21日目:合宿二日目は小さな後悔の連続
合宿2日目の朝である。
昨日は良く(?)眠れ、朝の5時に起きて温泉に入り、まったりした朝を迎えられた。
朝の6時に「おかたん」から来たメールには、
『 おはよー昨日も「史たん」は二時間の子で、ご飯もげっぷも完璧でした!』
と書かれていたので、あの子らはどこでも平常運転らしい。元気が一番。凄いね、人の体内時計は。
その後、朝食を食べ終わってもまだ7時半。
講義は9時からだから、なんとまだ一時間以上の時間がある。
二度寝ができるなんて、なんて素晴らしい朝だろう?こんなゆったりした朝はついぞ経験したことがない。素晴らしいね、研修!
なんて思っていたのは朝だけ。座学続きの研修はやはり地獄で、昼前には、、、
『 こ、腰が・・・』
しか言えなくなってしまったのだがね。ホント、「ボク」はいつからおじいちゃんになったんだったか?
さて、この合宿、実は班編成というものがあり、近くの人たちと強制的に組まれた班で昼食を食べたり、共同課題に取り組んだりするシステムらしい。
ぼっちな「ボク」も、その班なるものに組み込まれている訳で、昼食は班員の子たちとわいわいとなるのだが、、、
気まずい。
あのね、おじさんさ、若い子は苦手なんだよね。
しかも男女比3:3の班編成。うーん、厳しい。
幸い「ボク」と同じくらいの年代の人が班にはいたので、その人とポツリポツリと会話をすることに、、、
どうやらあちらもお子さんがいるらしく話題は自然と子供の事に。。。有益な情報でも聞けるかな~と思い話していると、、、そこに同じグループの女性が混ざってくる。女性って、子供の、特に小さい子の話に食いつくよねぇと思いつつ「ボク」は静かにフェードアウト。何故って?苦手だから?
そうして、「ボク」が影に溶け込み始めている傍らで、
『 え~○○さん、お子さんいらっしゃるんですかぁ?』
『 ん?んーまぁね、娘が二人ほどいますよ?』
『 何歳なんですか?』
『 上の子がX歳で、下の子がもうすぐY歳になりますね。』
『 あのぉ、もしよかったらなんですけど、お子さんのお写真って見せて貰えたりします?』
『 え?あーまぁ、大丈夫ですけど、最近のは、、、あんまりないなぁ。ちょっと前の、半年くらい前の奴ならありましたよ?ほら、こんな感じです。』
などと、楽しそうにお話しは続いている。
結構簡単に見せるもんなんだなぁ、などと先輩(多分年齢的には「ボク」の方が先輩だが、人生の、となるとやはりお子さんの年齢的にあちらであろう)の対応を横目に見る。横目ついでに、お子さんの写真もちらっと覗き見させて頂く。
え?正面から見せてって言えばいいじゃんって?いや無理でしょ?そういう雰囲気じゃないし、ここでそんなん言えたら、この歳まで社会不適合者やってないっての!
そんなこんなで覗き見させて頂いた写メには、、、幼児と乳児の二人づれの女の子が写っていた。なかなかに可愛い。それを見た女の子たちも、
『 わー可愛いですねぇ。ちっちゃいこのほっぺたなんて、ふくふくで、すっごい可愛い!』
などときゃっきゃうふふしている。
確かに可愛い。それは認めよう。二人の女の子らしき幼児と乳児の組み合わせはなかなかに見るものの心を和ませる、それは間違いないだろう。
だ、が。だが、である。
可愛いと言われたら、家にだっているのである。子ザルが。そう子ザルではあるが。
説明するまでもないと思うが、ここで「ボク」の対抗心という、至極無駄な感情に、静かに、それはもう静かに火が灯ってしまったのである。メラメラと燃えるその無駄な感情に突き動かされ、「ボク」もスマホの写真メモリをあさり始める。
というか、言っちゃぁなんだが、家の子ザル、もとい「史たん」は、そんじょそこらの子ザルと比較してもかなり可愛い部類に入ると思う。親バカ抜きで。
というのも、まだ半年に満たないこのくらいの時期は、黄疸が残っていたり、代謝の所為ででき物ができてきたりと、ふくふくモフモフしたthe赤ちゃん、という感じの子は少ない。だから、可愛い!になるまではもう少し時間がかかったりするものなのである。
だが、うちの子ザルは違う!
