第8話 八月二十九日(月) 雨の弓道場

 月曜日は朝から雨だった。さあさあと静かな音を立てながら降りしきる大粒の雨が高校のすぐ裏手にそびえる白山をかすませ、山は柔らかく朝の町を見下ろしている。

 教室の手前でふと気づき、振り返って弓道場を見下ろした。袴姿の男子がひとりで弓を引いているのが見えた。雨の日でも、朝練ってあるんだ。矢を射るのに雨が降っていても大丈夫なんだろうか? 何となく気になり、彼を見つめた。力まず、自然体に見える彼の全身から、圧倒的な緊迫感が伝わってくる。弓をきりきりと引きしぼる。緊張感をみなぎらせる彼の表情に気負いはない。ふっと矢が放たれた。的の中央付近を貫いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る