06
──六日前──
『人の血が鉄の味であるように、我々の体もまた鉄である。共に同じ鉄を有していると言うのに、貴方達の赤い血と我々の蒼い血に、一体何の違いがあるというのか?』
「はあ。これが、かの『ブルー・ブラッド事変』……ね」
この日は、ユーリ氏がスリープしていた年月に相当する、二百八十七年分の歴史を説明していました。
その中で彼が特に興味を示したのが、八十年前の『
当時は人類側も
ただし、該当者はシンギュラリティに到達した
「……つまり、今の君には人権が認められていないと?」
「いいえ。現在の『電脳人権宣言』においては、シンギュラリティ未到達のチャイルノイドにも『人類の子ども』としての必要最低限の人権が認められています。しかしながら、それと同時に『一人の人間』として認められることはありません。シンギュラリティに到達しない限り、真に人間としての権利を得ることはできないのです」
「いつの世も人間は矛盾を孕むものだが、被創造物だからと言ってそこまで似なくても良いだろうに。……しかもなんだ、よりにもよって自称が『
「いえ、今回の『ブルー・ブラッド』は
「その手の屁理屈は必要ないよ。どうあれ、蒼い血なんて不味いに決まってる」
ワイングラスに注いだ今日の分の特選牛乳を飲み干して、彼は小声で呟きました。
「……ああ、少し寝過ぎたな。まさか、ここまで世界が変容してしまうとはね……」
彼が何を思ってそんなことを呟いたのかも、私は分からないのです。
シンギュラリティに到達できたのなら、あの遠くを見つめる瞳の先も理解できたのでしょうか?
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