探偵は流行が苦手②〜トイレと一緒、小さくしろ、話は小さく、簡単に!

 何か探偵とはあまり関係無い仕事をやれと言われた。ヤンキー女と。

 嫌なんですよ、変な事するのは嫌なんですね。

 だって変な事すると最終的に私が酷い目に会うじゃん?


 私の前にいるのは彼氏のヒロ、横には愛人狙いイクエとか言う眼鏡女。

 そして周りにいるのは、少し前に眼鏡が相談相手してたヤンキー女、そして元上司の息子、マシロっち。


 ここはヒロ宅、探偵事務所ではありません。私はイケてる淑女…ではあります。

 ヒロがソファに深く座り、テーブルに両肘を付けて某シンジ君のお父さんみたいに言った。


「…という訳で、何か色々…複雑になってしまった、何とかする案を聞きたい」


 無論、途中の話は聞いてない…複雑はいかん、どげんかせんといかん。


「良し、ヒロ頑張れ。ヒロの作戦で勝利した、やったな、コングラッチレイショーン」


 私は小さくガッツポーズを取った。

 何で睨むんだヒロ?私は信頼していると言ったのに。


「お前が最初にミュージカルざまぁとか訳わかんねぇ事言うから…まぁ良い、今回は…タツを投入しようと思う。皆、どうかな?」


 これは危険な発想だ、素早く返す刀で勝負をかける。

 後、ミュージカルじゃない。


「オレ、タツの乳は豆乳では無いと思います、人間なので、母乳です。フリーターでも、子供は産めます。その、近いうち、いかがでしょうか?後、オレが言ったのはミュージック何とかです、そんな楽しそうなやつじゃない」

 

 ヒロの全身が揺れた…ダメージ中と言ったところでしょうか?


「あぁ…もう面倒くさいから…その争いの場にタツを置いて全員に殴らせる…俺にはそれぐらいしか…」


 流石ヒロ…頭を抱えながら捻った案が、まさかの彼女をサンドバックとして戦場に設置、ストレスフリーな作戦だ。

 私の命はパンより軽い。

 まさに物語で出てきたらざまぁ率ナンバーワンの上官の鑑…


「ネタキュンシュ、何だったら全員洗脳しても良いのよ?」


 何か喋ったと思ったら出たよ。眼鏡、また洗脳…お前はそれしか出来ないんか?


「いや、その後どうするんだよ」


「全員、半年ぐらい触手に色々される夢見てたら精神崩壊して争いをやめるんじゃない?あら?世界平和♥」


 コイツの脳は常に焼き切れており、ニューロンが洗脳→それ以外を繰り返す。しかし今度ばかりは何も思いつかないからコイツに乗ろう。


「眼鏡洗脳大将、その作戦をタツ司令官より一任する、勝手にやれ。後の責任、切腹はお前が行う事とする、死なないから。そしてヒロ帝はタツ司令官に甘いハニトラ。これで行こう」


 何か外野が訝しげな目で見ているが、これは決定事項だ。

 私の探偵能力ではもっと某英国探偵物語みたいに分かりやすい事件、登場人物が3人までしか無理。


「ちょっと待って…全然解決してないよ?ヒロ?それで本当にいくの?普通じゃないよ?」


 馬鹿、エロゲ時代の上司の息子、マシロっち!よせ。ヒロは『普通じゃないよ』諫言に弱い!


「ま、マシロ…わ、分かってるよ…お前等やめろ」


「流石ネタキュンシュ、今、全部洗脳案で行きそうになった。本心は登場した奴を皆殺しで焦土、流石だわ」


「違う!皆で考えようぜっていうな?考えなワケで そもそもお前等分かってないだろ?…俺も良く分からないが…」


「ごめん、ウチも良くわかってないんだけど?」


 ほら、この年上マイルドヤンキーの相談者すら分かってない。もう良いんじゃない、どうでも?

 しかし父親がエロゲ会社で私と同じ部署だったマシロっちは説明をやめない…


「いや、だからもう一回分かりやすく整理するよ?美音さんに頼まれてるから…まず尋也君はプロの人達とゲリラライブする。なんの意味があるのか良くわからないし、美音さんが凄い嫌そうだけど、そこまでは別に良い。だけどもう一つの話、尋也君の元彼女が尋也君の姉に狙われてるからそこを仲裁したい。ここまでは良い?」


「あぁ、オレはどうでも良い。どっかにいる売春と仲裁と薬物とあらゆる中毒のチューチューネズミにでも任せれば良い、アイカとか」


「あ、アイカ!?」


 本音でぶつかったらマシロっちとヤンキー女にビックリした顔されたけど話を続けるマシロっち。


「で、調べていくと元彼女さんは美音さんが目をつけていた、ほぼ存在してないグレーな芸能事務所を騙った詐欺をやっている事務所に入っていた。多額の借金を背負わされ、人身売買グループに売られて、それを買ったのが尋也君のお姉さんだ。その額は300万…微妙な金額だけど縁を切っていた人間が出す額じゃない、つまり復讐する気なんじゃないかって」


「ほう?その金額、懐かしくも憎いな。オレが、インターネットでクリックして請求された金額と「タツっ!うるさいっ!」


 ヒロに教えたい、短気は損気。話が長いし辛い。


「その女の子を人身売買してるグループを母さん、定満千代が実質トップの組織『不知火』が粛清対象にしているんだ。その人身売買グループのトップが土橋鳴衣ツチハシ メイ…ヒロの友達で、不知火傘下にいる土橋家、その次期当主の土橋和樹の妹なんだよ…俺としても母さんとしても何とかして止めたい…これは君達Nてぃ…何とか事務所に定満家からの依頼だと思ってくれれば」


