるだろう、その時が勝負を決めるチャンスだ。
向こうから仕掛けて来られない以上、私はとにかく掌握されぬよう動けばいい、そうすることで必ず綻びが生まれる。
「うぐ、っ……!」
動き続けた彼女はとうとう限界が来た、吐血し動きが止まった。
私はこれ幸いと踏み込み、そのガラ空きの胴体にどぎついのを叩き込んでやろうとして。
「——お前、私が死を恐れていると思ってるだろう」
その声を聞いた。
——ゴッッッッ!
直後、頬に突き刺さる拳!
視界が揺れる、衝撃が走る、まるで鉄の塊で殴りつけられたかのような一撃だ。
奴はついに攻撃に打って出た、消耗や体調などを気にせず、相手を打ち倒すための行動を起こした、それは常人では考えられぬような行い。
——だが。
「……!」
驚愕に染まる奴の顔、何故なら奴の拳は流されていたのだから。
「それでこそ、英雄だ——ッ!」
「しまっ……」
カウンター!誘い込んでやった!攻め続ければ必ず反撃に転じてくると思った、そのまま大人しくやられるような相手ではないと信じたのだ!
受けた拳を顔で流し、そして用意していた一撃を奴の顔面に叩きつける。
——ガッッ!
殴ったままの勢いで体ごと突っ込み、膝蹴りを胴体に叩き込む、着地際に相手の身体を引っ張って、首を抱えながら床に叩き落とす。
ゴロン、ゴロンと床を転がり、拳を地面に突き立て起き上がる。
「やって……くれる……っ!」
ダメージは甚大だ、元々のコンディションが悪すぎる、こんな浅い被弾であろうと馬鹿には出来ない。
「ごは……っ……ぐ、っ」
胸を押えてうずくまり、床を叩いて声を上げる、しかし受けた損害は非常に大きい。
「はぁっ……はぁっ……」
私は走り込んで、その下がった頭を思い切り蹴り飛ばした。
——ガツッ!
その体は軽く、簡単にひっくり返された。
「がっ……!」
床に倒れ、息を切らし、なんとか起き上がろうと這いずるも、そのための力が無い。
私は先程奪われた刀を取り返し、彼女の元へと歩いて行った。
「来るなッ!」
意地とプライドをもって奴は立ち上がり、ベッドの布団の中から一本の剣を取り出した、なるほどそこに隠していたのか。
「はっ……はっ……」
震える手でそれを鞘から抜き、しかし重みを支えられずによろめき、ドンッと背中を壁にぶつける。
「勝負はあったようじゃな」
ただの一度、ほんの一撃で戦いは終わってしまった、それ程までに彼女は衰えていたのだ。
「……そう思うのなら……かかってこい……ッ!」
『私はここだ』と剣を構える英雄、もうそれを持ち上げていることすら出来ないはずなのに。
——時間が止まって、止まるようにゆっくり流れて
たった一度、我らは剣閃を交えた。
その結果は。
「く……は……」
雪崩のように崩れ落ちる女の姿と。
浅く切り込みの入った目元から、赤い雫を垂らす剣士の姿があった。
——ここに勝負は決した。
「……あぁ、もう少し早く、来てくれていたら……」
そんな後悔の言葉を最後に、彼女は血の海に埋もれて沈んだ。
もう、動くことは無い。
「——」
これで終わった、私の旅は終わったのだ。
今頃ストランドはどうしているだろう、無事に作戦を成功させたのだろうか?それとも死んでしまったのだろうか。
私はその場に座り込んで、しばし放心していた。
これが現実のことなのか信じられなくて、実感がなかなか湧いてこなかったのだ。
……だが、やがて。
「終わった、のだな」
血みどろの刀に目を落とし、この現実を改めて認識することができた。
「これで良かったのだろうか、これで本当に世の中は変わるのだろうか」
私はきっと新たな地獄を産んだに過ぎない、でもそれでも、作り出してしまったものに対する責任を果たす必要があったのだ。
これは世直しでは無い、ただの見苦しい意地だ、私は私のわがままをもって世界を壊す。
否、壊した。
罪を重ねて罪を上塗った、私はきっと何より邪悪で悪辣な存在だ、誰のためにもならないし誰も私を許しはしないのだろう、それでも。
「……これで、良かったんだ」
それは紛れもない本心であった——。
※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※
その後のことはよく覚えていない。
私は燃え尽きてしまっていた、気が抜けて仕方がない、だからストランドの話も半分ぐらいしか覚えていないし覚える気もなかった。
だからざっくりとしか理解していないが、世の中は私の思った通りの絶望が蔓延した。
政府が滅び、英雄が死に、世界の真実を叩きつけられた民衆は多くが狂ってしまった、未だ戦乱の続く世界は目を覆いたくなる程に残酷だったからだ。
