第9話 真相

 シーカーは煙幕の消えた会場に戻ってきたところ、バトラー……いや、ホームズと呼ばれた猫から招集された。


「みなさん、おつかれさまでした。モリアーティ教授には逃げられてしまいましたが、まさか初推理で彼にたどり着くとは思いませんでしたよ」

「でも逃げられちゃったよ」


「それに、ホームズが居たからよかったけど、完全に推理を完遂したとは言えないかと」

「ライヘンバッハ……最後の事件からモリアーティ教授が犯人だって舞い上がって勇み足で推理をしたのがまずかったかな……」


 それぞれが反省点を口にする。初めての本格的な事件とは言え、容疑者を特定までして追いつめられなかったのは悔しさも大きいようだ。


「えぇ、みなさんに落ち度はありますし、冬の女王様に届いたこの手紙も見落としていましたしね」

 そういって一通の手紙を取り出す。それはモリアーティから冬の女王への私信であった。


『──パーティ当日は新鮮なキングトラウトサーモンをお持ちします。ぜひマリネやカルパッチョなどの火を通さない料理で最高の味をお楽しみください。』


「これを突き付けられていれば、教授があらかじめスケルトンアニサキスを食べさせ、冬の女王様に罪を着せようとしたことが分かったはずですよ」

「ホームズ……この手紙はどこにあったの?」


「ライヘンバッハ教授の名前を知った後に、私は女王様達に改めて聞き込みをしました。そうしたら思い出されたようですよ」


 モリアーティ教授を捕縛できなかったことでそれぞれ思うことがあるようだが、ホームズからはそういった部分を責められはしなかった。

 それどころか、拍手を持って三人に謝辞を述べた。


「しかし、この異世界の異変である、四季の女王の仲違いは回避されましたよ。依頼は達成されています。

世界樹様のお世話係として転生してから、世界に直接手出しをすることを禁止されました。

しかし、観察していた世界にモリアーティの痕跡を見つけてしまい、彼をとらえるための協力者が必要でした」


 そして水華の前に手を差し出したホームズはこう続ける。


「完璧に猫に擬態していた私を、普通の猫ではないと見抜いていたのは、あなたたちだけでした。その直観と観察力に可能性を見出したのです」


「うちらの可能性……ですか……」

「えぇ、大人の探偵は常識で推理してしまうので、体温を上げてアニサキスの活動を弱めるなど考え付かないでしょう。

それに最初に決めていたんです。アニサキス中毒まで突き止めれば及第点、それを仕掛けた犯人にたどり着けば合格、逮捕できれば大金星とね。つまり合格点ですね」


 ホームズはポンポンと手を叩くと、この世界に来た時のワープゲートを取り出した。


「さて、この世界の謎は解決されました。世界樹様のところに戻ります、これから忙しくなりますよ」


 ゲートを通り世界樹の元に帰還すると、先ほどまではなかった建物が出来ていた。


「こちらの探偵事務所があなたたちの拠点です。これからの事件では見つけた証拠品をこちらで分析したりもできますよ」


 三人は突然の出来事に戸惑っていると。


「あぁ、そうでした。こちらの事務所というか、探偵事務所の名前を決めてください。今後はその名前で活動を行っていただきます」


「それはもう」

「決まってるんだよね」

「せーの」

「「「AtoZエトゥゼ」」」

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女子中学生探偵団 AtoZ バイオヌートリア @AAcupdaisuki

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