37日目:寝返り

 子供の成長は早い。

 本当になんだってこんなにも、と思うほど。

 ああ、世の中ってなんて無情なんでしょう?


 さて、そんな親の悲嘆は置いておいて、我らが「史たん」も、成長の真っ最中。

 ついこの間のGWまではただただ、両手両足をパタパタ動かすだけの可愛いサンフラワー(太陽の光などを浴びてふらふら動く、あの謎のおもちゃ)だったのに、気が付けば横向きで何かを考えていることが多くなってきている。

 これも偏にGWあたりからの「ばばちゃん」の英才教育のたまものだろうか?

 最近、遊びに来るたびに「史たん」をゴロゴロと転がす「ばばちゃん」。

 仰向けから、横に、横からうつ伏せにと。

 そして、それに呼応するように、「史たん」も横向きができるようになってきている。

 今では普通に自分の力だけで横向き、いや、もうこれは頭さえ持ち上がれば寝返りになるというところまで、身体を捻ることができているんだから、凄いものだ。

 が、そこまで。

 「史たん」の様子を見るに、ここからはまだまだ時間がかかりそうなのだ。


 さて、ここで問題です。

 人間の頭で一番重い部位ってどこでしょうか?

 そう、子供の成長は早い。

 本当になんだってこんなにも、と思うほど。

 ああ、世の中ってなんて無情なんでしょう?


 さて、そんな親の悲嘆は置いておいて、我らが「史たん」も、成長の真っ最中。

 ついこの間のGWまではただただ、両手両足をパタパタ動かすだけの可愛いサンフラワー(太陽の光などを浴びてふらふら動く、あの謎のおもちゃ)だったのに、気が付けば横向きで何かを考えていることが多くなってきている。

 これも偏にGWあたりからの「ばばちゃん」の英才教育のたまものだろうか?

 最近、遊びに来るたびに「史たん」をゴロゴロと転がす「ばばちゃん」。

 仰向けから、横に、横からうつ伏せにと。

 そして、それに呼応するように、「史たん」も横向きができるようになってきている。

 今では普通に自分の力だけで横向き、いや、もうこれは頭さえ持ち上がれば寝返りになるというところまで、身体を捻ることができているんだから、凄いものだ。

 が、そこまで。

 「史たん」の様子を見るに、ここからはまだまだ時間がかかりそうなのだ。


 さて、ここで問題です。

 人間の頭で一番重い部位ってどこでしょうか?

 そう、胴体!

 じゃあ、次は?

 そうです!頭です。

 まぁ、太ももが太い人ならどっこいどっこいかもしれないけど。

 それでも胴体が本体とするなら、付属品で一番重いのは頭。

 そう言えるくらいには、頭って重いんです。


 そして、成人の皆さんは忘れてしまっているでしょうが、仰向けからうつ伏せになるときって、頭がすっごく邪魔だったりする。

 身体は回る気満々なのに、頭が付いてこないってね?

 よくわかんないって人は、頭を横向き固定のまま、うつ伏せになろうとしてみるといい。

 肩が回らず、寝返ることができないから。

 

 そんな訳で「史たん」に話は戻る。

 以前書いたが、「史たん」という生き物は頭の大きさだけは人一倍、胴体ちびっこという大分アンバランスな生き物なのだなのだ。

 どのくらいアンバランスかといえば、生まれる直前の検診で先生から、


 『大丈夫そうですね、頭の大きさから計算すると、もう体重2,800gは超えてますよ。安心ですね。』


 なんて言われていたにもかかわらず、いざ産まれてみると2,400gもないちびっ子だったというくらい、随分な頭でっかちであった。

 まぁ、産前の胎児の体重測定は超音波検診による頭の大きさから算出するものらしいのから、仕方がないっちゃ仕方がないのだが。。。

 そんなエピソード持ちの「史たん」であるから、成長したって頭が大きいのは変わらない。

 よって、軽快な体の動きに対して、頭だけは根が生えたように動かないということになる。

 実際、今だってゴロゴロしている「史たん」を眺めているが、頭以外はほぼうつ伏せになれているのに頭だけがついてきていない。

 正直見ていてちょっと心配になるレベルで首がねじれている(いや、これ、成人してからやろうと思ったら、多分首の筋を違えるレベルだ)。

 それでも、本人がやりたくてやっているのだからきっと大丈夫なのであろう。

 でも、見ている側は心配は心配なので、強制的に戻してやるんだが。。。

 当然の如くまた、ひっくり返ろうとする。

 本当にまぁ、心配損なやつである。

 しかも、何故か右側にしか転がろうとしない。

 不思議な奴である。


 と、このまま見ていても面白いのだが、どうやらうつ伏せにしてやってもいいらしい。

 「おかたん」曰く、


 『最近は、頑張って転がしてあげているんだよっ!(ふんすっ)』

 

 とのこと。

 正直頑張っているのは「史たん」だとは思うのだが。


 まぁ、そこまでいうなら、ということで、イッツチャレンジ!

 せっかく戻したのに、また横になったタイミングに合わせて、頭を持ち上げてやる。

 と?

