キミを口にして
校舎裏で、僕は待っていた。
なんどもあの言葉を疑い、帰ろうと思ったけど、それでも待っていた。
だって、彼女の方から声をかけてくれたのだから。
彼女を信じる。そう言えば聞こえはいいけど、僕はただ期待してしまったのだ。彼女が自分に告白してくれるなんて
「ごめんね、待ったよね?」
「えっ……」
僕は思わず絶句した。
彼女の声がしたからではない。彼女がそこにいたから。本物の彼女がそこにいた。端正な顔だちに、可憐な花のような身のこなし、まさに誰もが虜になってしまう美少女。
「もう、なに驚いてんの? 話があるって言ったでしょ」
「うん」
「もしかして信じてなかったの?」
そう言ってジト目で彼女に見られる。こんなにも彼女と話すのが初めてで変に緊張してしまう。
「ごめん……」
「いいよ、謝らなくて」
「それでその、話って……」
「君が好きなの。だから付き合って欲しいんだ」
「な、なんかの罰ゲーム?」
「違うよ」
「無理に僕なんかと付き合わなくたって」
「違うって」
本当はすぐにでも僕も好きって言うべきなのに、その言葉だけは出てこない。
自分への自信のなさが、釣り合わないからと彼女を遠ざける。僕に彼女を汚す権利なんてないと。
「私、嫌いな人なんかとウソでも付き合ったりしないよ」
「それって──」
そこで彼女は僕の前を歩き、振り向きざまにこう言った。
「本当にキミのことが好きなんだよ」
その言葉に、僕の心臓はしっかりと打ち抜かれた。
だって、思わず呟いた言葉が、
「……僕も好きです」
だったのだから。
■■■
あれから二日が経った。
彼女は僕のことをみんなに話していたが、僕はそれが気が気ではなかった。
けど、彼女と本当に付き合ってるのだという実感は何事にも変えられない幸せだった。
そんなことを思いながら彼女のことを見ていると、
「ねぇ、
「なんの予定もないけど、どうしたの?」
彼女はこっそりと耳打ちするように、
「今日、家に私一人なんだよね。どうかな?」
そう告げた。
それからのことは気が気でなくて、気がつけば彼女の家の中、それも彼女の部屋の中だった。
どうやって来たのか、どうしてここまでついて来てしまっているのか、それすらもわからない。
ただ、ドキドキと高鳴る鼓動が自分が緊張してることを教えてくれる。
「ねえ、
そう言いながら、彼女は僕をベッドに押し倒してくる。
それからは一瞬だった。
彼女は手際よく僕の服を脱がせると、スカートを広げ──
「なに、これ……」
絶望した。
理解できない恐怖と、今さら気づいても遅いという事実に。
花に群がる虫、それが僕だったのだということを、今知ったのだ。
彼女のスカートの中は名状しがたい異形だった。彼女は人間ではなかった。
「もう、我慢できない……。いいよね?」
そういって彼女はスカートをバサリと僕の頭にかけると、僕という存在が彼女の中に溶けていくのがわかる。
「どう、して……? 好きだって……」
「好きですよ。食料として、とっても良いカラダですから。大好物です!」
きっと彼女は誰にとはなく、屈託のない笑顔でそう言ったのだろう。そんなことが、声音からわかる。
そして、同時にこう思ったのだ。彼女に食べられるならそれでもいい、だなんて。
◇◇◇
彼を食すのにかかる時間、それは一晩中の出来事だ。
私は満足してる。この容姿に生まれたことも、こんな存在であったことも。
だって、とっても楽しいから。そして、なにより──
「ごちそうさまです」
私は幸せをかみしめながらお腹をなでると、微笑み学校へ行く準備をするのだった。
「キミ、とっても美味しかったよ」
花より団子 世界一の美少女が選んだのがぽっちゃりの僕だなんて アールケイ @barkbark
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