29日目: 水棲生物?

 ドタン!


 バタン!


 ガサゴソ、ビリビリ。


 …喧嘩の音


 ではない。

 お片づけの音である。

 改めて、部屋を見回して惨状に気づいた本日、思い立ったが吉日と、うずたかく積まれている段ボールの整理に取り掛かっているのである。

 まぁ、それでもかなりの量である。中身もわからない状態だから、開けては閉める手間もある。とはいえ、「ボク」の快適な睡眠環境を作るには(一番は「史たん」アラームをどうにか無視する方法を考え着くことだとは思うのだが、それはそれとして)仕方がないことだと割り切って作業に励む。

 実際、段ボール類はうず高く積まれているものの、押し入れはまだ未使用状態(ぬいぐるみとかは突っ込んだが)のため、開梱したあとの収納スペースは確保してある。

 そういう訳で、絶賛仕分け&カラーボックス等の収納家具を掘り出す作業に没頭しているところである。

 え?「史たん」?いるよ?座布団の上に。

今日も楽しく手足パタパタ遊びをしているよ?

 え?「おかたん」?いるよ?ソファの上に。

 今日も楽しくスマホでネットニュース見ているよ?

 って、なんだこれ?

 まぁ、とはいえ、これはいつもの風景に変わりはなく、、、

それに「史たん」が急にひっくり返る(うつ伏せの練習はさせられたが、まだまだうつ伏せは危ない年齢である。首も上げてられないから、座布団に突っ伏して窒息・・・なんてことがあるかもしれないしね)可能性もある訳だから、だれか一人は見ていなきゃというのはわからなくもない。

 という訳で、一人整理整頓に勤しむ「ボク」。もう、旦那の鏡といっても過言ではないだろう。

 そんなこんなで整理を進めていると、とある段ボールから懐かしいものが。思わず、

 『 おっ?』

 と、変な声が漏れてしまう。それを聞きつけた「おかたん」が

 『 何々?どしたの?』

 とやってくる。こういう時だけは早いんだよなぁ。

 『 ん?ああ、いや、これからほら、懐かしいもの出てきてね?』

 と、段ボールから出して見せるは、「〇ノ国」と書かれたかなり大きめのパッケージのゲームソフト。

 これは「ボク」と「おかたん」の馴れ初めにもなったとある映画会社が製作協力をしているゲームである。ゲーム内容は、、、正直あんまり覚えていない。というか、「おかたん」と二人でやろうね!っていいながら買ったものの、「ボク」は中盤まで、「おかたん」に至っては数回のプレイだけで、あとは埃を被ってしまっているのだから、覚えていないのも当然と言えば当然か。

 ゲーム性自体は「ボク」の好みにかなり近い形だったのだが、如何せん、歳の所為か、多忙の所為か、ここ数年RPGというものを続けられなくなってきている自分がいる。

 そんな訳で、積みゲーと化してしまっていたものだが、久しぶりに見るとうずうずとやりたく、、、と思いながら、手に取り、「おかたん」にも見えるように持ち上げる。

 『 ああっ懐かしいねぇ!二人でやったよね!』

 「おかたん」の中ではどうやら二人でプレイしたことになっているらしい。

 『 いや、やったのは「ボク」だけで、君は数回しかプレイしてないでしょ?』

 『 え?そうだっけ?』

 『 そうだよ。その証拠に内容覚えてないでしょ?』

 『 あれ~そうだったかなぁ?なんかかわいいキャラクターがいた気がするんだけどなぁ?』

 とかなんとか。まぁ、覚えてない時点で推して知るべしだよね。なんて思っていると、

 『 でもさ、「史たん」はさ、ジ〇リ派かな?ディ〇ニー派かな?』

 と、唐突に言い出す「おかたん」。

 そんな派閥ありましたっけ?と思いつつ、

 『 いや、ディ〇ニーはないでしょ?あんな白昼悪夢みたいな空間の何がいいのか全く分からんもん。』

 と答える「ボク」。

 人混み嫌い、待つの嫌い、仮装何てもってのほかの「ボク」にしたら、あんな所に行く人の気が知れない。どう考えても楽しさよりも疲労感の勝る地獄のような空間である。

 それを承知のはずの「おかたん」は、

 『 えーいいじゃん、ディ〇ニー。でもさ、「史たん」がもう少し大きくなったら、絶対行くよね?』

  と、恐ろしいことを言い出す。

 『 いや、行かないよ?何があっても。あ、それなら「ボク」は君らと東〇駅で別れて、〇鷹に行くから、二人で楽しんでおいでよ!』

 『 えーこんなか弱い「おかたん」と「史たん」二人っきりにしたら何があるかわからないよ~一緒に行かないと危ないよ~』

 『 いや、あそこに行って何かあるならもう自己責任でしょ?危険が危ないなら、家から出なきゃいいんだよ!お家はいいよ~ご飯もある、冷たい飲み物もある、娯楽もある。その上、歩く必要もなければ、疲れたら即寝れるもん。こんな素晴らしい空間ないよ?』

