第3話 錬金術士の戦い方
「ゴブリン…」
思わず呟いた言葉が聞こえたのかゴブリンもまた僕に気付いたようだ。それまでは何かを探すかのようにキョロキョロしていたが完全にこちらを見つけたとばかりにギョロギョロとした目をこちらに向けた。
「ギャ!」
そう言うとゴブリンは手に持っていた赤錆だらけの鉈(なた)のような物をこちらに向けた。どこかの農村からでも盗んだものだろうか。そして盛んに威嚇するような声を上げながらジリジリと近づいてくる。どうやらこちらを襲うつもりのようだ。
「降りかかる火の粉は払わないと…、それにしてもいきなり初陣…。相手はゴブリン、どんなファンタジー小説にも出てくる大スターだ。まるで歌番組にもドラマにも、映画でもバラエティにも出演するような人気タレントみたい存在だなあ。だけど今は敵、全力で先制攻撃だ!えいっ!」
そう言って僕は収納から石を取り出して全力で投げつけた。
「あっ!?」
しかし、僕の攻撃は外れ石はゴブリンには当たらなかった。いきなり石を取り出した僕にゴブリンは驚いたようだったが、攻撃が外れ余裕を取り戻した。醜悪に口元を歪めた後、今までのようにジリジリとではなくズンズンとこちらに向かってきた。とうやら自分の方が間違いなく強いと確信したのだろう。近づかれたやられる。
「それなら…、ストーンバレット!!」
僕は収納から石を取り出し叫んだ、ソフトボールくらいの大きな石だ。それが手の平の上に取り出した石ころが凄い勢いで飛んでいった。
「グギャッ!!」
石は狙い過たずゴブリンの顔面に命中した。そのままゴブリンはバタンと仰向けに倒れた、武器も取り落とし苦痛に呻いている。意識朦朧…といったところだろうか。
「恨むなよッ!!」
そう言って僕はゴブリンが取り落とした赤錆だらけの鉈を奪い取ってそれを振り下ろした。頭を狙って振り下ろしたのだが想像していたより重く、頭に当たらず首元に振り下ろす形になった。傷口からドバッと血が吹き出した。
「う、うわっ!!?」
僕は慌てて鉈を手放し、尻餅をつくようにしてゴブリンから離れた。
「ギィ…ギィ…」
ゴブリンは呻いていたがそれはだんだん弱々しくなっていき最後には完全に途絶えた。いつの間にかゴブリンの首周りを中心に血溜まりが地面に広がっていた。
「あ…、あ…」
思わず呟きが洩れた。
「僕が殺したんだ…。この手で…、ゴブリンを…」
転がっている死体をいつの間にか鑑定していた。個体名にゴブリンと表示された、間違いない。コイツ、ゴブリンだったんだ。
「まだ…、この手に…感触が残ってる。皮を…肉を…、あと首の骨…。それを断ち切った感触が…」
相手は魔物…、そして武器を向けてきた。やらなきゃ僕がやられていた。だけど…。
「知りたくなかったよ、こんな感触…」
地面にしゃがみ込み僕は思わず呟いていた。
□
次回、『コスパの良い攻撃方法見つけた』。
お楽しみに。
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