地球はおしまいです。《王》たちの遊技場になりました。
森上
第1話
その空間に侵入する事は意外に簡単だった。
数々の神兵が守護すると思っていたからである。
切り出した石で作られた神殿の奥に中庭があった。円を描くように中庭があり、沢山の果樹が植えられている。
真ん中に丸い天板のテーブルと一つの椅子がある。
そこでその男は紅茶を飲んでいた。彼に気づき、話しかける。
「おかしいですね。人間は入れない筈ですが」
どこか軍服のような雰囲気がある服を身につけている。
彼は男に近づく。
「貴方は地球外からやってきた《王》なんだろう?」
紅茶の入ってティーカップを片手に持ったまま男は席を立つ。
「目的はなんです?」
「観察」
「はい?」
「あんたらの気まぐれで世界がめちゃくちゃになるのが嫌なんだよ」
「そうですか」
男は指を鳴らすと、仮面を被った軍服を着た兵隊たちが現れた。
だが、神兵たちは彼を認識していない。
「やっぱアイツの言ってた事は嘘じゃなかった」
「他の《王》の力を付与されている? 協定で禁止されている筈だ」
男の声はどこか強ばったでいた。
彼は反対方向の出口の方に向いた
「やっぱ死ぬのは怖いから出るわ」
すぐに誰にも彼を認識する事は出来なくなった。
男は椅子に座り直すと。既に冷えた紅茶を地面に流し捨てた。
「いや困りましたね。協定の破棄が確認できないという事は、この地球にやってきたばかりの《王》がチカラを貸した訳ですか」
なんとか逃げ切れた。なんとか生き延びた。
神殿に住む《王》は神殿の外に出ることは無い。神殿から出れば追いかけてくる事は無い。
空は夕焼けである。神殿に入ったのはお昼頃だ。体感では三十分も経っていない。
自宅に帰るために住宅街に入った。
「どう? 入れたでしょ? 神殿」
背後から女の子の声がした。振り向くと彼女がいた。
銀色の髪に褐色の肌。今じゃ珍しい白いワンピースだ。
「入れても戦う術は無いけどな」
「まぁ私の能力は戦いに向かない『不可知の王』だからね」
彼女は宇宙人のような
異世界人のような、
神のような、
存在である。
彼女がこの
全裸だった彼女を保護したのが
姉が昔着ていたお古のワンピースを彼女に渡したのである。
「《王》たちって他の《王》の能力を見て、誰か当てることができるの?」
「あぁ、私の正体がバレないか不安なんだぁ」
いたずらに目を細め彼女は笑う。
「まあね」
数年前に《王》を自称する存在が地上に降臨した。
沢山の《王》たちがいる。その者に「供物」を捧げる事で、その国の人たちは恩恵を得られる。それは、
――加護である。
日本国内にいる《王》は人間を供物に捧げる必要が無いので、以外にも国民の大多数からの反発はない。だが、恩恵の中身を公開してる者としない者がいる。それ故に危険視する人たちがいるのも事実だ。
《王》の正体は宇宙人説、異世界人説、神様説が人間の間で流行っている。
地球はおしまいです。《王》たちの遊技場になりました。 森上 @forest_A
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