第2話 おっさん、異世界配信者になるー2

「加護は……【理解】……なんですか? これ」

「いえ、知りません。なんですかそれ。ちょっと調べますね……」


 そういうとタブレットを出して検索しだす受付嬢さん。

異世界でもWi-Fiって飛んでるんだな……あぁあの横の役所みたいなところからか。


「えー……はい。過去該当なし、レア加護ですね! おめでとうございます! 何もわかりません!」

「それ外れの可能性もあるのでは?」

「大当たりの可能性もあります」

「大博打ですね……」


 加護【理解】、いや、なんも理解できてないんだが?


 なんですかこの加護は、頼むステータスよ!


 と願うが、この世界にステータスオープンはないので、俺はこの加護、理解がなんなのかを知るすべがない。


「ほとんどの方はアレス神より、身体強化などの戦闘系なのですが……知の神アテナからもらったのは初めてですね……」


「チートの可能性は」


「多少なりとは……どうですか? なんかかめ〇め波的なの出そうですか?」


「もしかして意外と年近いですか? 僕の世代ですよ、それ」


「……失礼ですね。まだ20代です」

「すみません(多分20後半だ……)」


 そういって俺のパスポートに加護、理解と記載する受付嬢さん。

そういえば、名前聞いてなかったな。


「失礼ですが、お名前は……」

「鈴村です」


「鈴村さんはどんな加護をお持ちなんですか?」

「私ですか? 一応加護が何かを聞くのかはマナー違反とだけお伝えしておきますが……私はヘファイストス様の加護で鍛冶ですね。魔力を付与した何かを作れます」

「すごいですね……よっぽど強そう。って聞くのってマナー違反なんですか!?」

「この世界の常識ではそうらしいです。ですが、意思疎通もできないので三年たっても原住民たちとの交流もままなりませんが……」


 どうやらこの世界と日本の交流がうまくいっていないのは本当らしい。

そりゃ、異文化交流なんて今の日本と他国でも難しいのに言葉すら違う異世界じゃな……。


「どうされますか? もう活動なされますか? 一応、この街でしたらクレジットも使えるので資金があるのでしたらある程度生活はできますから、ここを拠点にされる方も多いですよ」

「そこまでいくと、ほんとに他国に旅行している気分になりますね。ですが……はい、時間もないのでガンガン行こうと思います」


 俺には時間がない。

植物状態とは、とても危険な状態なのだ。

いつ合併症で娘が帰らぬ人になるかわからない。


 なのに、俺はなんて無駄な時間を過ごしていたんだ。


 だから今は一分一秒が惜しい。


「了解しました。では、配信ドローンを起動してください。これであなたは自由です。どうか素晴らしき異世界ライフを」


 そういって鈴村さんは頭を下げて、ゲートの方へと向かっていく。


 一人残された俺は、あたりを見渡す。

そこには俺と同じようなラフな格好の異世界配信者達がドローンと一緒に街を歩いている。


「よし、ドローンを起動。これでいいのか? おーい、うつってますかーー」


 俺は自分のスマホで自分の配信画面を開く。

すると冴えないおっさんがうつっていた、絵柄的には視聴者が伸びる可能性は限りなく0だ。


 ピロン♪


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新人を潰さないドンパ:よぉ、俺はドンパ。君、初心者だろ? 

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 おぉ!? コメント?

俺は初めてのコメントが早速きて慌ててしまう。


「そうです! 初めてです!」


==================

新人を潰さないドンパ:ならまずは酒場だ。そこで一緒に最初の村まで行ってくれる人を探しな。一人だと普通に死ぬぜ。

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「りょ、了解です! ありがとうございます、ドンパさん!」


 俺は優しそうなコメントの通り、この特域にある日本村の酒場へと繰り出す。

そこは、まるで冒険者の酒場のような木造で趣のある酒場だった。

バーテンダーはひたすらグラスをふきふきしてる……雰囲気あるな……。


「あ、あの……最初の村まで一緒に行ってくれる人を探しているんですけど……」


 俺はバーテンダーさんに聞いてみる。


「傭兵を雇うか、気の合う奴を見つけるんだな。最初の村までなら二日。傭兵なら20万ってところか」

「20万!?」

「命を預かるんだ、そんなもんだな……どうする? 案内するか?」

「……よろしくお願いします」


 幸い会社員時代の貯金がある程度ある。

それでも庶民に20万の出費は滅茶苦茶にデカいが、背に腹は代えられぬ。


「了解だ。凄腕を用意してやる……ミルクでも飲んでな」


 雰囲気のあるバーテンダーが裏に行ったかと思うと、一人の男を連れてきた。


 俺はそれを見た瞬間、ミルクを吐き出しかけた。


 一言で表すのなら、まるで世紀末オカマ。


 その見た目は世紀末に出てきそうなほどの変態的。

タンクトップと、色黒で筋骨隆々、そして化粧が濃い。唇が滅茶苦茶ピンクだ。


「あら? あなたが依頼主さん? 熟れてる感じが……良い男……じゅるり」

「すみません、チェンジで」


 俺は身の危険を感じたので、変更を願いでた。


「んもう! ひどいわ! ひどい!! 私こう見えて超売れっ子傭兵なのよ!?」


ピロン♪

 

==================

新人を潰さないドンパ:大当たりじゃねぇか! そいつは見た目はキツイが腕は確かだぜ。傭兵にしたいけど、傭兵にしたくないランキング不動の一位! 男色家のビビヤン! 

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 いや、大外れなんだが? 何だ男色家のビビヤンって。


 しかも結局したくないランキング一位じゃねか。


「大丈夫! 依頼主さんには手を出さないって決めてるから! でも契約が終わったら……うふ♥」

「やっぱりチェンジで」


「んもう! 冗談に決まってるでしょ! ささ、契約しましょ。最初の村に行くんでしょ? 私なら車も運転できちゃうんだから」

「それは助かります。といか車あるんですか?」

「歩いて二日なんて馬鹿のやることよ、車なら半日でつくわ。でも二日間ちゃんと守ってあげるから安心して」

「…………くっ……背に腹は代えられぬか。契約します!」


「お買い上げありがとうございまーーす♥」


 嬉しそうに体をくねらせるマッチョな男色家が仲間になった。


……


「では、しゅっぱーーつ!」

「こんなアスファルトもない道進めるんですね」


「任せとけ、この車は四駆だぞ」

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