第4話 異世界からの……。

 朝、起きると、ペットの金魚が死んでいた。小さな庭に埋めてあげると、何事も無かった様に朝食を食べる。涙もない簡単な別れであった。バスに乗ると友美が乗ってくるバス停に着く。


 しかし、友美は来なかった。今日は休みなのか?


 メッセージを送るが返事はない。それは友美と言う存在がいなくなった気分だ。教室に着くが友美はいない。少し担任に聞いてみるか。返事は曖昧なモノであった。


 父親の葬儀と言えるし、海外旅行かもしれない。などと曖昧なのだ。まさか、異世界に転生したりして。考えるだけで怖いな。


 うん?


 友美から着信がある。


『達也君、今、大樹の木の下、来れる?』


……。


『この世界に大樹があるのか?』

『有るよ、この後、直ぐにメールで地図送るね』


 送られて来たのは地図のスクリーンショットであった。ありえない、ありえない、マベルとの想いでの大樹の木があるなんて。


 午後になると、私は学校を抜け出して。友美の居るという大樹の木に向かっていた。場所は中央線に乗って東京の西の端であった。駅を降りると住宅地を進む。そこにあったのはマベルとの想いでの大樹の木であった。


 しかし、近くに友美はいない。私は友美のスマホに電話をかける。


『……』


 繋がらないか。何か手がかりはないかと大樹に触れる。


 バチ!!!


 静電気の様に火花が散る。大樹の木に残っていた残留思念が見える。


 『達也君がこの映像を見ているって事は、私はもう死んだのね。達也君は、死は怖くない?今のあなたは意識不明だけど直ぐに良くなるわ。そう、私達死神はこの世界の死にかけた住人をテルーナ王国に導くのが仕事なの、だから死神と呼ばれているわ。そして、皮肉なことに私にも寿命があるの。私と契約を結んだ達也君は元の世界に帰り、何も無かったことになるわ』


マベル……。


 すると、友美が現れて近づいてくる。これは?様子がおかしい。


「私が死神になるわ、だからこの世界を捨ててテルーナ王国に行きましょう」


 どうやら、大樹の木の瘴気にやられたらしい。どうする?


 私は一瞬のスキをつき友美を気絶させる。


 すると、大樹の木が語りだす。


『青年よ、この娘と共にテルーナ王国に来てはくれぬか?』

「何故、私なのだ?」

『そなたは、聖騎士としての実績がある。元々、異世界転生は死神が有能な人材をスカウトする為で、この世界に絶望した人々をテルーナ王国に案内するのだ』


 私は二度の絶望を経験した。友美との出会いで世界は変わった。友美と一緒ならこの世界でもやっていける。


「私は異世界転生を望まない」

『聖騎士として活躍の場が有るが、いいのか?』

「あぁ、ただの高校生で十分だ」

『では、何も言うまい』


 この世界は広い、テルーナ王国より刺激的なこともあるさ。そんな事を思うと友美が目を覚ます。


「達也君……?」

「友美、帰ろう、私達の世界に」

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さよなら異世界 霜花 桔梗 @myosotis2

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