誘いにのると懸念

「いったいなんの用でしょうか?」


 ベンデアの目の前に立ちラギルノは真剣な顔をしている。


「その前に座りなさいよ」


「いえ、まだ勤務中ですので」


「そ、そう……まあいいわ」


 話しづらそうだ。


「ねえ、ラギルノは出世したいと思わない?」


「できるならしたい。だが、そんな旨い話あるとも思えません」


「そうね……だけどアタシなら爵位を与えられるわ」


 それを聞きラギルノはベンデアが何を言いたいのか、なんとなく理解する。


(恐らく目の前に餌をぶら下げて何かをやらせようという魂胆……探ってみるか)


 軽く笑みを浮かべるとラギルノは口を開いた。


「ただじゃないですよね」


「そうね……ある人物を抹殺して欲しいのよ」


「なるほど……それで誰を?」


 クスッと笑いベンデアはラギルノを見据える。


「それは言えないわ。但し貴方が引き受けてくれると云うのなら別だけど」


「警戒してる訳か。まあ、そうだろうな」


 暗殺する相手の予想はついていた。だが確証がない。そのためラギルノは何時になく悩んでいる。


(汚れ役か……昔も似たような立ち位置だったな。今回は、そうならないと思っていたが。やはり、こうなるのか。いや……断ればすむ。

 ……まてよ。逆か……そうだ。そうするか。その方が俺にあったやり方かもしれん。まあ恨まれるかもしれないがな。

 それに元の仕事が戻って来ただけだ。但し、それアルファだが)


 フゥーっと息を吐くとラギルノは表情を悪相へと一変した。


「面白い……引き受けてもいいが爵位だけじゃ物足りない」


 それを聞きベンデアは意外だったため余計に喜んだ。


(餌にくいついたわ。まさか、ラギルノがねぇ。でも、これで計画を遂行できるわ)


 軽く首を縦に振るとベンデアは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「勿論、爵位だけではなく……貴方の望む物をあげるわよ。但し、この国と城以外だけどね」


「それだけの価値があるってことか。フッ、やりがいがありそうだ」


「その口ぶりだと、やってくれるという事かしら?」


 そう問われラギルノは考えたフリをしたあと頷いた。


「ああ、そのつもりですよ。それで、どうすればいい?」


 その問いにベンデアは返答し説明する。


 それをラギルノは笑みを浮かべながら聞いていた。



 ▼△★△▼☆▼△



 ここは傭兵宿舎。そしてガルディスの部屋だ。


 あれからガルディスは部屋に入るなりベッドに横になる。


(恐らく誘いに乗っていたら、ドルムス様の暗殺を命じられていただろう。タダで爵位を与えてくれる訳がない。

 だが断ったことで他の誰かに……俺以外に誘うとするなら、ラギルノか。アイツなら誘いに乗るかもしれない。

 いや、そこまで落ちぶれているのか? 昔だってそうだ。只アイツは仕える国を間違えただけだ。まあ俺も違う意味で間違えたともいえるがな)


 そう思いながら天井の一点を無作為にみた。


(今日は気分がすぐれない。気晴らしに酒場にでも行くか)


 起き上がったあとベッドを降り着替える。その後バッグを持ち部屋を出て酒場へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

聖女召喚に巻き込まれて異世界に召喚されたけど、ギルドの受付嬢の仕事をみつけたので頑張りたいと思います!!【第一部・完結】【幕間・番外編】【第二部・連載】 ミケネコ ミイミ♪ @myimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画