うちの子ザルはこの月齢にして、お肌すべすべ、肉付きふっくら!the赤ちゃんの可愛さをすでに体現しているのである。あんなによわよわとしていた体も、全体的に丸みを帯び、未だ一切こちらを見てくれない目も、本気で開けば真ん丸で、その中にある高級黒真珠のような大きな瞳もチャームポイントと言って差し支えない。最早パーフェクト赤ちゃんである(「おかたん」に言わせると『だって、丸だよ?丸!この「史たん」の丸さを見てよ!丸は可愛いから丸なんだよ?』ということらしい。が、これはちょっとなんのこっちゃかわからん)。
そんな子のお披露目とあれば、写真は厳選するしかない。いや、いっそ「おかたん」二言って、今から最新の写真を取り寄せようか?等と考えていると。。。
あれ?話題が別の話題になっている?
「ボク」が思考の海に没し、一心にスマホを操作していた所為か、気が付くと子供の話題は終わり、みんなで午後の講義やらなんやらの話になっている。
おかしいな?話しかけられた記憶がないのだが?
まさか「ボク」だけ、別の世界に飛ばされてしまっていたのか?と思うほど、子供の【こ】の字も話題には上がらなくなってしまっている。
・・・いいもん、もう見せてやらないもん!可愛い「史たん」を見れなくって、後悔したって遅いんだからな。「ボク」をハブったことを悔やむがいい!ベーだ。
などと、心の中で毒づきつつ、昼休みは穏やかに過ぎていくのだった。
え?ああ、もちろんこの間「ボク」は一言も発してませんよ?多分、周りからは子供の話になったら、急にスマホ見始めたから、振っちゃいけない話題だったのかな?とでも思われていたんじゃないかな?もしくは、完全なるアウトオブ眼中か。
内心は子供自慢をしたくてしたくて仕方がなかったというのに。
まぁ、この扱いは「ボク」がそう誘導したのだから、正しいとはいえるのだけど、、、でもさ、もうちょっとうまい話の持っていき方さえしていれば、子供の育て方とかの耳寄り情報を聞けたかもしれなかったなぁとは後悔した「ボク」でした。次は、、、って、多分次は話題すら振れないけどね。
そんなこんなで公開の昼食が終わり、午後の講義。
眠気と戦うだけの半日を終え、何とか今日も終わりが見えた。
そんなとき、講義終わりに幹事から、
『 本日も懇親会を企画します。ただし、参加は自由で~す。』
のアナウンス。
あれ?昨日は強制だったんだ?なら、なんで「ボク」は開会に居なかったんだろう?などと一抹の疑問を感じつつも、講義室を後にする。
まぁ、有志、ということならば、当然、行きたくない。
という訳で、ちゃっちゃとご飯を食べて温泉へ。
今日も疲れたな~と、風呂上がりの爽快感を伴って、部屋に戻ると、同室の人から声をかけられる。
『 あのぉ、「おとたん」さんは、この後の飲み会どうします?』
と。
前述の通り、「ボク」はいきたくない。いっても、手持ちぶたさん(ぶーぶー)になることは目に見えているから。だから、普通に断る言葉が出てくる、、、かと言えばそうでもない。既にお気づきの方がいるかもしれないが、実は「ボク」結構かまってちゃんなのだ。人と絡みたくないくせに、絡まれると満更でもないという、凄い面倒臭い奴。それが、「ボク」。なもので、折角声を掛けて頂いたのであれば、、、
『 みなさんどうするんです?』
と聞いてしまう。
『 開始時間はオーバーしてますが、折角なんで顔だけは出そうかということになってまして、、、途中入りするなら、人数いたほうが気が楽かなと。』
言われてしまえば、
『 ・・・で、あれば、行きましょうか。』
