第7話 傷つかないオークを倒すには…。


「ナンダァ…?マァタ石ヲ出シテ…。シカモサッキヨリモズット小サナ物ヲ…?ソンナンデ倒セルト思ッテルダカ?」


 僕の手の平に現れた小石の山を見てオークは小馬鹿にしたような口調で言った。


「サッキノ大キナ石デモ効カナカッタノヲモウ忘レタダカ?」


「忘れちゃいないさ、僕の出来る事でお前を倒せそうな方法を見つけたんだ」


「グヒュ…」


 オークが静かに笑い始めた。それがだんだんと大きな笑い声に変わっていく。


「グヒュ、グヒュヒュヒュッ!!コ、コイツ、馬鹿ナンダナ!サッキヨリモ小サクナッタ石デ何ガ出来ルンダべ!?ソレナラ歯デ受ケ止メナクテモ良イクライナンダナ!」


「そう思い通りに行くかな!?食らえ、オークッ!!」


 僕は手の平の上に積んだ小石の山に意識を集中して魔法を唱えた。


「ペブル・スプラッシュ(小石の飛散)!!」


 次の瞬間、僕の手の平の上の小石がマシンガンのように発射された。いくつもの小石が再びオークの顔面めがけて飛んでいく。


「馬鹿ノヒトツ覚エナンダナッ!!」


 そう言ってオークは大口を開けて飛んでくる小石を待ち受ける。


「ヒトツ残ラズ口ニ含ンデ吐キ返シテヤルッ!!」


 なるほど、発射した小石を全て口に含んで反撃するつもりか。それはこちらにとって非常に好都合だ、そのまま小石はオークの口に吸い込まれていく。


「グヒュヒュ…、…ヒュッ、ヒュッ!?ブヒュウッ!ヒュ、ア、熱イ、ハヒュハヒュッ!!」


「な、なんだ!?オークの様子が変だ。突然苦しみ始めたぞ!」


 槍を構えた女性が驚いた様子で叫んだ。無理も無い、それまで余裕の笑みを浮かべていたオークが手にしていた巨大な棍棒を取り落とし今は地面に転がりのたうち回っている。


「効いているようだね…、良かった、良かった」


「ア、熱イィィ。痛イィィ…、ハヒュウ…ハヒュウ…」


 目から涙を流し、口からは涎や泡を吹きながらオークは苦しんでいる。


「アカキノコだよ。僕はさっきアカキノコを採取した。そのアカキノコをたっぷりまぶした小石、お前はそれを口に含んでしまったんだ。それで今、お前は苦しみのたうち回っている…」


「ア、アカ…キノ…コ。…ハ、ハヒュッ!ハヒュッ!」


 オークは今、苦しみ息も絶え絶えだ。過呼吸のような状態でもがいている。


「タ、助ケテ…」


 哀れみを…、同情を誘うような声でオークは言った。


「何を今さらッ」


 槍を持った女性が憤りを顕(あらわ)にする。


「モ、モウ、悪イ事シナイ。オ、オデハ心ヲ…ハヒュッ、入レ替エタ。ダ、ダカラ、助ケテ…」


「悪い事をしない?」


「ソ、ソウッ!!オデ、悪イ事シナイ!約束スル!」


 まさかの命乞い、オークは僕に命乞いを始めたのだった。


「分かった、それなら…」


 僕は異次元収納からペットボトルを取り出した。


「僕の飲み残しで悪いが中にはジュース…、えっと…甘い飲み物だな。それが入っている、それを飲んで口の中を洗い流し少し気を落ちつけろ。良いか、ゆっくり飲め。ここに置くぞ」


 そう言って僕はフタを開けたペットボトルを地面に置いた。


「ア、アリガタインダナ。ソ、ソレジャ、ハヒュッ、モラウンダナ!口ノ中ガ焼ケタダレルヨウニ熱クテ、サ、サッキカラ喉ガカラカラナンダナ!」


「駄目だ、こんなヤツが約束を守るはずないっ!飲み干したらすぐに襲いかかってくるぞッ!」


 そう言って女性はペットボトルを奪おうと槍で払うようにする。しかし、オークは最後の力を振り絞るかのようにしてペットボトルに飛びかかった。タッチの差でペットボトルはオークの手に…、女性が振るった槍はペットボトルを奪ったオークを打ち据えるがダメージは全く無い。


「グ…、グヒュ、グヒュ!マヌケナンダナ!誰ガ反省…ッ、ハヒュッ…ナンテスルモンカ。邪魔サレナイヨウニ一気ニ飲ンデ、オ前達ヲ皆殺シニシテヤルンダナッ!!」


 先ほどまでのしおらしい態度からは豹変、オークは憎々しげに僕達を睨みつけたのだった。






 次回、『お互い様』。


 お楽しみに!

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