第27話 体育祭本番(3/3)

そうして、俺たちが保健室へと足を踏み入れたその時、未来はまだ眠っているようだった。

保健室の先生に様子を尋ねたところ、倒れて来たすぐは安静にしろと何回行っても聞く耳を持たず、直ぐに種目に参加すると言い張っていたのだとか。


そして先程寝たばかりとの事なので、俺たちはここで未来が目を覚ますまで待つことにした。


「それにしても、今日の未来は凄かったわね」

「ああ、一日中ずっと、普段の未来からは考えられないような活躍だった」

「確かに…普段から運動神経はある程度いいけど、ここまで張り切ってるのは初めて見たわね…何か張り切るような原因があったのかしら…」


そんなことを話しながら、どれぐらい待っただろうか。

恐らく、1、2時間程だろう。


未来が起きたらしい。

保健室の先生が様子を確認しに行ったのだが…

次に耳に入ってきたのは保健室の先生の呆れたような声だった。


「此花さん!あれほど安静にって言ったのに!動かないの!」

「いやです!私はみんなのために残りの種目を走りきらないと行けないので!」

「だめです、大体あなたの体はまだ治っていないんだから、無理するとまた倒れちゃうわよ」

「でも、そしたらうちの組のランナーが…」

「そんなの、此花さんがいなくてもどうにかなりますよ」


保健室の先生はそういった後に、未来の様子を見て、こうつけ加えた。


「まぁ、あなたがいた方が勝率が上がるのは確実なんでしょうけどね、あなたはもう充分頑張ったわ、休みなさい」

「そうだぞ、未来は十分すぎるぐらい頑張ったんだから気にするな」

「え!?翔と渚?体育祭はどうなったの?」

「今はもう終わりの会の校長の言葉だよ」

「え!?私、寝ちゃってた?」

「あぁ、だいぶぐっすりな」


未来は少しだけ悩んだような素振りを見せた後…


「結果はどうだった?どっちが勝ったの?」

「ちょっと言いにくいんだがな…」


最終的な結果としてはうちの学年だけで見るなら僅差で赤組が勝利していたものの、全学年を合計したスコアとしては少しだけ白組に負けてしまっていた。

もし、あのリレーで未来が1位を取っていたら、もしかしたら逆転できたのではないかと思ってしまう程に。


「うちの学年は赤組が勝ったわよ、全体で見ると少しだけ白組が勝ったみたいだけれど…」

「そっか…」


多少、予想はできていたのだろう。

未来にそこまで驚いた様子はなかった。


「まぁ、うちの学年は勝ったんだからな、未来のおかげだよ」


これは嘘では無い。

確実に、未来がいなければうちの学年も白組が勝利し、最終的は結果も大差になっていただろう。


ちなみに、中等部と高等部を合わせて1番結果に差がついたのは寧々の所属する学年なのだとか。


「何はともあれ、未来が目を覚ましてほんとに良かったな」

「ええ、まずはそれを喜びましょう」

「うん…!」


なんとか、未来も気を取り直しつつあるようだ。

正直、未来が倒れた時は思わず自分のことでも無いのに自分の事のように心配してしまった。

…あの時のことがフラッシュバックしているのだろうか。

おっと、俺は一体なんで独り言言ってるんだろうな…


赤組:1497ポイント

白組:1542ポイント

という結果で、今回の体育祭は幕を下ろすのだった。

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