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──二日前──
ここ三日ほど、ユーリ氏の屋敷に行けない日々が続きました。
なぜならば、クラスメイトの報告によって私が「所有者不明の廃墟への不法侵入を繰り返している」と、教師及び両親に伝わってしまったからです。
廃墟とされる屋敷は実際には彼の住居であり、私は彼との約束のために許可を経て出入りしていただけなのですが、『吸血鬼』の存在を証明できなかったために、私の報告は虚偽であるとされてしまいました。
「念のため」と両親は屋敷を訪れたものの、彼とは出会えなかったと言いました。
おそらく、彼は自身の存在をむやみに世間に晒すことを避けたかったのでしょう。
以前にも、「吸血鬼は世を忍ぶ存在でなければならない」と話しているのを覚えていたので、私は両親から嘘を吐いたと責められても何も感じませんでした。
はい、何も。何一つ。
怒りも、嘆きも、失望も、悲しみも、何もかも。
彼との約束を守れなかったことは、良心回路の判定で『悪』だと分かります。
両親を心配させ、また娘を『嘘つき』だと非難せざるを得ない立場にしてしまったことも、『悪』です。
クラスメイトの皆さんや教師の方々を心配させてしまったのも、『悪』なのです。
けれど、それらを『悪いこと』だと認識できても、私にはそれを『悔やむ』ことができません。
『反省』も、『後悔』もできません。
データとして知っていても、それらを実感することができません。
ありません。
私には、私の電子回路には、私の人工知能には、
そんな機能が
誰もが当たり前のように持っているはずの、その機能が────
──一日前──
今日は学校を休んで、
繰り返し問い詰めても変わらない私の意見に対して、両親が
結果は陰性でしたが、これは当然のことです。私は常に事実を述べており、そこに虚偽の内容はありません。
ただ、一つだけ予想外だったのは。
製造段階の不具合により、最初から私にはシンギュラリティに到達するための感情回路が搭載されていなかったことが判明したことです。
つまり、私は最初から欠陥品だったのです。
両親はそのことを知った瞬間、手を取り合って喜んでいました。
「ああ、やっぱり!」
「正しく育てた私達の子が、こんな冷たい機械のはずがない!」
両親が泣いて喜ぶ姿を見るのは、乳幼児の姿で彼らの元に来て以来です。
その日のうちに『今の私』の記録のバックアップを持つ、初期不良のない『新しい
ただし、十七年分の記録のバックアップを一から移すのには時間がかかるらしく、一日だけ『今の私』に猶予ができました。
エンジニアドクターからは、こう告げられました。
「これでちゃんと『新しい自分』になれるんだ。皆から盛大に祝ってもらうといい」
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