第59話 閑話 カリンとの別れ
閑話 カリンとの別れ(情けは人の為ならず)
勇者カリンと共に寒村を後にした久留実、どう考えてもあのままでは死ぬ運命しか見つける事しかできなかったが。
花梨の指導の元LV8までステータスを上げる事が出来た、まあ殆ど拷問のような肉体改造の結果だが。
一人では絶対にここまで来ることなどはできなかっただろう。
そして双子のいた家から中央の都市を目指し上京することになった。
「それじゃあ皆、バイバーイ」
「グスッグスッ」
「なーに泣いてるんだよ」
「だって だって」
あれだけ人をいじめていたやつが何でNPCとの別れぐらいで涙を流しているんだか訳が分からないが、まあ現実の暮らしではここまでの感動などめったにないのだ。
少しぐらい感傷に浸っても悪くはないなと思ってしまう。
カリンと久留実は鉱山の仲間からも色々餞別を貰いレリンダ王国のブリュッカスを目指した。
そこまでは4つの町を経由するのだが、もちろん馬車などと言う乗り物は大きな町まで行かなければ乗ることなど出来ない。
「そろそろめしにすっか?」
「はい」
カリンは道のわきになんと家を建てる、いや立てるのではなくストレージから取り出した。
カリンが最初にもらった特典、その中には家が有った。
中に入ると風呂もトイレも付いていたりする、この世界ではかなり上級の家。
その中に入るとキッチンで料理を始めるカリン、もちろん久留実もお手伝いする。
「引き出しから鍋取ってくれる?」
「はい」
この家ならば夜も安心して休むことができる、ストレージに入れられると聞いてカリンが手に入れた物。
男なら最初に家を貰うより別なものを選んだだろう。
だが最初に岩だらけの肌寒い世界を見せられて、家が有ったら楽だなと思ったのだから仕方がない。
でもその選択は間違っていないようだ、女の子が一人で野宿なんて現実の世界でも危ないと言える。
「できた、皿を並べて」
「はい」
あれだけ敵視していた久留実だったが、あの後考えが変わった。
勿論カリンに助けてもらったと言う恩もあるのだが、空手の訓練や坑道での採掘。
寒村で暮らした10日間でその考えは一変した、今までの自分が間違っていたことは分かっている、人をいじめて自分だけ幸せになんてなれない。
一時の優越感に浸って、エスカレートしていたらとんでもない事件にまで発展していただろう。
だがこんな自分を受け入れ面倒まで見てくれる人もいると、何故か花梨の姿を見て初めて感動してしまった。
それは、カリンと暮らし始め気付いた、彼女には裏表が一切なかったからだ。
全部本物、本当の善意。
疑う事ばかりで人を騙す事ばかり考えていた今までの自分は、この数日間で全て捨てることにした。
「食い終わったらまた歩くぜ」
「はい」
まるで従者の様な扱いだが、花梨は別に全て久留実にさせようなどとは思わない。
何でも一緒にやろうと言う、危ないときも絶対私を置いて逃げたりしない。
多分こんな状況にならなければ分からなかった事、人の善意しかも100%の善意。
「そろそろ着くぞ」
「町に入ったらどうするの?」
「まずは組合だっけ」
「そう言ってたね」
「そんで鉱物を売って着る物を買わないとね」
カリンは勇者セットを着ていればいいのだが、久留実が着ているのは双子の母クレープさんからもらったダボっとした綿の服1枚。
このままでは少しみじめだ、だが町へ行かなければ服屋など無いと聞いていた。
「ところでさ、あんたはこれからどうしたい?」
「え?花梨について行くって言う話だったじゃん」
「そうなんだけど、もしかしたらクエストクリアして先に現世に戻る可能性もあるだろ」
「えー私を置いて行くの?」
「すぐにって訳ではないけど、ゲームの世界なんて、何があるのか分かんないだろ」
「確かに…」
「そん時の為にいくつか道具渡しておくから、もしアーしがいなくなっても頑張るって約束してくんねーかな?」
「えー」
