第8話 虹の向こうに
お互いの素直な気持ちを確かめ合った二人は、これまでの距離と時間を埋めるように短い時間で、たくさんの話をした。
入学後からお互い見知っていたことーー
不登校のことーー
快の友人の話ーー
体育祭の実行委員になったいきさつーー
近藤 愛花との関係についてーー
そして今後の委員会の運営についてーー
たくさんの誤解もあったし、新たな気づきもあった。
いつしか雨が上がり、帰路に着く快を未菜は途中まで見送った。
「近藤さんは、悪い人ではないと思う。嘘でも私のことを本当に気にかけてくれた瞬間もあったと思う…」
未菜はポツリと呟いた。
「俺も、近藤のことに向き合わずにそのままにしてしまった。
ずっと同じクラスで、友人で、それが心地よかった」
快は隣で自転車を押しながら話している。
「私も近藤さんと向き合いたい。彼女だけでなく、きちんと気持ちを伝えて周りの人を大事にしたい」
「うん」と快もうなずく。
「体育祭の実行委員も最後までやり遂げたい。成功させたい」
「そう言ってくれると、総もナルも喜ぶよ。あいつらああ見えて真面目だし。三年生の最後の思い出のために、一生けん命働いてる」
快は友人の様子を聞かせてくれた。
未菜が教室を飛び出したあと、場をなだめたのはいつも冷静沈着な総だった。
総は、真面目で丁寧な未菜の仕事ぶりを知り、少しずつ未菜のことを理解するようになっていた。
快に、未菜に会いに行くよう背中を押したのも総だ。
ナルは、持ち前の明るさと愛嬌で、必死に愛花たちの怒りを鎮めてくれている。
未菜はそんな二人の姿が目に浮かぶようだった。
頑張ってきてよかったーーー
いつしか町を見下ろせる坂の上に差しかかったとき、二人は同時に「あっ」と声を上げた。
雨上がり虹が、町の上に大きなアーチを作っていたのだ。
「キレイ」
「明日は晴れそうだな」
美しい虹を見ながら、未菜はこれからもきっとやっていけると確信した。
自分が目を背けない限り、世界はこんなにも美しい瞬間で溢れている。
一歩ずつ。
一歩ずつ。
新しい自分で歩いていくことを、未菜は心に誓っていた。
(完)
陰キャで不登校な私が体育祭実行委員になったら、学校一のモテ男子に溺愛されて困ってます! 福田 想 @mamizo_fuku
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