きちんとした一冊の本

物語には始まりがあれば終わりがある。

カクヨムはその傾向として何よりもまず読んでもらわないといけないという大前提に振り回されがちな舞台であり、読んでもらうためにはとっつきやすい会話文とモノローグを表に出して背景を少し、地の文はほぼ飛ばすという書き方が主流である。

この本は対してかなり古き良き書き方です。読んでいると思い出すのは水野良先生ですね。地の文で状況をきっちりと説明して、その中にキャラを浮き彫りにしてから初めて喋らせる、舞台装置を意識した書き方。

実はカクヨムに書いている多くの作者も書籍化する時は縦読みに合わせて大幅に地の文を増やす人が多いのですが、この本の場合、そういう意味では弄る必要がないかな。

最初から100話前後でお話が収束するようにプロットが組んであり、本の中で語りたい内容が一貫してはっきりしていて、ああ、本を読んだな、という感想を得ました。変な話ですが、カクヨムでそう思うことって、なかなかないんですよね。

スタイルのカクヨムとの適性の是非は置いといて、縦読みにしても安心して読める作品だと思います。

一応ネタバレ含まれるのでチェック入れておきます