第2話 六月五日(日) 引きこもり
葬儀と一連の手続きがどうにか終わり、親戚たちも去り、
お母さんをはねたのは、未成年の――私と同じ高校に通う一年生の男子生徒だった。親の車をこっそり借り出し、もちろん無免許で、友達二人と暴走したあげく、見通しの悪い小さな交差点で出会い頭にお母さんと近所の小学生の男の子をはね飛ばしたそうだ。男の子のほうは命に別状なかったものの、
私が入学したばかりのその高校は、それなりの名門進学校だった。生徒の無免許・飲酒・ひき逃げ事件なんて、前代未聞の大事件だったろう。おそらく学校と犯人の家族は、世間に衝撃を与えたこの事件について、いかに噂話をもみ消し事実を風化させるか、いかに学校の名声を守り抜き、いかに男の子を世間から
どこにいたって、かならず誰かのささやき声が聞こえてくる。同情の、好奇の、それに悪意の込められたものまで。私は学校に行けなくなった。学校だけでない、家の外に出るのが怖くなった。それはどんどんエスカレートして、家の外どころか、自分の部屋から出るのですら、恐怖を感じるようになった。私は一日中、カーテンを引いた自分の部屋で、ブランケットにくるまって本を読んで過ごすようになった。
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