なによりそれらの、救えたはずの命や、自分たちが見ないようにしてきたモノの重さを真っ向から目撃した結果、罪科に耐えきれなくなった。
争いが激化した、なんてことは無い。
むしろその逆、人々は気力を無くしてしまった。
だがそんな民衆を導く者は存在する、現状に異を唱え立ち上がる者が、そうこの事態を引き起こした大元の存在『反英騎士団』だ。
彼女らは悪党だ、人の心を掴むのは上手い、瞬く間に民衆は彼女らの掲げる理念に魅せられ、支えを失った心を補強して行った。
縋るものが変わっただけ、結局はそれだけだ。
しかし確実に以前よりはマシになる、連中を知る私がそれを保証する。
少なくとももう『英雄』なんてモノは生まれない、民草の目を眩ませ己の利益を守ろうとする下賎な連中とはワケが違う。
奴らは『良い世の中』を望んでいる、悪いことをするには『狂った世の中』じゃダメだ、悪人を悪人と正しく認識してくれる観測者がいる。
動機は不純だし、騎士団なんて名前負けもいいとこのどうしようもないロクデナシ共だが、だからこそ信じるに値するだろう。
全ては終わった、もう私の出る幕ではない。
だから私はここに帰ってきた、私にとっての故郷とも呼ぶべきこの山に、師匠と暮らしたあの懐かしき木の家に。
「——ただいま戻りました」
お墓の前、刀を地面において正座をし、姿勢を正して向かい合い言葉を発する。
質素な墓だ、飾り気もない、本当はもっとしっかりした物をこしらえたかったのだが、残された遺言状に従った故こうなっている。
「私は、役目を終えました」
必ず果たすと心に決め、そして見事それを遂げた、決して楽な道のりではなかったな。
「片耳、片目、片腕、師匠から頂いた着物、色んなものを失くして参りました、刀も一度折れてしまいました、不甲斐ない弟子を許してください」
自然と思い起こされる地獄のような日々、出会いよりも別れの方が多かった、そしてその大半はこの手によるものだ。
「大変多くを殺しました、師匠の技を穢してしまいました、師匠の教えを破ってしまいました、女子供を手にかけてしまいました」
罪の告白、やってきた事を洗いざらい。
「友達を殺しました、なんの罪もない友達を、なんの罪もない兵士達を、私は私の勝手な思いの元彼らの人生を奪って参りました」
ひとりひとりの顔を思い出す、死に様の言葉や表情が痛いほど、この胸に刻まれて癒えない。
息を吸って、吐いて、そして本心を告げる。
「私は、全てが終わったあかつきには、この手でこの命を終わらせるつもりでした」
懐にしまった短刀を取り出す、腋に挟んで鞘から抜き、その刃を見下ろす。
「初めは誰かに裁いてもらおうと考えておりましたが、それは出来ぬと思い直しました、私は初めの志の通り『英雄』を殺さなくてはいけない」
キラ、キラと、頭上から降り注ぐ太陽を反射し刀身が輝いている、新品の、使われたことの無い、誰の命も殺めたことの無い純粋な刃物だ。
「私は頑固者です」
落としていた視線を再び前に向ける。
「考えはそう簡単に変わりません、たとえ幾千幾万と思い悩もうとも決して」
短刀を片手で握り、そして喉元に突き付ける。
「残るはただ一人、後はこの人斬りを成敗して終いとしよう、初めの通り思惑を遂行致そう」
思い出、と呼べるほど綺麗なものではないが、しかしなくてはならないものだった
微笑んで、涙が片筋零れ落ちた。
握る手に力が篭もり、刃先が僅かに赤く濡れ、そして……。
「——とんだ大、馬鹿者じゃな」
そんな言葉を遺し、私の人生は精算された。
もう治らなくてよい、もう助からずともよい、何故なら役目は終わったのだから、私が生きている理由はもう何処にもない。
苦痛と冷たさと孤独と、ほんの僅かな血の温かみ、それが私が最期に感じたモノだった——。
※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※
『来るなって、言っておいただろうがよぅ』
——返す言葉もない。
『どうして言いつけを守れねぇんだ?お前さんよ』
——合わせる顔が無い。
『……だがまぁいい、来ちまったモンは仕方ねぇ』
——懐かしい笑顔が見れた。
『お前さん、俺んとこで面倒見てやるよ』
——まるであの日の、出会ったあの日のような。
『久しぶりに稽古、付けてやろうか』
——変わらない師匠の姿が、私を迎えてくれた。
※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※
英雄斬りの反英雄——完。
英雄斬りの反英雄(完結済) ぽえーひろーん_(_っ・ω・)っヌーン @tamrni
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