〜望みの代償は〜 本音と建前

慎司と美代は異界の門で如月家に帰って来て華月と面会していた。統治者制度を廃止にした事を伝える。

「時代はギルドか...。」華月は慎司に言う。

「そういう事。」慎司はあっけらかんと言う。

「慎司がフリーになるのなら、慎司に頼んだのにな。」華月は言う。

「加奈ちゃんの事だろ?SSSじゃ、不安かい?」慎司は言う。

「いや、実力は確かだろう。すまん、俺の気分的なものだ。」華月は言う。

「わかってるよ。任しといてよ。」慎司は言う。

「良いのか?」華月は聞く。

「良いも悪いも、そのつもりでしょ?」慎司は笑う。

「儂からも宜しくお願い申し上げる。」美代は慎司に頭を下げる。慎司は笑みを浮かべる。

「恩にきるよ、相棒。」華月は微笑む。

「長い付き合いだからね。にしても、加奈ちゃんを狙うなんて、とんだバカもいたモンだね。」慎司は言う。

「...何が狙いなんだか...。」華月は考える。

「なぁ、華月よ。もしや、狙いはお主なのかも知れんぞ...。」美代は言う。

「...なるほど。それはあると思うな。今更、12鬼神の力をどうこうしようとする輩はいないと思う。むしろ、それより不動明王、大日如来の方が魅力的だ。」慎司は言う。

「...考えても見なかったな...」華月は少し驚いた様に言う。

「加奈に何かあれば、お主が出て来ると思ったのではないか?」美代は言う。

「だとしたら、綾乃さんや友里にも危険が及ぶ可能性はあるのか...。」華月は言う。

「今更だね。綾乃さんはとっくに、情報操作しているみたいだよ。」慎司は華月に言う。

「そうなのか?」華月は慎司に聞く。

「やれやれ、平和ボケも大概にせぇ。」美代は呆れた様に華月に言う。

「ま、得体の知れない華月の力が、逆に牽制になってそうだけどね。」慎司は笑う。

「そろそろ儂は帰る。慎司くんが見てくれるなら、安心じゃ。」美代は笑う。

「いえ、こちらこそ見届け人、ありがとうございました。」慎司は頭を下げる。

「あ、そうじゃ、直人と言ったか?あの大百足の力を持つ青年。」美代は聞く。

「直人がどうかしたのか?」華月は聞く。

「苦行組手を希望していてな。どうしたものかと、お主達の意見を聞きたくてな。」美代は言う。

「...どう思う?華月。」慎司は華月に聞く。

「...俺と慎司が成し得てしまった事で、苦行組手を軽くみているのかも知れないな。何故、今以上の力を求めるのか?何か理由があるのか...。」華月は言う。

「そうだね。俺らがやった時は弥生の鬼に全く歯が立たなかったからね。自分の無力さを痛感したよ。」慎司は言うと華月は頷く。

「...強くなる為に、やらざるを得なかった。そこまで切羽詰まった状況とは思えんが、何か理由は言っていたのか?」華月は美代に聞く。

「お主らと同じじゃよ。強くなる為にと言っておった。」美代は言う。美代の言葉を聞いた華月は少し考えた後、

「...やらせてみるか。」華月は言う。

「華月⁈」慎司は驚いた様に言う。

「...命の危険がある事は重々承知している。だが、もしかすると、加奈を守る為に強さを求めているんじゃないか?例の案件にいち早く気づいたのも直人だったしな。」華月は言う。

「...そうか...。そうだね。直人ならそう思っているかも知れないね。」慎司は考え込む。

「では、本人に通達するぞ。」美代は言う。

「いつだ?」華月は聞く。

「日付が変わって、明日の午前2時に開く。」美代は言う。

「わかった。俺も見送りに行く。」華月は言うと美代は頷く。

「では、また明日の。」美代はそう言うと居間を出ていった。

「それじゃ、俺もそろそろ帰るよ。」慎司は言って席を立つ。

「すまないな。」華月は言うと慎司は右手を挙げて、居間を後にした。


学校が終わり、加奈と直人は駅に向かって歩いていた。

「お、きたきた!」直人はスマホの画面を見ながら言う。

「何よ?」加奈は聞く。

「苦行組手だよ。」直人は言う。

「苦行組手⁈やめときなさいよ!危険だわ。」加奈は驚いた様に直人を見る。苦行組手、その危険度は加奈も知っていた。命を落とす者が後を絶たない荒行。加奈の兄である、華月、その親友の慎司が成し得てしまった事で、挑戦者は増えていると美代に聞かされていた。だが、無事に生還出来た者は、依然として華月と慎司の2人のみであった。

「危険なのはわかっとる。せやけど、SSSになる為には必要な試練やと思う。」直人は前を見ながら言う。

「SSSは苦行組手なんかやらなくてもなれるでしょ!蓮華さんだって、苦行組手はやってないじゃない。」加奈は直人に言う。

「...己の力を試してみたいんや。」直人はフッと笑う。

「バッカじゃない⁈それで命落としたら、元も子もないじゃない!大体ね、あのお兄ちゃん達だって、出て来た時は1人じゃ立てない程のダメージを負ってたってお婆ちゃんは言ってたわ。その時のお兄ちゃん達よりも直人は強いの?」加奈は直人にとって痛いところをつく。

「いつまでも背中を追いかけてたんでは、届かんねん。苦行組手も二番煎じや。通過点にしかならん。」直人は言う。

「そこまでしてSSSになりたい?」加奈は聞く。

「あぁ。肩書きは大事やからな。」直人はそれが、加奈に懸賞金をかけた何者かへの、牽制にもなる事は口が裂けても言わない。

「...勝手にしなさいよ...。」加奈は直人を失うかも知れない大きな不安に駆られた。その後2人はM駅で別れるまで口をきく事はなかった。




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