第51話 十月二十五日(火)ー1 “袴の彼ー9
翌日も私は動画と写真を撮った。私の頭の中には常に“袴の彼”がいつか消えてしまうんじゃないかという漠然とした予感があった。彼が――少なくとも私にとっては――確かに存在していたのだという証拠を、できるうちに、できるだけたくさん残しておきたかった。練習を始めて二十分となり、“袴の彼”はゆっくりとこちらに目を向けた。なぜそんなことをしたのか、いまでもわからないのだが、私は彼に向かって手を振っていた。彼が一瞬、訝し気な表情をしたように見えた。すっと視線をそらし、そのままこちらに向かって軽く頭を下げ、弓道場の奥に消えた。
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