 嘘だな、クソスライムは私の事を1ミクロンも信用していない。マシロっちと獅子川さんがビビってるんだろう、クソ千代スライムの馬鹿さ加減に。


 そこまで調べてるならマシロっちが探偵やれば良くない?オレは飼い猫の妊娠を発見するのが限界だが?この際、彼に任せよう。


「分かった、ラブホテル【クソデブの小部屋】の主、ツチハシクソデブの妹は失踪した。それとマシロっち、君のお母さんという名の媚薬浣腸販売者の資格を持った淫獣に伝えると良い。人殺しはやめろと、不知火という『ごっこ遊び』はやめろと。最近、オレに対してスライムのクセに無い牙を剥く事しか出来ない旦那の前でプルプルしているだけの…」


「タツッ!話が入らないから喋るな!!…何で千代さんの事になると辛辣なんだよ…」


 犬みたいに呼ぶない…それに辛辣じゃない、事実を言っただけ。後、増えて来た…登場人物が。もう無理だが?

 マシロっちが今度は変態眼鏡に話しかける。


「千代母さんは鳴衣を更生させたいんだよ、それに吉川幾重さん…いや、アマテラス…鳴衣は不知火時代の七敬天、君の元部下じゃないのか?棺さんも悩んでいたよ、このまま行けば棺さんが出る…つまり本当に命を取る事に…元部下に対して情や起こした問題へ何か思う事は…」


「いや、興味無いです。そもそも七敬天なんて言っているのは周りだけ。当時の敬天、敬死天とは天を敬う、死を持って天照という私の事を敬うって事だから。それに裏切り者でしょ?それ、私のいた戦場なら事故を装って内輪で死刑だから。そしかしまぁネタキュンシュを私が敬うだけに変わった、だから今は敬根多けいねたって事」


「何だそれ、警官の何か?俺を混ぜるな、すぐ解散しろ、そして元部下を救え、死ぬとか殺すとかよせ」


 良いぞヒロ、眼鏡への連続的で辛辣な言葉は私への愛の一種だからな。

 眼鏡が醜悪に笑う、コイツいつからこんな悪役ムーブになったんだ。まぁどうでも良いけど。


「ネタキュンシュ、いえ、室長がそうおっしゃるならそうしましょう。ただしそのソファーの下、人が1人、入るか入らないかのスペースに私と2人で入る約束をして下さい」


 はぁ!?何言ってんだコイツ…


「大丈夫、足の先っちょだけ出てれば問題ありません。先っちょだけだから、大丈夫です」


「…もう駄目だ。良し、タツとイクエちゃんをその現場に投入しよう。俺は、海へドライブに行く、そうしよう。」


 ヒロ、さっきから遠くを見ながら豆乳、そう、豆による乳しか案を出してないが?


「いや、ヒロ?聞いてる?確かにこの2人がいるだけで制圧という意味では合ってるけど何をやるの?」


「室長、下痢便トーテムポールと一緒は拒否しまぁす!」


 私だって嫌だわ、この眼鏡白濁女…

 ガヤガヤうるさくなってきたな、帰れ、帰るんだだ…ここはヒロ家、つまり私とヒロの愛の巣やぞ?


「あの〜ごめんけどさ?全然意味分からないんだけど?ウチはどうすれば良いんだ?」



 ヤンキーは何かを言いたそうにしている。

 まだいたのか?良いんだよ。解散で。

 おや、お義母さんが帰ってきましたよ?

 子供の時から親が帰ってきたら解散と相場が…


「ただいま〜アラ?いっぱいいるわね?んんん?」


「おおおお!?おおおすすすす!?」


「アラララ…翡翠ちゃんじゃない?何やってんの?ヒロに用事?」


「そ、そうっす!ひ、ひろ?ヒロってコイツ…じゃなくてこの男の子が例の!?初代の!?」


「初代って言うのはやめなさい、子供の前で…」


「す!すすすいません!」


 何だこの展開?知り合い?世間は狭いなぁ…


 そんなこんなで興味が無いから端折ると、このヤンキー女のやってた暴走族の初代がお義母さんだそうだ。だからお義母さんが相談にのった。

 私は『よ!お義母さん流石!』とか『ホっ!?お義母さん凄い』とかお囃子をした、溜息をついていたが…


 なんやかんやでヤンキー女が、その尋也とやらの元カノを助けるとやらに立候補したので、売買の時にヤンキー女が突っ込んで助ける事になったんだが…


「じゃあタツは翡翠さんのボディガードとして付いていけ、絶対殺すな、誰も殺させるな」


「ほう?黒人歌手を守るアレか?コイツは歌うたんかい?」


「んで、イクエちゃんは尋也君のライブで記憶消去の洗脳やれ。俺は当日…家にいる」


「ヒロ…アンタ…」


 母親のジト目から目を逸らす彼氏の鏡、ヒロ。


 思いっきり私どころか親ですら無視したし、ヒロは家なんかぃ(笑)

 しかし方向性は決まった。ボディガードは要らないだろう、殺しとか無い。何故ならここは平和国、日本だから。


 つまり私は何も考えず人気ロールプレイングの続編やってれば良い…と。


 しかし、現実は残酷であり無情だった。

 

 


 

 

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NTR探偵社〜オムニバス形式で綴るある探偵の備忘録 クマとシオマネキ @akpkumasun

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