第5話 七月二十九日(金) 合格通知

 転入試験は国語、英語、数学、それに面接試験だった。小学校の時から、お母さんの強い勧め―という名の強制―で塾通いの毎日だったから、勉強は人並み以上にできた。おそらく、ペーパー試験の成績は申し分なかっただろう。面接試験も、求められていたものは示せたんじゃないかと思う。問題は転入希望の理由だ。保護者の転勤というやむを得ない事情ではなく、本人の心理的な問題で元居た学校に通えなくなったためという理由をどれだけ斟酌しんしゃくしてもらえるか、それはお父さんにも未知数だった。


 だから、八月になって合格通知をもらったときには、お父さんは心底ほっとした顔をした。

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