第4話 七月二十七日(水) 夏の九州
転入試験を受けるため、そしてお母さんのお骨をお墓に納めるため、私はお父さんと九州に向かった。早朝に羽田を飛行機で発って一時間半、そこからさらに三時間以上かけて連絡バスと電車を乗り継ぎ、正午前に、ようやくお父さんの故郷に着いた。川崎より空気が濃い気がした。持続低音のようなセミの声のうなりと、
駅まで迎えに来てくれたおばあちゃんが、目に涙を浮かべ、裕佳子ちゃん、よう来たなあ、よう来たなあと何度も言って、私の頭を撫でた。
どこか高みで鳥が鳴いた。澄み切った声にビブラートをかけ、複雑な
家の中に入ると、外の蒸し暑さが嘘のように涼しかった。どうやら家の向きの関係と、風がよく吹き抜けるからのようだ。
その日の午後、お父さんとおばあちゃん、それに彩おばちゃんと私の四人で、お母さんのお骨を納めに行った。
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