第4話 コスパの良い攻撃方法見つけた。
ゴブリンを殺してしばらく途方に暮れていた僕だがようやく立ち上がる事が出来た。
「ここでうずくまって泣いていても誰も助けてはくれないんだ…。それに他にもゴブリンはいるかも知れない、だからしっかりしなきゃ…」
そう言って僕はゴブリンにトドメをさした鉈を収納した。ゴブリンの死体はそのままにした。他にもゴブリンがいるならば警戒を強める事にもなるだろうが危険な生き物はゴブリンだけじゃないかも知れない。狼や熊みたいな猛獣だって…、それが魔物だったりするかも知れないんだ。
「そうだ…、ステータス」
僕は自分のステータス画面を表示させた。自分の名前、性別、そして天職が表示された。それをさらにタップして次の画面に展開していく。
「どこも怪我はしてないと思うけど…一応確認しておかないとね」
ミズカワユーキ
LV:2
状態:健康
生命力:10/11
魔力: 8/11
筋力:10
敏捷:11
器用:11
耐久:10
「あ…、レベルが上がってる」
ステータスの数値を見てまず目についたのはレベルが2になっている事、そしてパラメータが上がっている。初めて見た時はレベル1、全能力値は10だった。
「それが少し上がっている。成長したって事かな、ゴブリンを倒したから…。だけど筋力とかは上がってない…と」
数値をチェックしながら僕は呟いた。
「それと残り魔力が8になってる。これは多分ストーンバレットの魔法の消費魔力分だな。ストーンバレットの消費は2ポイントって事か…。…あれ?」
不思議に思って僕はさらにステータス画面を展開、所持魔法のストーンバレットについて説明を見た。
◼️ ストーンバレット 消費魔力:5
地属性攻撃魔法。拳ほどの大きさの石を作り出し、それを135km/hで放つ。
「消費魔力5なのに2しか減ってない。これはもしや石を作り出すのに魔力を3ポイント、時速135キロで飛ばすのに魔力を2ポイント消費するっていうシステムなのかな?だとすると石をあらかじめ手にしておけば消費魔力は2ポイントで済む。うん、コスパの良い攻撃魔法だ!」
他の属性の攻撃魔法も一応使えそうだが今回のストーンバレットのように材料になる物が無い。そこで僕は収納で良さそうな石を見つけるたびに収納し移動する事にした、問題はどの方角に向かうかだが…。
「決めた、下っていく方にしよう。うまくすれば川があるかもしれない」
そう思ってそちらに向けて歩き出す。およそ一時間くらい歩いただろうか、あれから二回ほどゴブリンと遭遇した。最初の奴はストーンバレットが頭部、それもこめかみのあたりに命中した。急所だったようでそのままゴブリンはご臨終、次に遭遇した奴も一匹だった。その時はもし複数のゴブリンが現れたらと用心していたので左右両手にそれぞれ石を持っていた。
「わっ!?えいっ!」
いきなり現れたそのゴブリンにビックリしながらも僕は石を投げつけた。その時、思い出したように魔法を叫ぶ。
「ストーンバレット!」
すると僕の投げた石がグンとスピードアップ。文化部所属の男が投げたヘロヘロボールが豪速球になったかと思うほどのノビを見せる。
「ギャウンッ!!」
顔面に石を受けゴブリンがもんどり打って倒れた。その隙を見逃さず再び鉈を振りかざしゴブリンにトドメをさした。すぐに死体から離れる。
「はあ…はあ…」
最初の時より慣れたのか僕は幾分か冷静でいられた。そう言えばこういう魔物とかって魔石が取れるんだよなとか思いつくぐらいには…。
倒れたゴブリンを鑑定すると体内に魔石を有している事が分かった。解体はできればしたくない。しかし死んでしまえばゴブリンも死体という名の物体だ。もしかして体内から魔石だけ抽出できないかなと思いつき試してみたら出来てしまった。すぐにそれを収納する。
「ステータス」
怪我とか状態異常(バッドステータス)になっていないか一応確認する。すると僕はレベルアップをしていた。
ミズカワユーキ
LV:3
状態:健康
生命力:10/12
魔力: 5/13
筋力:11
敏捷:12
器用:12
耐久:10
「あれ?魔力が5だ…。二匹目のゴブリンを倒した時のストーンバレットでは魔力を2ポイント消費していた、でも今回は1点だけの消費…。なんでだ?」
僕は3匹目のゴブリンを倒した時の事を思い出す…、手に持った石を…投げつけ…それからストーンバレットの魔法を叫んだ…。
「あっ!」
ストーンバレットの魔法は石を作り出すのに3ポイント、それを時速135キロのスピードで発射するのに2ポイントの魔力を消費するシステムだ。
「そうか、静止している状態…つまり時速0キロメートルの石を時速135キロメートルのスピードで発射するのに2ポイントの魔力が必要…。だがそれを静止した状態ではなくある程度勢いをつけた状態なら消費魔力が1ポイントで済むんだ…」
僕はとあるゲームの錬金術士(アルケミスト)の戦闘システムを思い出した。対応するアイテムを消費する事になるが初歩的な魔法なら攻撃系でも回復系でも一通り使える。しかも消費魔力は同じ魔法を使うにしても魔法使いや僧侶より消費魔力は少なくて済む…。
「これはいわば事前詠唱(プレキャスト)…先に魔法を唱えておいたようなもんだ。あるいは料理でいうところの下ごしらえを済ませておいた…みたいな」
僕はここで一つの確信を得た。
「錬金術士(アルケミスト)は戦えない存在じゃない。備えておけばきっとあらゆる事に対応できる存在になるんじゃないか…」
見えてきた可能性に僕は見知らぬ異世界でも生き残れる可能性があるんじゃないかと思えるようになってきていた。不安だらけだった心にわずかに希望という言葉が浮かぶ…、そんな瞬間であった。
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