第21話 おっさん、帝国へ行く?ー2
◇数日後
「クーデター!!??」
俺はアナザーで信一郎に呼び出されたと思ったら、なんとあのアースガルズ帝国でクーデターが起きたと言う。
第ニ王子、ロード派と第一王子+現皇帝の内乱に突入したとのこと。
「あぁ、あの言葉はそういう意味だったのだろう。だから今は帝国には近づけない。交渉などの段階ではない」
「それもそうだな」
どちらが勝つのか分からないが、俺にはあの獅子のような青年が負けるイメージが全く湧かなかった。
「しばらくは、帝国には近づけない。そこでだ、信二!!」
信一郎は俺の両肩を強く持ち俺の目を見つめる。
「頼みがある!」
「すごく嫌な予感がするんだが……」
「ドワーフの国へ行って欲しい」
「へぇ? いるの? ドワーフ」
「あぁ、最近になってエルフの森の向こう側にも基地局を建てることに成功した。我々の索敵範囲は向上した。するとどうだ、帝国の南、海を少し渡った先の大陸にいるではないか。ドワーフと呼ばれる種族が」
「まじかよ」
ドワーフ、俺が想像するのは髭を蓄えた炭鉱夫の種族。
体は小さかったり、普通に大きかったり、あとは酒が好きで、鍛冶が好き。
結構フレンドリーなイメージがあるのだが。
「ということで頼むぞ、アナザー外交大使」
「いつから俺はそんな役職が付いた」
「どうだ、やってくれないか」
「えぇぇ……」
正直俺の目的は達成したしなーという思いが強いのだが。
あとは田舎に籠ってスローライフ、いや異世界スローライフでもいいな。
ガシッ!
「お前しかいないんだ!」
うっ。俺は一瞬分かったといいそうになった。
おっさんは、頼られると弱いのだ。
「で、でも……」
「お前のような優れた人材が我が国には必要だ。頼む!」
「任せ――い、いや。そう簡単に俺は屈しないぞ」
ふぅ、危ない。
おっさんは、褒められると弱いし、俺は頼まれるとつい任せろと言ってしまうのだ。
だがこの程度で俺の意思は揺らがない!
「あ、ちなみにこれは防衛大臣からの外交大使認定証。総理のハンコも押してあるから」
「……謹んでお受けいたします」
あとおっさんは普通に権力に弱い。
……
それから数日後。
俺は今海の上を軍用ヘリで飛んでおります。
『すごい、シンジ! シンジの国の龍? お名前は?』
「ヘリコプターかな」
横でシルフィが飛び跳ねているが、お前飛べるんだからそんなに楽しいかね。
『ご一緒させていただきありがとうございます。シンジさん』
「ソフィアも物好きだな……こんなおっさんと旅がしたいなんて」
なんと俺が助けた10歳ほどの超美少女エルフ、ソフィアは俺と一緒に旅がしたいと言い出した。
信一郎もそれはいい考えだと簡単に頷くのでこんな結果。
異種族交流は大切になと言われたらまぁ仕方ないかとも思う。
◇少し時は戻って、エルフの森。
「ソフィアよ。信二の元へ行きたいとは本当か」
「はい、お父さん。私は世界について何も知りませんでした。シンジさんの国、日本についてもこの世界についても。だから一緒に付いていきたいと」
ガルディアとソフィアは二人で話していた。
「好きだからか?」
「な、なにいってるの!!」
慌てるソフィア、年は10歳だが恋を知る年。
「ふふ、まぁ良い。信二ならば任せられる。しかと学べよ」
「いいんですか?」
「止めても聞かぬだろう。そういうところはあいつに似たんだな」
それを聞いてソフィアは父へと抱き着いた。
「ありがとう、お父さん!!」
「ははは、信二をしっかり捕まえてくるのだぞ」
◇そして現在
「しかし、信ちゃん。こう見るとほんとにパパさんね」
「はは、まぁ実際パパだからな」
俺の周りを幼女二人が楽しそうに遊んでいる。
シルフィとソフィアは一週間苦楽を共にしたこともあってか滅茶苦茶に仲が良い。
ソフィアの方が少しお姉ちゃんなので面倒見てくれて大分助かっている。
もう完全に二児の父の気分で俺は二人を温かい目で見つめていた。
「大石さん。そろそろ到着ですよ!」
「ありがとうございます」
ヘリを運転してくれている陸自の人にお礼を言いながら俺は外を見つめる。
そこにはあの帝国に負けず劣らずの巨大な国があった。
どれだけデカいのか、いや聞くところによるとこの大陸は全てドワーフの国だというから世界最大国家なのだろうか。
会っていきなり殺されたりはしないだろうか。
一応先遣隊が挨拶だけはした様子では、話は通じないが大丈夫そうだという感じらしい。
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名無しのモブ1:最近この人の配信を見るのが唯一の楽しみです
名無しのモブ2:俺も。特に可愛い幼女に癒される。死にたいって願う毎日から解放される気分だ
名無しのモブ3:↑誰か助けてやってくれ。
名無しのモブ4:今日からドワーフの国? めっちゃ楽しみ
名無しのモブ5:ドワーフって赤ひげで小人のイメージ。
そろそろ新人と呼べないドンパ:俺もドワーフの国いくか
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基地局を建てたので、ここまで電波が届くようだ。
電波が届く範囲が自衛隊の索敵範囲ということで広げていく感じなのだろう。
ちなみに今の俺の視聴者数は同接10万人を超え、すでにチャンネル登録者数は100万を優にこえた。
下手すると今、日本で一番見られている配信者が俺かもしれない。
でもしゃべりは下手だし、というか視聴者を意識なんてせずただ映しているだけなのだが。
これでは配信者というよりはドキュメンタリーのような感じだが、それはそれでいいんだろうか。
とりあえずシルフィとソフィア映しとけばいいか。見てて微笑ましいしな。
そうこうしているうちに俺達はドワーフの国へと到着した。
近くの草原にヘリを止めて、そこからは歩き。
目の前にはまるで万里の長城ですかと言わんばかりの巨大な石の壁。
ここドワーフの王国の首都、ヘファイストス。
自分達が侵攻する鍛冶神ヘファイストスの名前をそのまま付けるのだから相当に信仰しているのだろう。
そして俺はその門へと一歩踏み出す。
緊張する。
これが俺の外交大使としての初仕事。
ドワーフらしき赤ひげの門番。
想像していたよりも小さくなく、普通に俺と同じぐらい大きい。
その門番が俺をずっと見つめている。
『なんのようだ』
「外交に来ました! できれば王に謁見の許可を!」
『――!? なぜ人間が我らの……いや、なんだ今のは。言葉はわからんのに、理解できる?』
どうやらやっぱり俺は彼らの言語も理解できるようだった。
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