 『 出た。引きこもり発言。ホントにもう、そういうとこだよ?』

 『 どういうとこさ?いいのよ、人間社会怖いんだから。』

 『 …引きこもりで、社会不適合者?』

 『 あん??そういう君も社会不適合者だろ~この前もママ友とお茶会に失敗したって、、、』

 『 あーそういうこと言うんだ?そういうこと言うともう知らないんだからね~「史たん」のおむつ、寝てる「おとたん」の顔に投げつけるんだから!』

 『 いや、それはもう事件よ?最近、大分臭くなり始めてるんだから。それはもう暴力といっても過言ではないよ?』

 『 言葉の暴力だって駄目なんですぅ。』

 とまぁ、そんなこんなでキャッキャウフフ(?)しつつ、片付けは進むのであった。

 あ、一応、言っておくけど、ちゃぁんと、寝床の確保までは出来たからね!


 そして夜。

 今日も今日とてお風呂タイムである。

 ただまぁ、一日たったから慣れたようなもので、「史たん」を膝の上にのっけて、頭をわしゃわしゃ、体をわしゃわしゃ。

 これなら片手を塞がれることもなく、昨日の様に「史たん」に翻弄されることもない。当の「史たん」も多少暴れはするものの、機能に比べれば抜群の安定感で手足をパタパタさせている。どうやら、二日目にして正解にたどり着いてしまったようだ。

 そして、シャワーで泡を流して、共に湯舟へ。

 『 さぁ、じゃあ、「史たん」お風呂だよ~』

 そう言いながら、縦抱きにして、足から湯舟に「史たん」と共に沈んでいく。

 昨日は体が浸かった瞬間、硬直し、これでもかというくらい目を見開いてこっちを見た「史たん」だったが、今日はなんということもなさそうにしている。

これは、、、体から離しても大丈夫なんじゃなかろうか?

 ちょっとした悪戯心から、「史たん」の首の付け根だけは押さえて、体を話してみる。。。

 

 と、


 浮いた。

 当然だろうと思う方もいるかもしれんが、実際に浮いた姿を見ると思いのほか面白かったりする。

 そんな訳で、もう一度「史たん」を抱きなおし、外に待機しているであろう「おかたん」に向け、声を掛ける。

 『 ねぇねぇ「おかたん」』

 『 なに~?もう上がるの?』

 『 いや、違うんだけど、ちょっと見て~』

 『 ん~?』

 そういって、浴室のドアを開ける「おかたん」。

 『 ほら、』

 そういいながら、「史たん」を体から離してみる「ボク」

 『 うちゅ~ゆ~え~』

 『 っ!!!何やってんの!』

 『 え?』

 『 え?じゃないよ!危ないでしょ!』

 そういいながら、鬼の形相で「史たん」を抱えて、お風呂場を後にする「おかたん」。

 え?なんか悪いことした?顔が水面から出ていて、かつお腹がポッコリお湯から出ている姿可愛かったのに、、、

 などと思いながら、何故怒られたのかもわからぬまま、自分の浴事を済ませる「ボク」だった。

 まぁ、当然この後めっちゃ怒られることになるのだが。

 

 因みに、この後もめげすに宇宙遊泳ごっこは続けられ、5回目くらいからは「おかたん」のお許しも出ることになった。

 というか、「史たん」が大分慣れたようで、後頭部の支えだけで器用に浮いて、ここでも手足パタパタ遊びができるまでに進化したからなのだが。

 しかし、この子は本当に水を怖がらない。

 顔に水がかかろうが、ほとんど意に介した感じがないし、お風呂で泣いたところを見たことがない。果たしてこれは、生物の生存本能として、大丈夫なんだろうか?と疑問に思うほどである。

 それでも、少し親バカをこじらせている「ボク」からすれば、

 『 将来は水泳選手かな?』

 等と思ってしまう。もしかして、この子は水棲生物なのかな?

 これで実際本当に水泳を習い始めたりするのだから、本当にすごいのではあるが、それはまた別のお話。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ほむひです。

 今週先週と更新が大分滞ってしまっていて本当に申し訳ありません。

 単純に書く時間がなくて、、、という言い訳にはなりますが、生きてはいます。

 これからまた頻度を戻しつつ、頑張っていこうと思いますので、引き続きお付き合いいただけるとありがたく思います。

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