新しい日々。

  村人たちが落ち着き、セーゲルが呼びかける。

「念のため避難してくれ、原動力はマナを司るネットワークだ、ネットワークと遮断されているかどうか、守衛たちの様子をみ……」

 その時だった。セーゲルが背後で異様な気配を感じる。

「ブンッ」

 気づいたときには遅かった。グロテスクな腹部を持つ村長の体は、一号の魔導守衛に引き裂かれていた。


「結局、どうまとめればいいんでしょう?」

 翌朝、医師のダドロが、病人やけが人を看病している中、早朝に村を出るといった旅人のロベルやセーゲルに尋ねる。

「まあ、なんだ、スフィアネットワークと〝亡霊〟の暴走かなあ、魔導守衛は、半分はネクロマンスの力で動いたが、あの時完全にネクロマンスの力は解けていた、純粋な魔力で、後世の面汚しに怒りがわいたのじゃないか?」

 落ち込むダドロの肩に手をやって、セーゲルは答える。

「あんたが最後の村長の遠い親戚だ、うまくやりな」


 セーゲルが病院を出て、初めてエドとであった洞窟の入り口へと向かう。そこでは朝から何やら、ロベルとエドが訓練をしているようだった。

「おかしいなあ、昨日力は確かに使えたのに」

「刀剣が光っておる、ワシの力じゃ使えない、間違いなくこの〝鍵〟は英雄の卵にしか反応しない代物だよ、お前は村人に疑っておったが、間違いなくその器じゃ」

 だが、エドはしょんぼりとしていた。

「これからどうすればいいんだろう」

 セーゲルはそんなエドの肩にも手をあてていった。

「皆は過去の清算をした、あの英雄守衛も、お前の両親の魂が乗り移った守衛も、あのあと完全に成仏したようだった、だがお前は過去を振り向くことはない、もし振り向くべき時があるなら、今日の事だ、今日の朝の事を覚えておけ」

 そういうとエドは飛び切り明るい笑顔で、セーゲルに微笑んだ。

「うん!!」


 ロベルとセーゲルが、村をでて、北西へ同じ道をいく。セーゲルが怪訝な顔でつぶやく。

「なんでついてくる?」

「いやか?」

「別に……」

「お前は、矛盾している」

「は?」

 ふと、セーゲルと初めてあったときの事を老人は思い返した。

「おまえはこの村でも、あの町でも捕まっておったな、そしてこういったのだ〝過去なんて意味のないものだ〟と」

「今でもそう思うよ」

 だが老人は感慨深そうにひげをさわり、こういった。

「お前の過去はしらん、ワシはネクロマンサーでもない、だがお前の助けたものやかかわったものは、たとえ死んでいたとしてもお前を信用しているやに思う、少なくともワシよりはな」

「ケッ」

 そして二人は新しい旅を始めた。

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救世の英雄と英雄嫌いの魔導士 ボウガ @yumieimaru

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