となってしまう訳である。当然、外面上はやる気満々に。
そして、着いた会場。
有志で、しかも今は途中ということもあり、昨日以上にグループができている。
一緒に来たはずの同室の方々も、
『 じゃぁ、ちょっと班のメンバーに挨拶してきますね。』
やら、
『 ちょっと気になった子いるんで話してきますね。』
等と、早々にバラバラに散っていってしまう。
結果、「ボク」はまた、会場の隅で独りちびちびお酒を飲みながら寂しい思いをすることに、、、いや、部屋を出た時から知ってたよ?こうなるなんてことはね。
それでも頑張って、面識のある人を見つけてはちょいちょい時間を潰すのだが、そんな付け焼刃続くわけがない。
結局、定位置の部屋の隅に戻ってはちびちび。奮起して、突撃しては、間が持たず、また戻ってちびちびの繰り返し。
都合、3回ほど計40分を過ごしたくらいだろうか?さすがに、耐えかねてトイレのふりをして(ふりって、誰に対してのだよ!、という声はお静かに願いたい)、会場の外へ出る。
トイレの中で、
『 あ~帰りたい。いや、もう帰るか。』
何て、独り言ちた後、会場へ続く廊下へと出る。
このタイミングでいつもある「おかたん」コールは今日は望めない。
何せ、飲み会が始まるちょっと前に、
『 これから史たんを寝かせるよ~今日は親戚周りで大変だったんだよ。ちゃんと愚痴を聞いてね?』
というLI〇Eが入っていたのだから。
その後、音信不通なところを見るに、多分寝てしまったのだろう。
「史たん」の魔力は強い。寝かせに行った「おかたん」は10回中7~8回は帰ってこず、そのまま「史たん」と共に寝てしまう。
しかし、子供の体温ってどうしてこうも眠りに誘ってくるんだろうか?まさに魔力である。
そんな訳で、仕方がなく外へ散歩に出ることにする。
会場?もう戻らんよ?いるだけで、精神力をガンガン削られるなんて、どんな地獄だよ?そこに自ら飛び込んでいくなんて、ホント数十分前の自分はとち狂っていたわ。
等と考えながら、歩いて十分ほどのところにあるコンビニにへ。
4月とはいえ、東北の夜はかなり寒い。
着の身着のまま出てきたせいか、少し歩くと肌寒さに歩を止めてしまう。一度戻ろうかと思い、振り返ったその時、不意に目に入ってきたのは満天の星空だった。寒さの所為か、透き通った夜空は星明りを遮ることなく、、、
『 あー関東にいるときはこんな風に、ゆっくり星空を見上げることもなかったなぁ。忙しすぎて、立ち止ってみようなんて思いもしなかった。それにきっと、見上げても、街灯に邪魔されてこんなに見事な星空は拝めなかっただろうしなぁ・・・』
と、「ボク」の足を止めるには十分に過ぎた。
その後、暫し、ただ夜空を眺めていたのだが、不意に寒さを覚え、足早にコンビニへ。戻ってから、冷え切った体を温泉で癒しつつ、星空の余韻に酔いしれるのだった。
そうそう、温泉から部屋への帰りの途中、話した覚えのない人から
『 「おとたん」さん、これからカラオケ行くんですけどどうですか?』
とすれ違いざまに言われ、つい
『 いや~歌苦手なので』
と答えてしまったが、行ってみてもよかったなぁと、ここでも若干後悔したのは秘密の話(というか、話した覚えのない人っていうが、あちらは認識しているわけで、、、「ボク」って本当に人の顔も名前も覚えられないんだな、ということに我ながら改めてびっくりした(笑))。
後悔だらけの合宿二日目でした。
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