第2話 アン②
私は困惑している。それは父の代わりに牛の世話をしている時に現れた。牛たちが怯えていたので牛たちの視線の先に目線を送るとそこには白い髪の幼女が牛のしっぽを掴んでいた。次の瞬間、幼女は牛に振り回されて宙を舞った。幼女が接地したのと同時に私は我に帰り幼女の元へ駆け寄った。しかし、落ち方が悪かったのか幼女の首はあらぬ方向に曲がってしまっていた。私はこの幼女を知っている。五年前、幼女が牛に跳ねられる事故があった。奇妙なことにその幼女の保護者や手がかりらしいものは全くなく、街の人もそんな子は見たことないと口を揃えて答えていた。その幼女は牛に跳ねられて目の前で確かに…。見た目もあの時のままだ。ありえない。どう見ても人間なのに同じ見た目で生き返るなんてありえない。この子は、この生き物は…いや、生物と言っていいのだろうか…とにかく、これは人間なんかじゃない。では、何なのか。やはり1番有力なのは"魔物"。ならばこの事をギルドに報告しなければいけない。私は急いで街に向かう準備をした。
街は私の家から少し離れた場所にある。と言っても小一時間かければ十分着く距離だ。特に城壁などはないが代わりに結界が張ってある。住民の標である特殊な金属のカードを携帯している者だけが結界を通り抜けることができる。ロストマジック?とお父さんが言っていた気がする。街の中心街にあるギルドに着いた。
受付には筋骨隆々な大きいおじさんが座っている。
「ご要件は?」
「うちの牧場の敷地内に魔物が出現したの。」
「討伐の依頼か、どんな見た目だった?」
「討伐じゃなくて報告よ。魔物は牛に倒されたわ。見た目は綺麗で長い白い髪の幼女だったわ。」
「人間に化ける魔物か。たしかにこの辺にはいないな報告ありがとう。」
「まだ続きがあるから。その魔物、実は五年前にも現れてるのよ。全く同じ見た目で。」
「そりゃ妙だな。同じ種類の魔物が巣を作ってるにしても五年もの間、誰にも目撃されてない…いや、見た目が全く人間ならありえないことでもないか。待てよ、同じ見た目だと?人間に化ける魔物は総じて化ける人間のオリジナルがいる。しかし、五年前の報告では誰も見たことがないと言っていた。」
「それでね、実は五年前と同じ個体なんじゃないかと思ってて…」
「それは、その魔物が生き返ってるって言いたいのか?」
「うん」
「たしかに牛にやられるぐらい弱い魔物なら進化の過程でそういう能力を手に入れてる可能性もあるか。まあ、それだけ弱ければ害もないだろう。とにかく報告ありがとう。報酬は銅貨5枚だ。」
何だかもやっとするが、私にはどうすることもできないので帰ることにする。
たしかに、害は無さそうだけどね…
死ぬほど強くなる @wadare129
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