 

『(コロン)』


 奇麗に転がった。


『おおっ!』


 とボクも思わず声が出る。

 そして、ひっくり返った「史たん」は両肘をつき、懸命にうつ伏せを保持する。

 その様はもう陸に上がったアザラシのようで、なかなかに愛らしい。

 ただ、本人は大分必死なようで、普段から大きなお目目を、今はもうこれでもかと見開き、うつ伏せポーズ保持している。

 そして大きな頭は風に揺れる稲穂のように、ウィンウィンと前後動を繰り返している。

 普段あまり声をあげない「史たん」であるが、ウィンウィンにあわせて


『ぅん、ぅん』


 とうなり声まで発している。

 へぇ、おもろいなぁと見続けること数秒だろうか?

 ウィンウィンの数にして数度(多分十回はいかない)。

 とうとう力尽きたのか、その鈍重な頭が床につく。


 まぁ、床といっても下には座布団を引いているから、床にゴンと頭をぶつけることはない。

 ぶつけることはないんだが、、、顔が完全に座布団に埋まっている。

 と思っていると、「史たん」の全身が小刻みに震え始める。

 なんか、芋虫が蛹を経ないで蝶になろうとしているときみたいで、ちょっと可愛い。

 なんて感想をいただきつつ、


『あ、やべ、ごめん「史たん」』


 慌てて、仰向けに戻してやる。

 本人は真っ赤になったかをでこちらを睨んで(多分錯覚)いるが、まぁ可愛いので良しとしよう。


 と、そんな遊びを繰り返すこと数日。


『ただいま~』

 

 会社から帰ってきたボクの下に、ちょっと興奮気味の「おかたん」が出迎えにくる。

 出迎えてくれることなぞ、そう多くはないというのに、この日はボクの挨拶に、


『おかえり!』


 がかぶるほどの速度で返ってきた。

 どうやら何か報告したいことがあるらしい。

 そして、案の定


『聞いて、聞いて、「おとたん」』


 と続く。

 これは「おかたん」的に面白い話を報告するときの前触れなのだが、正直「おとたん」のツボを押さえていないことがままある。

 よく言われることであるが、男は落ちが、女は過程が話の要旨になるらしい。

 「おかたん」の外し方も、まさにそんな感じで、ついつい


『落ちは?』


 と聞いてしまうと、


『落ちなんてありません~』


 と、ぶすくれられるわけだ。

 もう少し学習してほしいものである(え?ボク?悪いのは?)。


 そんなことを考えているボクをよそに、「おかたん」小話は進む。

 が、そこで衝撃の一言。


『あのね、なんと「史たん」寝返りができるようになりました!』


 おお、久しぶりにツボを押さえる話題。

 「おかたん」だってやればできるじゃないか!

 偉い偉い。

 なんて思わなくもなかったが、「おかたん」に抱っこされ、若干どや顔(これも多分勘違いだろう)、をした「史たん」を見たら、もう落ちとかどうでもよくなっていた。

 というか、顔的には


『こいつら何騒いでるの?』


 の方があっているような気がしたりしなかったり?

 まぁ、そんなことはさておき、


『マジか!見せて見せて!』


 と、ボクも勢い込んでリビングに駈け込む。

 遅れて「おかたん」も


『なんか急にできるようになったんだよね、くるんって』


 と、興奮気味にぶつぶつ言いながら続いてくる。

 そして早速、「史たん」を座布団の上において、、、

 いざ尋常に勝負!

パタパタ

パタパタ


『おい、「史たん」よ?』


 結果、その夜「史たん」が寝返ることはなかった。

 置かれた当初はバタバタと機嫌よさそうに動いていたのだが、


『来るか~?来るか~?』


 と待つこと10分。

 徐々に動きの幅が狭くなり、、、顔が赤くなっていく。

 と、


『あんぎゃーあんぎゃー(お腹すいた~飯食わせろ~)』


 この期待を裏切られた時の失望感足るや否や。

 仕事の疲れも相まって、「おとたん」しょんぼり。

 「史たん」ギャン泣き。

 「おかたん」ワタワタ(おい、そこはなんでワタワタしてんだよ!)。

 これぞ三竦み。

 そう思わせるほどの不思議な図式がここに完成したのであった。


 そして、ボクは仕方なく台所へ。


『はぁ、また「おかたん」に騙された~しょぼん。』


 そんな心の声が漏れてしまったのを聞き逃す「おかたん」ではなく、


『ホントだもん、ホントにトトロ居たんだもん!』


 と会心のギャグで挽回を図る、、、訳もない。

 出てきた言葉は、


『あれ~おかしいなぁ』


 の一言。

 結局、その日は嘘つき「おかたん」のレッテルを張られたまま夜は更けていったのであった。



『え?ど、どした「史た、、っあっつ!』


 翌日、朝ご飯の味噌汁を取りに行って帰ってきたら、芋虫になって


『ぅん、うん』


 うなっている「史たん」がいた。

 突然のことに、味噌汁に親指を突っ込んでしまったのは言うまでもない。

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