【完結】 【朗報】俺、異世界配信者になる。~俺だけ会話できる異世界でエルフや龍を現代知識で助けていたらいつの間にかNo1配信者になっていました〜
KAZU
第1話 おっさん、異世界配信者になるー1
俺ぐらいなものだろう。
一般人で冴えなくて、すでに30になるおっさんなのに。
魔王と世界との戦いを止める異世界の配信者になったのは。
――異世界配信者。
異世界を探検し、冒険し、その映像を日本へと届ける今最もホットな職業。
それは日本の首都東京 渋谷スクランブル交差点に突如現れた巨大な門から始まった。
通称、ゲートと呼ばれるその扉は異世界としか形容できないこの地球とは別の空間へと繋がっていた。
日本政府は、異世界を日本の特別管理地域【特域アナザー】と呼んだ。
そんな特域と日本が繋がってから日本政府は原住民との交流を積極的に行ってきたが言語の壁に悪戦苦闘。
その無限に広がる資源を有効に活用できていないまま、早三年の月日が流れていた。
……
「はい、では。異世界通行証の発行を致しました。大石信二さん」
「はい!!」
俺は役所で、異世界へのパスポートと探索者登録を行っていた。
受付してくれているのは、美人秘書さんのような受付嬢さん。
「では、最後に契約書にサインを」
俺は差し出された契約書にサインをし、その最後に記載された一文を強く心に刻む。
≪特域で死亡、もしくは負傷しても日本政府は如何なる責任も負わないものとします≫
それは俺の命や、人権を特域では日本政府が一切保証しないという文言でもあった。
命を賭ける職業、異世界配信者。
それでも俺はあの世界に望みを託すしかないんだ。
噂程度でしか聞いたことないが、異世界にあると言われている。
――俺の最愛の娘を救える万能の霊薬が。
「はい、では配信用のドローンをレンタルさせていただきます。現地に建てられている基地局から配信できるように設定しておりますので」
「ありがとうございます!」
そして俺は配信用のドローンを受け取る。
異世界を探索する者、通称異世界配信者には、このドローンを使用して現地での80%以上の生活を配信することが義務づけられている。
警察もいない現地では、密猟や性犯罪、殺人、はては原住民と呼ばれる異種族への日本の法律違反が横行したからだ。
探索者に、モラルを。
そして異世界と日本を繋げれるように。
そういう思いを込めて、この異世界の探索者は別名、異世界配信者とも呼ばれる。
今や、異世界配信者は、数あるゲーム配信やVtuberなどの配信をも超えて一大ジャンルと言えるだろう。
なんせゲームのような本物の世界が配信されて、しかも数秒先の生死もわからないこのジャンルは見ている分には正直滅茶苦茶面白い。
まぁやってる方は命がけなんだが、それでも登録者数欲しさに危険な行為を犯す配信者も多くない。
「では、ゲートをくぐりに行きましょう。一度加護をもらってから今後の方針を決定するべきかと」
「はい!」
俺は役所からゲートへと向かう。
この役所は実はゲートのすぐそばに建てられた通称・異世界役所。
まぁ異世界に関するあらゆることをやってくれるらしいので、法律に疎い俺でも安心だ。
「大石さんはなぜ危険な異世界配信者を? あ、答えたくなければ結構です。聞くのが癖みたいなもので」
「そうですね。娘がちょっと事故で……」
「まさか万能の霊薬ですか? ですが……いえ、希望を持たれているのでしたら応援いたします。頑張ってください」
「あはは」
自分でも分かっている。
藁にも縋るとはこのことだろう。
今年30になる俺には6歳の娘がいる。
だが、去年娘と嫁は車にひかれてしまった。
信号無視、飲酒運転、居眠り運転、そして未成年。
その事故で妻は他界し、娘は植物状態でいつ目が覚めるかもわからない。
俺は犯人を憎むしかできなかったが、それで二人が帰ってくるわけもない。
丸一年なにもできなかった。
テレビをつけたまま死にたいという気持ちで酒を飲むだけの日々。
でもそんなとき見つけたんだ。
――万能の霊薬が異世界にあると。
希望を見た気がした。
最愛の娘だけは助けたい。
まだ生きているあの子だけは絶対助けたい。
そう思って俺は、すべてを捨ててこの異世界に運命を委ねた。
普通のサラリーマンで一般人だった俺だが、命を賭けられるのだから子供とは不思議だ。
「つきました。ゲートです」
「すげぇぇ…………近くで見ると一段とデカいですね」
かつての渋谷スクランブルはそこにはない。
巨大な門はまるでビルのような大きさをして、開かれている。
そこからは見たこともないような巨大なケーブルが異世界とこの日本を繋いでおり、特域の基地局から配信や通信ができるようになっている。
「ちょうど、モンスターが運び出されますね」
「あれが……かの有名なビッグモス……」
するとまるでマンモスのような巨大な豚が異世界のゲートを通って運び出されている。
重機を使ってまるで工事現場のような賑やかさがあるゲート周辺、ここには異世界の動物、通称モンスターが運び出されたりしている。
「めっちゃうまいらしいですよね……Kgで100万。あの量で……一回は食べてみたいです」
「私も食べたことないですね。一部の既得権益者にしかいきわたりませんから……」
異世界の食材は美味しい。
その理由は分かっていないが、おそらく魔力と呼ばれる不思議元素のせいだろうとは言われている。
そう、異世界には魔法としか説明できない現象が発生するのである。
俺達はパスポートを見せて、ゲートの前に作られた人口ゲートを通る。
まるで空港のようだが、まぁ確かに他国なので正しいのかもしれない。
「では、手を」
「え?」
「一応です。ルールなので」
「は、はい……」
俺はその美人受付嬢さんと手を繋ぐ。
女性と手を繋ぐなんて妻を除いたら何十年ぶりだろうか……。
「では、いきます」
「はい!」
そして俺はゲートをくぐる。
青白い光に包まれて、俺が一歩踏み出した先は。
「…………これが異世界……特域……通称アナザー」
見渡すばかりの大草原、そして隣には特域での日本町と呼ばれる簡易的な街。
空はどこまでも青く、太陽は二つ。
そこは紛れもない異世界だった。
『…………種族・人が新たに世界へと踏み入れました。神により選別中…………加護を付与する神が決定しました。知の神アテナより……加護を付与します』
「え? 今の声……」
「聞こえましたか? 我々は神の声と呼んでいます。さすがは異世界、なんでもありですね。で、どんな加護ですか? 戦闘系だと探索もやりやすいのですが……」
そして俺は加護を手に入れた。
「なんか……弱そうな加護です……【理解】? アテナ神よりって……」
「今……なんといいましたか? アテナ神!?」
見るからに弱そうな加護だが、有能なのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます