第4話 『いっしむくいる』


 さて、ある日、少し年上になったサン・キ・ユーさんは、南島のお金持ち、チーク・サイさんに招待されました。


 タルレジャ王国は、年中かなり暖かいこともあり、割合に食糧は豊かで、飢饉は起こりにくいのですが、その年は、西暦で言うと、534年か、535年ですが、ちょっと離れた国の火山の大噴火の影響で、作物があまりできず、さすがの王国も、いささか苦労していました。


 しかし、お金でなんでも手に入り、ちょっと意地悪なチーク・サイさんは、こう言ったのです。


 出されたばかりの、蓋がしてあるスープを見ながら。


 『サン・キ・ユーさん、この、ふたを開けずに、スープを召し上がれ。シュルブプレ。』


 『むむむ。ならば、チーク・サイさん、このスープは、冷えているようなので、まずは、蓋を開けずに、入れ換えてください。』


 『ははは。わかりました。』


 で、この時期、南島に出て、チーク・サイさんに雇用されていたぼくが、呼ばれました。


 ぼくには、秘伝、『鬼がわり』、の術があります。


 これは、四次元空間を使って、中身を交換する技術です。


 四次元空間なら簡単ですが、三次元空間ではできません。


 ぼくは、さっさと、中身を暖かいスープに入れ換えました。


 『はい。できました。サン・キ・ユーさん、では、どうぞ。』


 これには、サン・キ・ユーさんも、ちょっと困りました。


 しかし、にこりとして、こう言いました。


 『先程の方に、やってもらいましょう。だめならば、チーク・サイさん、まず、やって、みせてくださいませんか。あなたが、手本を示すべきです。』


 『ははははは、いいでしょう。たしかに、食事は、中身が食べられてはじめて成り立つわけですな。さすが、サン・キ・ユーさんですなあ。』


 で、ぼくは、呼ばれませんでした。


 みんな、ふたを開けて、美味しく、頂いたのです。


 チーク・サイさんは、それからは、慈善事業に、精を出すようになりました。



 ぼくは、やっと、いっし、むくわれたのです。


 女王さまになっていた、ヘレナさまに認められ、不死化されたのです。




        🍜



      お し ま い

 

 


 

 

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『鬼のみにもなってください。』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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