守護神

文重

守護神

「ケンタ、起きなさい、朝よー」

 “夢落ち”だったらどんなにいいか。朝、目が覚めるたび突きつけられる現実に、ケンタは絶望的な気分になる。


 通学路に幾つか置かれた彫刻の中でも、ケンタは特に「守護神」が好きだった。角が生えている鳥というだけで、大層な名前の割にはあまり強そうには見えなかったが、なぜか惹かれるものがあり、いつの頃からか、像の汚れをきれいにしてから登校するのが日課になっていた。


 耐えれば耐えるほどイジメはエスカレートする。追い詰められた屋上のフェンスの上。集団でいることで熱に浮かされ、はやし立てるやつら。足がぷるぷる震える。もうこれ以上耐えられない。バランスを崩したケンタの体が宙を舞った――。


 稲妻が走り、激しい雷鳴が轟いた。落下しているはずの体がふわりと浮き、気づくとケンタは一本角の鳥の背中に乗っていた。

「誰が強そうに見えないって?」

 そう言って「守護神」はケンタのほうにくるりと首を回した。

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守護神 文重 @fumie0107

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