まあカリンならクエスト100個なんてすぐにクリアしてしまうだろう、はたから見ていたらそうなるだろうとしか思えない。
「それはいつまでも花梨を頼らず自立しろって事?」
「それもあるけど、なんか胸騒ぎと言うか、ここから先は一緒に行けなさそうな気がすんだよね」
「とりあえず組合で登録したら金目の物は換金しちゃおう、そんで着る物と武器を調達な」
「分かった」
冒険者組合で2人はFランクに登録し持っていた鉱石や魔石を半分以上換金した。
その金額は金貨にして300枚。
すぐに洋服屋と武具店を梯子して着る物や武器、そして魔道具を購入。
久留実も魔法の巾着を手に入れ武器は錫杖とメイスを購入、そして魔法具として(癒しの指輪)、(高速詠唱の腕輪)(ディフェンスリングDF+20)などを購入。
LV8の癒術士で使える町の道具屋さんで買える物を全て手に入れることになった。
そしてカリンは如意棒や家を久留実に渡す。
「こいつはS級武器だ、まだ一回も使っていないけど、アーしがいなくなってもこいつさえあれば何とかなるから取っておいて」
「えーなんかその言葉フラグに聞こえるジャン」
【すぐに中央都市へ移動せよ:魔獣が町を襲う、魔獣大量発生LV30】
(え?)
「どうしたの?」
「もしかして久留実にはクエスト来てない?」
「何も」
「アーしの方だけか…」
「中央都市で魔獣大量発生って言うクエストが出た、LV30だっつー話だ、あんたとはここまでかもしんない」
「そんな…」
「ついでにこれも預かっておいて」
それは家と今までクエストで手に入れた褒賞、しかもほとんどが手に入らなそうなものばかり。
「アタイはここから走って行く、あんたはここで宿を取って毎日クエストや冒険者組合で仕事をこなして善行を積み上げるんだ、分かったな!」
「…」
「返事は!」
「お おす」
「大丈夫何とかなるから、忘れるないいことしていれば何とかなる!」
「う うん」
「そんじゃ!またな!」
金貨を全部預けて行くとは、確かにこれだけあれば1年以上この世界にいても食うに困らない。
勇者セットは最初からそうなるべく人が手に入れる設定なのだろう、癒術士を選択して善行LV2と言うスタート地点、まずそこからして違うのだから。
ここでわがまま言って引き留めてはカリンの邪魔ばかりか自分の成長も妨げてしまうだろう。
何故だか涙があふれて来る、でもここは泣くところじゃない!
「くそ!なんだよあいつかっこ良過ぎんだよ」
「…」
「パシン」両頬を叩く
「よし!それじゃクエストやるかー」
この後カリンはクエスト100回こなし現世へと戻って行く、そして久留実がこの先どうなったかは分からないが。
この世界にはまだ何十人と捕らわれていたりする、但し全員が現世へと帰ることができるのかは分からないとだけ言っておこう。
ちなみに現在捕らわれている人の中で一番長く滞在しているのは8年と言う話だ。
デスアプリ 完
書き終えてやったぜ!
殆ど突貫だったがAIと行方不明そして悪い奴を罰するシステムのストーリー、あったならすぐにあのにっくき指導者の顔写真をアプリで撮ってやるのに。
まあ、そんな話が現実に有ったなら問題はすぐに解決するだろう。
というか全人口がゲームの中に捕らわれてしまう可能性の方がまずいかもしれない。
今の世はほぼ全員が写真や映像を使うのだ、そんなアプリが有ったなら一度は試しに起動するだろう、貴方ならどうする?
5月2日に書き始め6月2日に書き終わった、ジャスト1か月 募集条項を見てみたら6月14日までに完結していないといけないと書かれていた。
書き上げましたよ、後はどうなっても良いのですが一応私は趣味で書いています、それだけですでもお金は欲しいです。
夢未 太士 著
デスアプリ 夢未 太士 @yumemitaisi
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