第28話 もう体育祭は終わり、終わり…?

無事に体育祭も終わり、俺達はいつものように帰路をたどっていたのだが…


「未来はすぐ無理するんだから…自分が怪我したら元も子もないのよ?」

「う〜ん、それは分かってるんだけどさ〜」

「だけどじゃないの!全く…ほんとに心配したんだから…」

「ごめんね〜」


先程から数十分、この調子である。

まぁ確かに自分の体が1番だと説教をしたい気持ちもあるし未来の俺たちのために頑張ってくれた気持ちも分かる。


…だが、にしても長すぎやしないだろうか。


「―ほんとに分かってる?また次今回みたいなことがあったら…」

「何回その会話するんだよ…!」

「だ、だって…私は未来の事を思って…」

「だっても何もありません!もう終わったことなんだから気にしない気にしない」

「はーい…」


そんなことを言う渚だったが、その顔にはまだ不安の表情が浮かんでいた。たしかに普段から友達思いの良い奴ではあるのだが、普段よりも明らかに感情的になっているように見える。


「えへへ〜、渚怒られてやんの〜」

「未来、お前もだぞ、俺達がどれだけ心配した思ってるんだよ」

「うん、ほんとにごめんね」


そういうと未来は普段の少しふざけた表情から一転、真剣な表情へと顔を変化させてそう言った。

俺だって分かってる。未来は俺なんかと一緒じゃないって。

でも、こうして心配になってしまうのは、俺も渚に説教できるような立場では無いのかもしれないな…


「いや、先輩のその仲裁に入る感じももう4回目だからね?正直もう見飽きてきたからさっさとそのくだりやめてよ…」


横から見ていた寧々がそう口を挟んでくる。


「はっ…!俺は知らぬ知らぬの間に無限ループに入っていたのか…」

「まぁ体育祭楽しかったしきっと無意識のうちに体育祭を終わらせたくないんじゃないですか?」

「くっ…これが"体育祭の呪縛"か…」

「いや、皆が勝手に同じことしてるだけだってば、それに未来先輩もなんで止めないんですかこの2人を」

「いや〜今回に関しては少なくとも私が悪い部分もあるかなって〜」

「いや注意しましょうよ、この人たちただ心配性なだけで特に体育祭何もしてないんですから」


衝撃を受ける俺と渚。


「確かに何もしてないけどさ…」


改まって言葉にされると自分の体育祭における貢献度の低さに頭が痛くなる…


「いや、お嬢様たちのその会話ももう3回目ですけどね」


未来の執事によるその一言で、俺たちは全員衝撃を受けながらループから開放されるのだった。

非常に衝撃なのだが、俺たちは全員が全員気づかないまま同じ会話を繰り返していたらしい。


「じゃあ、これで最後にするけど、ほんとに体には気をつけるんだぞ?」

「ええ、気をつけてね」

「うん!分かった!」


良し、これで一件落着、俺たちの日常は戻ってきたらしい。

これからも出来るだけこの平和な生活が続くよう、俺は胸を押さえながらそう願うのだった。


「…この会話も2回目なんですけどね」

「「「「ええー!」」」」


前言撤回。

俺たちはまだ体育祭の呪縛から逃れられていないらしい。

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幼馴染→恋人なんて有り得ない!? つむ @tsumu116114

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