第34話 人気者と自覚

「なぜですか?部屋の持ち主が言ってるのに」

「明日はあの日だろ」

 時折違和感を覚えていた。自分自身その違和感がなんなのか分からない。

 自分がいって意味すら分からない。

「あの日ってなんの日ですか?」

「それは…」

 皆目見当もつかない。明日がなんの日なのか。明日は5月の……。

 違う……分からない…明日が何日なのかどころか何月なのかすら分からない。

「翔野さん落ち着いてください凄い汗ですよ?」

 そう言って岩尾は俺の頬に手を置き下を向く俺の顔を持ち上げる。

 その手はとても冷たく石のように硬かった。

「あぁ、分かったやっと分かった 。今まで感じた違和感や疑問。なぜ、お前のお願いを断ったのか」

 自覚をした途端1粒の涙が頬を伝う。

「何が分かったんですか?」

「夢なんだろこれ、俺が見ている俺の欲望を叶えるためだけの都合のいい夢」

 次第に雪芽も目に涙を貯めていく。

「やっと気がついたんですか。それなら、早く目を覚ましてください」

「いやだ」

「長く夢の中にいると戻れなくなりますよ」

「それでもいい」

 雪芽の居ない世界をこれから先生きていける自信も無ければ生きていこうとも思えない。

「良くないですよ」

「なんで、なんで、自殺したんだ…」

「それは…ごめんなさい」

 鮮明に思い出せる。2月15日、その日いつもなら先に学校に着いている雪芽が俺が学校に着いた時に居なかった。

 その時は、体調が悪く家で休んでいるのだと思っていた。

 しかし、学校が終わっても朝に送ったメッセージに返信はおろか既読すらつかなかった。

 嫌な予感がした俺は、マンションに着くなり自分の部屋ではなく雪芽の部屋に向かった。

 インターフォンを何度押しても反応はなかった。

 だから、預かっていた鍵を使って部屋に入った。部屋の中を探すと雪芽は寝室にいた。今、思えば最初に見た瞬間分かっていたのだと思う、だけど、それを認めたくなかったんだ。

 目の前でベットに横になっている雪芽が少しも動いてないことを。

 呼びかけながらゆっくりと近づき雪芽のそっと触れると雪芽の体は氷のように冷たく鉄のように硬かった。

 その事実だけで底をつきかけていた俺の冷静さが無くなるのには十分だった。

 そこからは、はっきりとは覚えていない。

 ベットの横で何も出来ずにいると心配してやってきた飛羅廼と桂木がやって来て2人とも誰かに電話をしてて、その後大勢の人が来て雪芽を連れていこうとしたからついて行こうとしたら止められて、俺の部屋に戻されてた。

 その後の記憶は全くない恐らくそのまま寝てこの夢に来てしまったのだろう。

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俺たちが普通の恋愛なんて無理だと思った @shnknt

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